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どこに向かったのかレッド宮殿の者たちに問いかけるもマクソンスは何も言わずに度々どこかにでかけるのかはわからないと答えた
なんとか候補を調べあげて、場所を探り当てた。
恐らくマクソンスやキャンディスがいる場所は孤児院だということが判明した。
それもトップレデロ大将の右腕と言われていたギーグ元中将がひっそりと運営している孤児院だ。
彼は怪我をきっかけに地位を捨てた。
マクソンスの剣の師であることは聞いていたが、孤児院がある場所は新しい賊が入り込んで治安が悪くなりつつある。
自警団がなんとか抑えているらしいが、手段は選ばずに奪っては殺す賊の噂はヴァロンタンの耳にも届いていた。
(……嫌な予感がするな)
ヴァロンタンは馬を出してキャンディスたちがいる孤児院へと向かった。
丘の上には泣いている十人ほどの子どもたちの姿があった。
「おい、何があった!?」
ヴァロンタンの問いかけに子どもたちは泣きながら答えた。
「お姫様が助けてくれたの!」
「おれたちを逃がしてくれたんだ……!」
「今も悪者と戦っているんだ。神父様とマクソンス兄ちゃんがっ」
話を聞いている間にも馬車や自警団が到着する。
シスターと御者は誰かを探すようにあたりを見回しているではないか。
それがキャンディスだと知る。
ヴァロンタンが御者に話を聞くと、なんとキャンディスは子どもたちを助けると言ってここに残ったらしい。
自警団から賊が孤児院を狙っていたと聞いて嫌な予感が確信へと変わる。
それはユーゴやモンファも同じだったのだろう。
ヴァロンタンもすぐに孤児院へと向かう。
開けた場所から聞こえる汚い悲鳴と、今にも剣を突き立てられそうなキャンディスの姿が見えた。
その瞬間、体が動いた。
ヴァロンタンはモンファが賊を取り押さえているうちに震える手で血まみれのキャンディスを抱え上げる。
心臓がありえないほどに脈打っていた。
キャンディスが言った『ごめんなさい』とはどういう意味なのかはわからない。
わからないがキャンディスを失いたくないと強く思った瞬間だった。
ヴァロンタンは意識を失ったキャンディスを抱えたがら傷の具合を確認する。
返り血は自分のものではないようだ。
(まさかこんなことになるとは……意識が混濁している? 頭を強く打ったのか)
キャンディスを王宮に運ぶための手筈を整えていく。
医師を連れてこなかったことがこんなにも後悔するとは思わなかった。
それにしてもキャンディスの行動力は凄まじいものだった。
これではホワイト宮殿に今いる侍女たちではどうにもできない。
ロン一族に力を借りなければと考えていた時だった。
目の前では深々と頭を下げるギーグ元中将の姿。
今は神父である彼とマクソンスは受け身を取ったからか大した怪我はしていないことだった。
マクソンスも服についた埃を払い、珍しく申し訳なさそうにしている。
その目には涙が浮かんでいるではないか。
「説明をしてもらう。今はキャンディスが優先だ」
「……はい。もちろんです」
自警団が子どもたちのために呼んだのか、駆けつけた医師がキャンディスの容体をチェックする。
頭を打ちつけたことや痛みにより意識を失っているようだな、左腕は間違いなく骨が折れているそうだ。
その瞬間、激しい怒りが込み上げてくる。
「楽に死ねると思うなよ……?」
ポソリとそう呟いたヴァロンタンの血走った目や恐ろしい表情を見て周囲は静まり返っている。
早馬で王宮に馬車を送り、医師を乗せて連れてくるように指示を出す。
そのままキャンディス、アルチュール、マクソンスと王宮に帰るための馬車も用意する。
その間にシスターやギーグ神父からキャンディスの信じられない行動を聞くことを聞くことになる。
シスターはキャンディスが子どもたちとアルチュールを率先して逃したと語った。
渋る御者を説得して自警団や王宮に連絡するように指示を出したそうだ。
それだけでも驚きなのだがギーグ神父はこう続けた。
「キャンディス皇女様が私のダガーを使い、子どもたちと我々を救ってくださいました」
「…………なんだと?」
ユーゴと目を合わせると彼はヴァロンタンの意志を読み取って、小さく首を横に振る。
それから倒れているゴロツキの出血している足部分に視線を送ると、剣で斬った後ではなく、明らかに突き刺した跡がある。
的確に弱点を狙って戦っているようだ。
(……何故、キャンディスは短剣の使い方を知っている? まぐれでここまでできるはずもない)
そんなことできるはずがない。誰もがそう思った。
「キャンディス皇女様がいなければ、間違いなく私は死んでいたでしょう……」
「…………」




