①③⑤
「色々あったけれど、あなたと会えたんだもの……神様に感謝しなくちゃ! 今までの分までたくさん話しましょう。わたくしは今ね、人生で一番幸せなの。幸せ幸せで幸せでどうにかなってしまいそう」
「お母様……」
「こんなにも可愛い子だなんてびっくり。ありがとう……ありがとうね、キャンディス」
キャンディスの目にはじんわりと涙が浮かんでいく。
それからは自分の気持ちを自然と話すことができた。
「ずっと、ずっと会いたかった……お母様にっ」
「わたくしもよ……ごめんねっ、キャンディス」
キャンディスは自分の気持ちを話していくと次第に止まらなくなっていく。
「ずっと一人でっ、わたくしっ、寂しくてぇ……! うわああぁん」
「ごめんねぇ……キャンディスッ、ごべえぇ……ゴホッ、うぇぇっ」
キャンディスが泣き出すのと同時に、リナも泣いている。
二人きりの部屋でひたすら互いに今までの気持ちをありったけぶつけながら泣いていると……。
「一体、二人で何をしているんだ」
歪んだ視界に映るのは見覚えのある影。
ヴァロンタンが眉を寄せてこちらを見ているではないか。
「おど、ざばあぁぁ……!」
「……べい゛があ゛ぁあぁ゛っ」
泣きすぎて枯れた声でヴァロンタンを呼ぶとため息を吐き、こちらに近づいてくる。
ユーゴは丁寧に腰を折ると部屋を出て行った。
「リナ、また咳が出るぞ」
「お゛や゛ざじい゛いぃでずわ゛……ゲホッゴホッ」
「ほら、落ち着け」
ヴァロンタンから差し出された布に顔を埋めたリナは己を落ち着かせるように深呼吸を繰り返している。
すぐ外に医師が張り付くようにして待機しているらしいが、今は入ってくる様子はない。
キャンディスは自分の前にある信じられない光景に瞬きを繰り返す。
(お母様とお父様がわたくしの前に……?)
以前は一人だったキャンディスだが、今はこうして両親がいる。
まさにキャンディスにとっては奇跡ともいえる出来事ではないだろうか。
(これは夢なの……? ううん、違うわ。確かにお父様とお母様がわたくしの目の前にいるわ)
キャンディスは己の頬を摘むようにして二人を見ている。
ヴァロンタンとリナの仲はどうなのかはキャンディスにはサッパリだ。
だが、彼女の鼻水を拭っているあたり悪くはないだろう。
ヴァロンタンが「……親子だな」と呟いていたが、キャンディスには何のことかはわからなかった。
ヴァロンタンは椅子に腰掛けて、無表情ではあるがリナと会話しているではないか。
キャンディスの目からはまたポロポロと涙が出る。
「キャンディス、どうかしたか?」
ヴァロンタンの問いかけにキャンディスは首を横に振る。
こんな光景をみることができたのなら、今までの苦労や我慢がすべて報われたような気がした。
(わたくし、いい皇女を目指して本当によかった)
心からそう思えた瞬間だった。
「ふふっ……キャンディスは泣き虫ね。グスッ」
「お母様にっ、言われたくありませんわ……!」
「そうね……キャンディス、どんな時も覚えていてね。わたくしはあなたを心から愛しているのだと」
「……はい、お母様」
リナは、母は確かにキャンディスを愛してくれている。
こうして手を握り、一緒にいられる幸せに浸っていた。
「ありがとう。いい皇女になって幸せになるの。約束よ?」
「はい、約束ですわ!」
「キャンディス、生まれてきてくれてありがとう」
リナの言葉にキャンディスは幸せの涙を流しながら、大きく頷いたのだった。




