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【書籍化】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
一章 悪の皇女はもう誰も殺さない
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二つ目は『今までと真逆な行動を取る』こと。


兄弟たちを殺さないことはもちろんだが、目指すは誰にも手をかけることのない〝いい皇女〟だ。

そうすれば同じ道を辿ることはまずないはずだ。


(だけど、そんなことがわたくしに本当にできるのかしら……)


この宮殿で武器を振るわずに生き残ることができるだろうか。

キャンディスと同じ気性の荒い第一皇子のマクソンスはキャンディスの四つ年が上で今は九歳。

彼は今、純粋に強さを求める純朴な少年で剣術の稽古に熱中している。

マクソンスも成長すると容赦なく人を斬っていた。


(あの男は強さに異常なこだわりを持っていたわ……美しいとは思えないけど)


キャンディスは気に入らなければ何でも排除していたが、マクソンスは弱い者に対して容赦がなかった。

つまり弱さが悪なのだ。


ただただ強さに執着して、いつも己を鍛えていた。

それは彼の祖父である軍部の総帥の影響であるのだが、マクソンスはその影響を受けていたようだ。

キャンディスはそんなマクソンスの気持ちを理解することはできなかった。

ただ強さに取り憑かれた哀れな男だと思うのと同時に親近感と嫌悪感を感じていた。


今ならその理由を理解することができる。

マクソンスは強さに、キャンディスは父親に執着した。


(今まで気が付かなかったけど、マクソンスお兄様もわたくしも似た者同士だったのね)


第二皇子のリュカは本が好きな内気な皇子である。

キャンディスよりも二つ上の七歳で、まだ母親と共に教会に通い祈りを捧げている純朴な少年だが、そのうちに部屋に引きこもるようになり毒物の研究に没頭する。


母親に大きな期待を掛けられているが、その控えめな性格から出来損ないと言われていた。

王宮で暮らしてマクソンスやキャンディスに馬鹿にされたり揶揄われたりすることで更に自信をなくしていく。

捻くれていて根暗なリュカだが、言いなりになる彼が嫌いではなかった。


実際、リュカは嫌がりながらもキャンディスの命令をよく聞いてくれた。

リュカは気が弱く、キャンディスやマクソンスに逆らうことはできなかったからだ。


(リュカお兄様の作った毒でマクソンスお兄様を弱らせてから殺したの……今でもよく覚えているわ)


その後、キャンディスは協力してくれたリュカをレイピアで殺した。

二人を引き摺って行ったパーティーで父にその成果を見せたのだ。


(……わたくし、何てことをしてしまったのかしら)


自分の行動の愚かさに今になって気づく。

何故こんなことをしたのかわからないが、父に認められたいその一心でキャンディスは動いていたのだ。


第三皇子のアルチュールはキャンディスの一つ下で今は四歳だ。

彼は今のところ無害で成長してもキャンディスの視界には入らない。

この宮殿の中で歪むことなく育ったのが不思議なくらいだ。


(いつもアルチュールのそばにいたあの侍女……あの女のせい?)


状況的にもキャンディスと近く、母親の愛情を受けて育つことはなかったのが、アルチュールはキャンディスのようにすぐに侍女をクビにしなかった。

乳母が母親代わりになっていたことで彼は愛情を知っていったのだろう。


キャンディスは今の段階では兄弟とは誰とも関わっていない。

そして父であるヴァロンタンは、そもそもキャンディスに近づいてくることは一切ない。


この時はまだ父に焦がれていない。

キャンディスは体の弱い母親に会えることだけを夢見ていた。


今のところ気をつけなければならないのは、自分の立ち振る舞いくらいだろうか。

真逆のことをやること、それが一番難しいのだが……


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