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ヨネシゲ夢想 〜君が描いた空想の果てで〜  作者: 豊田楽太郎
カルム閑話【カルムの若き星たち】
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第381話 サンディの湯 〜男湯〜(後編)

 ――突如男湯に出現した美女二人。


 一人は、金髪お団子ヘアの妖艶美女――『グレース・スタージェス』だ。

 自慢のダイナマイトボディにはバスタオルが巻かれているが、そのラインはくっきりと表現されており、彼女の魅力を最大限に引き出している。

 極めつけはギリギリのところまで露出させた細くて長い美脚だ。男性陣の視線を釘付けにすること間違い無しだろう。


 もう一人は、銀髪三つ編みお下げの長身美女――『エスタ・グレート・ゲネシス』である。

 グレース同様、グラマーな身体にはバスタオルが巻かれている。しかし、一際目を引く豊満な膨らみは完全に隠しきれておらず、歩く度に大きく揺れて、今にも零れ落ちそうだ。

 彼女もまた肉付きのよい美脚を最大限のところまで見せびらかせている。


 突然の美女襲来に男性陣は動揺を隠しきれない様子だ。


 ヨネシゲは平常心を保ちながら二人に訊く。


「あ、あの……ここは男湯ですけど……どうしてこちらに……?」


 角刈りの問い掛けにグレースが妖艶に微笑みながら答える。


「ウフフ。皆さんと親睦を深める為ですよ」


「し、親睦?」


 首を傾げるヨネシゲにエスタが説明。


「ええ。これから皆さんとはひとつ屋根の下で寝食を共にするのですよ? お互いのことをよく知っておく必要がある……そう思いませんか?」


「た、確かにそうですが……いや、しかし……!」


 エスタに代わってグレースが訴える。


「そ・こ・で! 裸の付き合いを通して親睦を深めようと考えたのです。生まれた状態の姿になることで、お互いの距離をグッと縮めることができますよ?」


 だが角刈りは彼女たちの意見に流されることはなく、待ったをかける。


「いやちょっと待て! 無茶苦茶すぎるぞ! 別に裸の付き合いに(こだわ)る必要はないだろう?! この後の宴でも十分親睦を深めることができると思うがな?」


「ウフフ……強がる必要なんてありませんよ? ヨネさんもしたいでしょ? 裸の付き合いを」


「強がってるわけじゃねえ! 色々と倫理的にマズイんだ! いいから早く女湯に戻れ!」


「まあまあ……そう仰らずに……」


 一歩……そしてまた一歩――美女たちが男性陣との間合いを詰めていく。


 グレースがとびきり艶っぽい笑みを浮かべる。


「ヨネさん、私が背中を流して差し上げますよ?」


「いや、大丈夫だよ! もう洗い終わってるから!」


「ウフフ……遠慮なさらずに……たっぷりとサービスしてあげますから……」


「サービスってなんだよ?!」


 そして皇妹も悪戯っぽく微笑みながら男性陣を見渡す。


「ウフフ……何方(どなた)か私と洗いっこしませんか?」


 ――エスタの誘惑。

 その声に真っ先に反応したのはこの男だ!


「はいっ! 俺、立候補するッス!」


 ドランカドだっ!

 真四角野郎は挙手で意思表示。鼻の下を伸ばしながら皇妹に歩み寄っていく。


 ――だがしかし。

 エスタはドランカドの背後に視線を移した。


「――ヒュバート王子、私と洗いっこしませんか?」


「……え? ぼ、僕?!」


 自分を指差しながら驚くヒュバート。

 一方のエスタは、心底落ち込んだ様子で立ち尽くすドランカドを横目にしながら、王子の元へゆっくりと歩み寄る。


「ええ。ちょっとしたスキンシップだと思って付き合ってくださいな。これも両国の親睦を深めるために必要なのです。それと……()()()()()に、私が色々教えて差し上げますよ?」


「い、いや、ちょっと待ってくれ! 僕はそのようなスキンシップなど望んでいない! そ、そういうのは……愛する者同士でするべきだ。僕にはシオンという最愛の人が居るし、皇妹殿下だってウィンターという大切な人が居るだろう?」


「ふーむ。確かにそうですね……」


 ヒュバートの説得にエスタがわざとらしく顎に手を添えながら思案する。


 ――が、ここてアクシデント発生。


 エスタの身体に巻かれていたバスタオル。その固定部分が豊満バストの弾力に耐えきれず――バスタオルは弾け飛ぶようして脱げ落ちた。


 その刹那。

 刺激的な光景にヒュバートは目を回しながら倒れる――が、その身体を父ネビュラが受け止めた。


 他の男性陣は――皇妹から目を背ける者、鼻の下を伸ばしながら凝視する者、呆れた様子で頭を押さえる者など、反応は様々である。


 一方、裸体を晒すエスタは、とぼけた様子でヘラヘラと笑いながら、バスタオルを拾う――が、身体には巻かず、それを肩に掛ける。


「エヘヘ、見られちゃいましたね。ですが恥ずかしがる必要はございませんよ? 人は誰しも一糸纏わぬ姿で生まれてくるのですから――」


「目の毒だっ! いいから早く身体を隠せっ!」


「仕方ないですわね……」


 国王が怒鳴ると皇妹は渋々バスタオルで身体を覆った。


「ウフフ……エスタ様のグラマーボティは、並の殿方たちには刺激が強すぎるみたいですね?」


「あら? そういうグレースさんのダイナマイトボディも色気ムンムンで悩殺レベルですよ?」


 グレースとエスタは、してやったりの表情でニヤリと口角を上げた。


 そんな美女二人を凝視するドランカドは、落ち着かない様子で身体をくねらせながら、情けない声を漏らす。


「ヨネさん……俺……もうダメ……ダメっす……」


「コラ! 変な声出すんじゃねえ! これ以上二人を直視するな!」


 ――このままではいけない。

 角刈りが美女たちに退出を求めようと、口を開きかけた――その時である。


 突然、出入口の引き戸が開かれた。


「失礼します」


「テ、テレサ?!」


 男湯に姿を見せた赤紫髪の女性は――皇妹専属侍女『テレサ』だった。


 スタイルの良い身体をバスタオルで覆った彼女は、急ぎ足でエスタとグレースの元まで歩み寄ると――その首根っこに掴み掛かる。


「ちょっ?! テレサ!? 離しなさい! (あるじ)になんてことするの?!」


「痛たた……テレサさん……離してください……!」


 テレサは、必死に藻掻く二人の言葉を完全無視しながら、男性陣に深々と頭を下げる。


「主君とその悪友が大変失礼いたしました。直ぐに退出させますので、今回のことは穏便にお願いします……」


「「「「「「「は、はい……」」」」」」」


 呆気にとられた男性陣が頷いて応えると、テレサは暴れる二人を連行して退出した。



 一連の様子を終始覗き見ていたゴシックの女性が文句を垂れ流す。


「――くっ……()()()を寝取るだけでは飽き足らず、どこまで男を貪れば気が済むの? まあいいわ……そうしていられるのも今のうちなんだからね! アンタにも同じ屈辱を味わわせてあげるから! とりあえず女湯へ移動でござんすよ――」


 彼女は女湯の方角へと移動を開始するのであった。




 ――静けさを取り戻した男湯。

 一同、高鳴る鼓動を鎮めるように大きく深呼吸。

 やがて、落ち着きを取り戻した角刈りと白塗り顔が、肩を竦めながら言葉を漏らす。


「まったく……グレース先生とエスタ殿下は何を考えているんだ?」


「じゃな。久々に心臓が飛び出そうになったわい……」


 そしてトロイメライ最高峰の親子も呆れた様子で言葉を交わす。


「ビュバートよ、大丈夫か?」


「はい……なんとか……それにしても、ウィンターはあんな破廉恥な女性を妻に迎え入れようとしているのですね……」


「ああ……婚姻を認めなくて正解だった……」


 一方で真四角野郎が残念そうに呟く。


「お二人と洗いっこしたかったッス……」


 彼は悲しげな笑みを浮かべながら浴槽に身体を沈めるのであった。




 ――ちょっとしたアクシデントが発生したものの、男湯に穏やかな時が流れ始める。


 男たちは熱々の温泉に浸かりながら、戦いの疲れを癒やす。


 癒やしのひと時を過ごすヨネシゲ、マロウータン、ドランカドの目の前には、徳利が載った丸盆が浮かぶ。これは先程、サンディの家来が気を利かせて持ってきた物である。

 角刈りたちは熱燗が注がれたお猪口(ちょこ)を片手にしながら談笑を交わす。


「くぅ〜! 熱燗が身に沁みるぜ!」


「いや〜、最高ッスね〜。まるで天国にいる気分ッスよ」


「ガッハッハッ! お前は天国を知ってるのかよ?!」


「イメージ、イメージっすよ!」


 熱燗に舌鼓しながら、ご満悦の表情を見せる臣下を眺めながら、白塗り顔がしみじみと語る。


「――極楽極楽じゃ。一時はどうなるかと思うたが、こうして湯に浸かりながら熱燗を味わうことができて、ホッと胸を撫で下ろしている次第じゃ……」


 角刈りが言葉を返す。


「ええ……またマロウータン様たちと酒を酌み交わせることが……どれほど幸せなことか……死を覚悟した戦いを乗り越えたからこそ……今実感しております……」


 白塗り顔が苦笑を見せる。


「ウホッ……死を覚悟したじゃと? 死なれては困るぞよ――」


 マロウータンはそう言いながら徳利を手にすると、角刈りと真四角野郎の猪口に熱燗を注ぐ。


「ありがとうございます……」


「ヘヘッ……すんません……」


 そして白塗り顔は臣下の顔を力強い眼差しで交互に見つめながら思いを語る。


「ヨネシゲ、ドランカドよ。儂らの戦いは始まったばかりじゃ。ひょっとしたら……今まで経験したこともない試練が降りかかってくるやもしれぬ。それこそ死を覚悟するほどの試練がな……」


 姿勢を正しながら真剣な面持ちで話を聞き入る二人にマロウータンが続ける。


「じゃが……例え如何なる苦難が襲い掛かろうとも、決して生き延びることを諦めないでほしい。少なくとも儂より先に死ぬことは絶対に許さぬぞっ!」


「「はい……」」


 主君の思いを受け止めた角刈りたちがゆっくりと頷く。すると白塗り顔がハッとした表情を見せた後、苦笑を浮かべる。


「ウホッ。ちと熱くなりすぎてしもうたのう……」


 マロウータンがそう言いながら猪口に入った酒を飲み干すと、透かさずヨネシゲが徳利を差し出す。


「お注ぎしましょう」


「ウホッ、すまんのう……」


 そしてヨネシゲは猪口に酒を注ぎながら主君に声を掛ける。


「マロウータン様」


「なんじゃ?」


「俺たちもそうですが……マロウータン様も長生きしてくださいよ?」


「当たり前じゃ。孫の顔を見るまでは死ぬわけにはいかぬ!」

 

「ガッハッハッ! お孫様の顔は案外すぐに見れますよ――」


 角刈りは、国王にイジられる王子に視線を移しながら言葉を続ける。


「――これから生まれてくるお孫様の成長と……シオン様とヒュバート王子の幸せを……末永く見守ってください……」


「あいわかった……」


 ここで突然、ドランカドが夜空を見上げながら指差した。


「一番星が輝いてらぁ!」


「おお! 綺麗に輝いているな!」


「ウホッ。露天風呂から眺める一番星もまた格別じゃの……」


 一番星を見つめながら、男たちは何を思うのか……?




 ――その時である。

 浮き輪を身に着けながら浴槽を泳ぎ回るボブが三人衆の側方を通過。湯飛沫が彼らの顔に降り注ぐ。


「コラッ! ドーナツ屋! 風呂で泳ぎ回るな!」


 ヨネシゲが怒鳴るもドーナツ屋は平然と泳ぎ続ける。

 

「――こりゃ最高の()()()()()であるな! それにしても……閣下はどこに行った?」


 ボブは額に手を当てながら、辺りを見渡し、相棒の姿を探すのであった。




 ――その頃。

 女湯では、金髪ロングヘアーの夫人に身体を洗われる――珍獣の姿があった。


「――閣下さん、洗い足りないところはありますか?」


「うむ……尻尾を念入りに洗ってくれ給え」


「はーい。……ウフフ。閣下さんの尻尾、可愛いですね♡」


「ふんす! このお茶目な尻尾の良さがわかるとは……流石ソフィアだ!」


 珍獣は誇らしげに鼻を鳴らすのであった。



つづく……

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