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ヨネシゲ夢想 〜君が描いた空想の果てで〜  作者: 豊田楽太郎
カルム閑話【カルムの若き星たち】
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第393話 神からの試練

 突如ヨネシゲを襲った怪現象。

 殿堂内には、一連の出来事をウィンターに説明する角刈りの姿があった。


「――そういう訳なんですよ……」


「なるほど……気付いたら暗闇の中に居て……そして青鬼が現れた……?」


「はい……その通りです……」


「青鬼……青鬼……――っ!」


「ウィンター様……どうかされましたか?」


 顎に手を添えながら考え込むウィンターだったが、突然ハッとした表情を見せる。透かさすヨネシゲが尋ねると、意外な答えが返ってきた。


「もしかしたら……その青鬼の正体は……『怒神オーガ』ではないでしょうか?」


「ど、怒神オーガ……!?」


「ええ。トロイメライ神話では、怒神オーガは青鬼の姿をしていると記されています。

 そして……その怒神のものと思われる『神格想素』の影響を受けたヨネシゲ殿は――青鬼に姿を変えたと聞き及んでおります。

 だとすると、ヨネシゲ殿の前に現れた青鬼は『怒神オーガ』と考えるのが自然ではないでしょうか?」


「確かにそうですね……。ですが、どうして突然俺の前に怒神が現れたんでしょうか?」


 角刈りの疑問を聞いた少年はゆっくりと頷くと、自身の体験談を交えて語り始める。


「実は……以前、私も同じような体験をしております。あれは……物心ついて間もない頃でした。いつものように瞑想していると……突然暗闇に飲み込まれてしまい……とても大きな白猫が語り掛けてきたのです……」


「とても大きな白猫?……――も、もしかして!?」


 ヨネシゲは側方に視線を移す。

 そこには刀を握り、銀色の防具を身に着ける巨大な白猫――八切猫神の神像があった。

 お気に入りの黒縁眼鏡を掛け直しながら神像を見つめる角刈りに少年が続ける。

 

「お察しの通り……その白猫が八切猫神様だったのです。そして私に試練をお与えになりました……」


「試練?」


「ええ。暴政を敷く兄を討ち取れと――」


 彼の実兄『ウィル・サンディ』はこのフィーニスの地で暴政を敷いていた。しかし実弟(ウィンター)に討ち取られてしまい命を落としてしまうが……現在は改革戦士団四天王『ソード』として復活を果たしている。


 ここでウィンターが徐ろに立ち上がる。――その刹那、彼の全身が突然青白い光に包まれた。角刈りは呆気にとられた様子で少年を見つめる。

 

 やがて発光が収まると、ヨネシゲの瞳に映し出されたものは――白い猫耳と同色の尻尾を生やしたウィンターの姿だった。


「ウィンター様……そのお姿は……?」


「はい。私はこの姿を『猫神化』と呼んでおります。これは……試練を乗り越える為に、八切猫神様から授かった力です。この圧倒的な力のお陰で、当時八歳だった私でも、『北国(ほっこく)青剣(せいけん)』と呼ばれて名を馳せていた兄を容易く討ち取ることができました……」


 少年はどこか悲しげに目を伏せながら言葉を続ける。


「常識的に考えて、とても信じがたい話ですが、八切猫神様――神様が実在すると確信した出来事でした……」


 ウィンターは猫神化を解除すると、畳に腰を下ろす。


「話はそれましたが……もし本当に青鬼が怒神だとしたら――怒神はヨネシゲ殿に試練を与えているのかもしれませんね」


「試練ですか?」


「ええ。怒神の力を授けるに相応しい人物かどうか……見極めるつもりなのでしょう」


 少年の言葉を聞き終えた角刈りが苦笑を見せる。


「へへっ……そいつは荷が重いですね。今から胃に穴があきそうですよ」


「ご安心ください。ヨネシゲ殿が試練を乗り越えられるよう、私が全力でサポートいたします。ヨネシゲ殿には……私に代わるような存在になってもらいたい……」


「ガッハッハッ! ウィンター様の代わりなんて……それこそ荷が重いですよ」


「ふふっ……よろしくお願いしますよ? また、攫われてしまうかもしれませんので……」


「またまたご冗談を……そうならない事を願ってますよ。とはいえ……俺もウィンター様と肩を並べられるほど強くなりたい。怒神が試練を与えているというならば、全力で乗り切ってみますよ!」


「応援してます」


 角刈りと少年は互いに顔を見合わせながら微笑むのであった。




 ――同じ頃。

 国王ネビュラの元に一人の夫人が訪れる。


「陛下、ドロシーでございます。お待たせして申し訳ありません」


「いやいや、そう畏まる必要はない。朝の忙しい時間に呼んだのは俺の方だからな」


「恐縮であります……」


 その夫人――カルム領主カーティスの妻『ドロシー・タイロン』が国王に呼ばれた理由は――


「お前に至急確認しておきたい事がある」


「確認しておきたい……事ですか?」


 ネビュラの言葉にドロシーが顔を強張らせる。すると国王の口から意外な言葉が発せられた。


「ドロシーよ。夫の元へ帰りたいか?」


「……え?」


 予想外の問い掛け。

 思考を停止させる夫人にネビュラが言う。


「もしお前にその意思があるというならば……()()()()()()()()()()()()


「そ、それは……(まこと)ですか……?」


「うむ。実はな――」


 瞳を輝かせる夫人に国王が説明を始めた。



つづく……

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