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第53話 グレースと謎の集団 



 学院祭の最中、正門前に現れた、サーカス団と思わしき怪しげな集団。彼らは守衛の制止を無視して学院内部へと進もうとする。

 突如正門前で発生した騒動に、学院祭を訪れた人々は不安な表情で様子を見守っていた。


 同じ頃、正門へ向かって歩みを進めていたヨネシゲとグレースも正門前で起きている異変に気が付く。


「グレース先生、何か騒ぎが起きているみたいです!」


「そのようですね。行ってみましょう!」


 2人は人混みを掻き分けながら、正門前へと急行する。


 ヨネシゲたちが正門前に到着すると、謎の集団と守衛たちが揉み合いになっていた。数で勝る謎の集団は、守衛たちをグイグイと押し退けて前進していく。


「な、何だ!? あの集団は!?」


 ヨネシゲは、珍妙な格好をする謎の集団を見て顔を引き攣らせるも、オスギたちの援護に向かおうとする。そんな彼をグレースが引き止める。


「グ、グレース先生?」


「ヨネさん、申し訳ありません。彼らは私の客人なんです。ここは私にお任せください」


 何と謎の集団はグレースの客人であったのだ。グレースは急ぎ、守衛たちと揉み合いになっている謎の集団の元へ駆け寄る。


「あなた達! いい加減になさい! 騒ぎは起こさないって約束したでしょ!?」


 グレースが謎の集団を制止すると、ピエロ男がニヤッと笑みを浮かべる。


「おう、グレースか。ほんの挨拶代わりだよ」


 ピエロ男の言葉を聞いて、グレースは大きなため息を吐いた。

 グレースの制止もあり、謎の集団は大人しくなった。彼女の元へヨネシゲが駆け寄ると、事情を尋ねる。


「グレース先生、これは一体?」


 グレースは申し訳無さそうに頭を下げながら、返事を返す。


「すみません。彼らは私が呼んだ異国のサーカス団なんです」 


「異国のサーカス団?」


 ヨネシゲと守衛たちが首を傾げると、グレースが説明を続ける。


「彼らは私の知り合いでして。学院祭の話をしたら、是非、公演したいということで、私が招待したんです」


 グレースの説明を聞いたオスギが、困った表情を見せる。


「でも、グレース先生。学院内で演し物をするためには、事前に行われる抽選に当選して、特別な許可を得る必要があるんですよ。だから、このサーカス団の方々を学院内に入れるわけには……」


 オスギの言葉を聞いたグレースはニッコリとした笑みを浮かべる。


「その点はご安心下さい。学院長からは特別に許可は頂いております」


 グレースの言葉を聞いた守衛たちは互いに顔を見合わす。

 驚いたことに、学院長ラシャドはこのサーカス団のために、特別に公演許可を出しているらしい。仮にそうだったとしても、このような重要な事実を関係者に知らせないなど、ラシャドがすることではない。

 守衛たちが不審に思っていると、グレースはサーカス団を引き連れ、校舎へと向かおうとする。オスギが透かさずグレースたちを制止する。


「グ、グレース先生! ちょっと!」


 グレースはオスギの方を振り返る。


「ウフフ……オスギさん。心配でしたら、後で学院長に確認なさってください」


 グレースはオスギにそう伝えると、いつも以上に妖艶な笑みを浮かべる。その途端、オスギは苦しそうな表情を見せると、胸を押さえてしゃがみ込んでしまう。驚いたヨネシゲや他の守衛たちが彼の元へ駆け寄る。グレースたちはその様子を横目にしながら校舎へと向かっていった。


「オ、オスギさん! 大丈夫ですか!?」


 ヨネシゲが大きな声を掛けると、オスギは額に汗を滲ませながら、返事を返す。


「ああ、すまんな。突然、動悸が……」


 オスギは守衛たちの肩を借りて立ち上がると、ヨネシゲに注意を促す。


「ヨネさん。あのサーカス団を注意して見張っておくんだ。生徒やお客さんに危害を加えられてからじゃ遅いからな……」


「わ、わかりました!」


 ヨネシゲが了解すると、オスギはグレースについても言及する。

 

「気を悪くしたらすまない。前々から気になっていたのだが、グレース先生は何を考えているかわからない人だ。おまけに、あのサーカス軍団とも関わりがあるようだからな。彼女は危険かもしれない。良からぬ事を企てていなければ良いが……」


 長年、守衛として多くの不審者を見てきたオスギは、グレースと謎の集団から発せられる危険な香りを感じ取っているようだ。

 突然オスギが発したグレースを否定するような発言。それを聞いた一部の守衛たちが、オスギに反論する。


「オスギさん! 何言ってんだい! あんな美人な先生が悪いことする訳ないでしょ!」


「そうだよ! 愛想も良いし、こんな俺なんかのことも気遣ってくれる。優しい人だよ、グレース先生は」


「……ああ。そうであってほしいな」


 反論する守衛たちを横目に、オスギは休養のため守衛所に入った。

 ヨネシゲが気付いた頃には、グレースとサーカス団の姿を消していた。ヨネシゲは顎に手を添えながら、思考を巡らす。


(確かに、グレース先生は不思議な人かもしれない。だけど、他の皆が言う通り、悪い人じゃないだろう。いや、そうであってほしい。だけど、今日のグレース先生は、何かがおかしい。オスギさんが倒れても、そのまま無視して行っちゃうしな)


 ヨネシゲもオスギと同じく、グレースに不信感を抱き始めるのであった。



つづく……

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