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【11/12 コミック1巻発売中】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
七章 皇女、大奮闘

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111/135

①①①

「ずるいわ! わたしもお姫様と仲良くなるのっ」


「綺麗な髪、素敵なドレス……!」



ドレスではなくワンピースなのだが、彼女たちにとってはドレスに見えるのだろうか。

体を硬くしていたキャンディスは、騒ぐ女の子たちに戸惑っていたがすぐに声を上げた。



「わ、わたくしが美しいのは当然でしょう……!」


「どうしてお姫様がこんなところにいるの?」


「お姫様はお城に住んでいるのよね? コンヤクシャもいるんでしょう?」


「婚約者、ですって……?」



キャンディスはふとジョルジュの顔を思い出す。

胡散臭い笑顔でこちらを見つめる彼の姿を思い浮かべるだけで、なんだか嫌な気分だ。

時が戻る前はキャンディスに興味もなかったようだが、今回はこの段階からアピールしてくるのだ。


キャンディスはマクソンスに助けを求めるように視線を送る。

質問責めにされていたが、どうやらアルチュールも同じだった。



「キ、キャンディスお姉様……たすけてください」


「王子さまだわ! けっこんしましょう」


「かわいい王子さまよっ」

 


同じように女の子たちに囲まれているアルチュールがキャンディスに助けを求めてやってくる。

再びミュリエルとアルチュールに挟まれてしまう。

彼らがキャンディスに抱きついたのと同時に、袋の周りに押し寄せるようにやってくる子どもたち。



「これなぁに?」


「キラキラがいっぱいだわ」



子どもたちはキャンディスの持っていた荷物に興味津々のようだ。



「お待ちなさい! これは……」


「ダメよ! やめなさいっ」



キャンディスが声を上げるとシスターが慌てて子どもたちを抱え上げる。

嬉しそうにしている子どもたちだが、よく見るとシスターたちも痩せ細っていて、とても健康状態がいいようには見えない。


(他に人もいないし、もしかしてこの二人でこの人数の子どもの面倒を見ていると言うの……?)


キャンディス一人に対してあれだけの人が動いているのを考えると信じられない気分だった。

キャンディスは謝るシスターに問いかける。



「ここには大人が二人しかいないのかしら?」


「はい、そうですよ」


「……そう。彼らは随分と痩せ細っているようだけどどうしてこうなっているの? お腹が空いている子もたくさんいるでしょう?」



キャンディスは初めて見る光景を信じられない気分で見ていた



「そうですね。寄付だけではどうにも……この人数ですから」



シスターは困ったように笑った。ここにはシェフも侍女も侍従もいない。

着るものも満足にない。講師も医師も御者もいない生活。

寒い中、耐え続けてお腹も空いてしまう。

だけど食べるものは何もない。それをキャンディスは経験したことがあるではいか。


(…………わたくしは忘れていたんだわ。この苦しみを味わって知っていたのに)


最近はあの生活が当たり前になっていた。

キャンディスも彼らの気持ちが痛いほどわかるではないか。

グッと拳を握ったキャンディスは顔を上げる。



「シスター、これを受け取ってちょうだい!」


「……こちらは?」


「ここの子どもたちのために使ってくださる?」



キャンディスはカバンいっぱいに入ったものをシスターに渡す。

よくわからないが換金すれば少しは食べ物が買えるはずだ。

これからの生活の足しにしようとしたことなどすっかり忘れて、キャンディスは子どもたちに苦しんでほしくないと必死だった。



「よ、よろしいのでしょうか」


「わたくしがいいと言っているのよ! これを売れば少しはいい食事ができるでしょう!?」



キャンディスから袋を受け取ったシスターが追いかけてきたギーグ神父に話す。

するとギーグ神父は膝を折り、目線を合わせると深々とお辞儀をする。

それだけでも彼が誠実だとわかる。

シスターは涙を流しながらキャンディスに感謝しているではないか。

なんだか気分は悪くない。

そんな姿を見て思うところがあったのだろうか。

アルチュールもお気に入りの本を孤児院の子どもに渡していた。



「アルチュール、それはお気に入りの本でしょう?」


「キャンディスお姉様がそうするなら、ぼくもあげます!」


「……アルチュール」



キャンディスはアルチュールをギュッと抱きしめた。

彼の優しさが姉として嬉しかったのだ。


ミュリエルがキャンディスのワンピースの裾を引く。

それから建物を指差してからキャンディスに指を移す。

そのまま走って行ってしまった。

キャンディスがミュリエルが何を言いたいかわからずに呆然としていると、シスターが口を開く。



「ミュリエルは何か見せたいものがあるんじゃないでしょうか」


「……わたくしに見せたいもの?」



キャンディスは首を傾げた。

ふとミュリエルが何故、話せないのかが気になってしまう。



「ミュリエルは喋れないのかしら?」



キャンディスが問いかけるとシスターは悲しそうに瞼を伏せた。



「神父様から聞いたのですが、ミュリエルは目の前でゴロツキに母親を殺されたそうで……攫われそうになっていたところをたまたまギーグ神父が助けたんです」


「…………!」


「その影響でミュリエルの声が出なくなったのではないかって、神父様は言っていましたわ」


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