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第22話 ドランカド、現る!



 鍛冶場からの帰り道、ヨネシゲはソフィアと今後について話し合っていた。


「帰ったら仕事探さないとな」


「まだ早いわ。今は親方に委ねましょう」


「それにしても、親方は何を考えているのかな?」


「わからないわ。ただ、親方は義理堅い人だから、あなたの為に何か動こうとしてるのかも。親方を信じましょう!」


 ヨネシゲは青空を見上げる。仕事の事に関しては、今はヘクターに委ねるしかない。とはいえ、仮に仕事を失うことがあれば、この空想世界でどうやって家族を養っていくのか? 自分にできる仕事はあるのだろうか? 

 ヨネシゲがそんな考えを巡らせて歩いていると、後ろからヨネシゲの名を叫ぶ、ガラガラとした男の声が聞こえてきた。

 ヨネシゲが後ろを振り返ると、ヨネシゲと同年代くらいの角刈り頭のオヤジがこちらへ向かって走ってきた。


「お〜い! ヨネさん! 待ってください!」


「誰だ? あのオヤジ?」


 ヨネシゲが漏らした言葉にソフィアが笑いを漏らす。


「オヤジじゃないですよ。あの子はドランカド君よ」


「あの子? ドランカド君だって?」


 ヨネシゲは目を凝らして、こちらに走ってくるドランカドの顔をじっと見つめる。ソフィアの話しぶりだと、ドランカドは彼女より年下のようだ。

 やがてドランカドはヨネシゲたちに追い付くと、息を切らしながら、ニコッと笑顔を見せる。


「やっと追い付いた! ヨネさんたち歩くの速いっすね! 店で昼飯食ってたら、お二人の姿を見かけましてね」


「えっと、君は……」


 ドランカドは、ヨネシゲが記憶を失っていることを既に知っている様子で、自己紹介を始める。


「俺はドランカド。ヨネさんとはカルム屋でよく一緒に飲んでたんですよ。飲み仲間ってやつです!」


 角刈り頭と角張った顔。それに加え、開いているのかわからないほどの細目男の正体は、カルム市場で果物屋の手伝いをしている「ドランカド・シュリーヴ」と言う名の男だった。

 背丈も体型もヨネシゲと大差ない同年代の中年男に見える。しかし人を見た目で判断してはいけないとはよく言うものだ。この後ヨネシゲは、ドランカドの年齢を聞いて驚愕することとなる。

 ドランカドはデレデレとした顔で、ソフィアとの会話を楽しんでいた。


「奥さん、相変わらず美人ですね〜」


「フフフッ、ドランカド君はお世辞がお上手ね」


「お世辞なんかじゃないっすよ〜」


 ここでヨネシゲがドランカドに疑問を投げかける。


「あの、ドランカド?」


「はい! 何ですか、ヨネさん?」


「君は一体、何歳なんだ?」


「俺っすか? 見た目通りのピチピチの22歳ですよ〜!」


「22歳だとっ!?」


 ヨネシゲは顎が外れるくらい口を開き驚いた表情を見せる。

 ハッキリとした口元のほうれい線と貫禄のある顔。ヨネシゲと同年代と思われたドランカドであったが、なんとヨネシゲと半分近く年齢が離れた22歳の青年だった。

 ヨネシゲの驚愕した表情を見てドランカドが笑い声をあげる。


「ガッハッハッ! 最初は皆、この顔を見て、そうやって驚きますよ」


 ドランカドは笑って見せていたが、彼の年齢を聞いたヨネシゲは気不味さすら感じていた。


「いや、その……」


「いいんですよ、ヨネさん。この老け顔、どんどんイジってください!」


 ヨネシゲはドランカドの言葉に苦笑いを見せる。ここでドランカドはヨネシゲに今夜の都合を尋ねる。


「ヨネさん、今夜暇ですか?」


「え? いや、特に予定は入っていないが」


 ヨネシゲが今夜暇であることを確認したドランカドはある提案をする。


「ヨネさん、今夜飲みませんか?」


「飲みにか?」


 ドランカドから突然飲みへ誘われたヨネシゲはソフィアの顔を見る。するとソフィアは微笑みながらヨネシゲの背中を押す。


「私たちのことは気にしなくても大丈夫よ。せっかくのお誘いなんだから、いってらっしゃい」


 ソフィアの言葉を聞いたドランカドはヨネシゲの返事を待たずに決定を下す。


「決まりっすね! じゃあ、今日の夜、いつものところで待ってますから!」


 ドランカドはそう言うと、走りながらもと来た道を戻っていく。透かさずヨネシゲがドランカドを呼び止める。


「お、おい! いつものところって!?」


 ドランカドは走りながら後ろを振り向き、ヨネシゲの質問に答える。


「カルム屋! 海鮮居酒屋カルム屋ですよ!」


 ドランカドはそう言いながら姿を消した。


(なんなんだ、あいつは!?)


 ヨネシゲが呆気に取られていると、ソフィアがヨネシゲの手を握る。


「ソフィア?」


「さあ、帰りましょ。お腹空いたでしょ? 急いでお昼ご飯作るからね」


「ああ、宜しく頼むよ」


 2人はまるで新婚夫婦のように手を繋いで家路につくのであった。




 ――老け顔の青年、ドランカド・シュリーヴ。

 後に、ヨネシゲ・クラフトの片腕として活躍することとなるが、それはもう少し先の話である。



つづく……

最後までご覧くださいまして、ありがとうございます。

次話の投稿は、本日18時頃を予定しております。

是非、ご覧ください。

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