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【11/12 コミック1巻発売中】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
九章 皇女は愛を知る

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133/135

①③③

「キャンディスお姉様にはぼくがいますから……」


「ありがとう、アルチュール」



キャンディスの腫れた瞼を見てアルチュールとミシュリーヌはキャンディスを慰めるようにピタリとくっついている。

彼らにも母親はいない。

アルチュールの双子の妹、ルイーズによれば死んだと聞いたが事実なのだろうか。


(アルチュールは結局、お母様と一度も会えていないわ。それなのにわたくしが泣いているなんておかしい。それにミュリエルも……)


ミュリエルも母親を目の前で失っている。

キャンディスは今回、こうしてリナと再会できたのだ。

そんな彼らの前で弱音を吐いてはいられないではないか。



「わたくしもアルチュールと一緒にいるわ」



アルチュールはキャンディスの笑顔に安心したようだ。

最近の口癖である「キャンディスお姉様を守ります!」と、マクソンスと同じで素振りを始めてしまった。

これでは怒りたくても怒れないではないか。

調度品を壊れたらと思うとハラハラするが、もし壊れたらマクソンスに弁償させればいいやと思っていると、ミュリエルがじっとキャンディスを見つめている。



「もちろんミュリエルもよ。ずっと一緒にいましょうね」



ほんのりと頬を赤らめたミュリエルは嬉しそうににっこりと笑ってから頷いた。

キャンディスの前でしか見せない特別な笑顔は見ていて癒される。

ミュリエルの頭を撫でながら、キャンディスは小さく息を吐き出した。


(お父様にお礼を言わないと……)


今でも思い出すのはキャンディスが取り乱している際『俺がそばにいる』という言葉だ。



(わたくしのそばにお父様が……? 信じられないわ)


キャンディスは自問自答を繰り返すが、確かにヴァロンタンはキャンディスにそう言ってくれたのだ。

なんだか胸がぽかぽかと温かい。キャンディスが胸元で手を握る。

赤い宝石が嵌め込まれたペンダントがカチャリと音を立てた。

ミュリエルがじっとその様子を見つめていた。



──それから三日後のこと。


リナの容体が安定しつつあると聞いていたキャンディスが部屋で誕生日プレゼントの本を読んでいた。


(な、なんでいい話なのかしら……! 何度読んでも素晴らしいわ)


ヒロインとヒーローが結ばれるまでの紆余曲折がたまらない。

キャンディスは近くにあった布で涙を拭って鼻をかんだ。

最初は本が読みづらくてイライラしていたが、一カ月もこの状態では片手でページを捲るのにも少しずつ慣れてくる。

するとドタドタと響く足音と何かを引き止める声とともにキャンディスの部屋の扉が開いた。



「──キャンディス、キャンディスッ」


「……っ!?」



そこにいたのはリナと困惑する医師たちだった。

キャンディスの名前を呼びながらすさまじい勢いでこちらに向かってくるではないか。

両手を広げたリナがこちらに走ってこようとした瞬間、べチャリという音と共に視界から消えてしまう。



「お、お母様っ!?」


「…………いたぁ」



額に傷ができたのか、たらりと血を垂らしながらもこちらにくるリナ。

怪我をどうにかしなくてはと、布を当てがおうとする医師。

立ち上がろうとしたリナはフラリとよろめいてテーブルに激突して悶えている。

キャンディスは本を閉じてベッドから降りてリナの元へ駆け寄った。



「大丈夫ですか!? お母様っ」


「まぁ……聞いた!? 今、わたくしのことをお母様って! キャンディスがわたくしをお母様って言ってくれたわっ」



感動しているのかリナの目からポロポロと大粒な涙がこぼれていく。

キャンディスを折れそうな細い腕で抱きしめてそのまま号泣したリナ。


(く、くるしい……!)


豊満な胸に押し潰されて窒息してしまいそうになる。

流れ出る鼻水を啜っていたリナだが、咳き込んだ拍子に吐血してしまう。

それからフラフラと上半身が揺れ動く。



「…………あれ? キャンディスが回っているわ」


「キャアアア、お母様っ!?」



そして気絶してしまった。

医師たちは慌ててリナを運ぶ準備をしていく。

キャンディスは呆然としていた。


(な、何があったの……?)


リナに会えた感動や触れられた嬉しさが吹っ飛んでしまうほどの衝撃。

キャンディスが状況がわからずに動けずにいると残った医師が現状を説明してくれた。

リナは目を覚まして動けるようになった途端、キャンディスの元へ向かったそうだ。

まだまだ安静にしなければならないため、できるならキャンディスがバイオレット宮殿のリナがいる部屋に来て欲しいのだという。



「わ、わかったわ」


「よろしくお願いいたします! ではっ」



運ばれてリナが部屋から去っていく。

まるで嵐がキャンディスの前を通り過ぎていったようだ。

キャンディスは母親というイメージをジャンヌや本性が見える前、リュカの母親のマリアをイメージしていた。

マクソンスの母親とは当たり障りのない会話しかしたことなく、値踏みされるような視線が気に入らなかった。

けれどキャンディスの母親であるリナは一言でいうと目が離せない、だ。


(わたくしのお母様って……なんだか想像していたのと違うわね)


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