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ヨネシゲ夢想 〜君が描いた空想の果てで〜  作者: 豊田楽太郎
第五部 トロイメライの翳り(王都編)
221/397

第214話 勃発!? とんでも親子喧嘩 【挿絵あり】

 王都特別警備隊の設立。

 その詳細をメテオがヨネシゲたちに説明する。

 現段階で王都特別警備隊は、5個の小隊からなる総勢約250名で編成される予定だ。

 その内訳。

 クボウ小隊――南都五大臣「マロウータン・クボウ南都伯」を筆頭とするクボウ家からは兵を約50名。カルム領から王都へ向かっているクボウ軍が到着次第、クボウ家臣「リキヤ」に小隊長を任命する予定だ。

 サンディ小隊――フィーニス地方領主兼王都守護役「ウィンター・サンディ公爵」有する領軍から約50名を。小隊長にはサンディ家臣「ノア」が任命された。

 ゲッソリオ小隊――ドリム城の警備、雑務等を総括する城内本部の長を務める「モーダメ・ゲッソリオ公爵」の手勢からは約50名。小隊長はゲッソリオの息子「ガンバリヤ・ゲッソリオ」が務める。

 シャチクマン小隊――王都近郊領主「サビザン・シャチクマン子爵」の領軍からは約50名。小隊長には重臣「テイジ」が任務された。

 ディグニティ小隊――南都五大臣「バンナイ・ディグニティ南都伯」の手勢の約50名。小隊長はバンナイ自ら名乗りを上げた。

 いずれも隊員に選ばれるのは空想術と武勇に長けた腕に覚えのある者たち。少数精鋭と言ったところだろうか。


 メテオは説明を終えると、今後の予定について今一度説明する。


「――各勢力には発足に向けた準備を急いでもらっている。そしてクボウの兵士団が王都に到着次第、発足式を行いたい。その後は昼夜問わず交代で王都の警備に当たってもらう。少なくとも王都の治安機関が体制を立て直すまでは、特別警備の任務は続く事だろう」


「承知いたしました」


 メテオの説明を聞き終えたマロウータンたちは頭を下げる。メテオは彼らを解散させる。


「話は以上だ。早速準備に専念してくれ」


 ここでマロウータンがある話題をメテオに切り出す。


「――メテオ様。そして、陛下。私から大事なお話があります」


「なんだ? 申してみよ」


 メテオはネビュラと顔を見合わせた後、白塗り顔に要件を尋ねる。そしてマロウータンは神妙な面持ちで主君を見上げる。


「――現在、リゲルの手中にある、ホープ領――南都の領有権についてです」


 マロウータンの言葉を聞いて再び顔を見合わせた国王と王弟はゆっくりと頷く。そしてメテオが白塗りに伝える。


「マロウータン、場所を変えよう。私の私室まで来てくれないか?」


「かしこまりました」


 王弟は続けてヨネシゲたちに言う。


「ヨネシゲ、ドランカド。すまぬが、お前たちは城内で待機していてくれないか?」


「「了解しました!」」


 力強く返答するヨネシゲたちに、マロウータンが申し訳無さそうに声を掛ける。


「すまんのう。少し待たせてしまうぞよ」


「いえ、私たちの事は気にしないでください。とても大事なお話ですから、そちらを優先してください」


「そうっすよ。俺たちはお庭で日向ぼっこしながら待たせてもらいますから。ご安心ください!」


「ウホッ。それを聞いて安心したわい」


 ヨネシゲたちは軽く頭を下げると、主君と別れその場を後にした。




 中庭を目指し、城内の廊下を歩くヨネシゲとドランカド。二人はつい先程のことを振り返る。


「南都の領土問題はどうなるんでしょうね?」


「そいつはわからん。俺たちもクボウの家臣としてマロウータン様のお役に立ちたいところだが、俺たちが介入できる次元の話じゃないからな。ここは陛下やメテオ様に委ねる他ないだろう」


「そうっすね。南都を含むホープ領は元々クボウの所領。クボウ家臣としてリゲルには渡したくありませんね……」


「そうだな……」


「まあ、マロウータン様なら上手く交渉してくれることでしょう! それよりも俺たちは王都特別警備隊の準備をせねばなりません。とは言ってもカルムからアッパレ様とリキヤ様が到着しないと何もできませんがね」


「王都特別警備隊か。当然クボウの家臣である俺たちも警備隊の一員として王都を巡回することになるだろうな」


「そうっすね。だけど俺たちはクボウの『家臣』ですからね。一般の隊員ではなく、クボウ小隊の中の分隊長とか任されるかもですよ?」


「そうか。へへっ……分隊長か……」


 ニヤつくヨネシゲをドランカドが煽てる。


「よっ! ヨネシゲ分隊長! クボウのエース!」


「ナ、ナッハッハッ! 俺がヨネシゲ分隊長だ! 皆の者、苦しゅうない、苦しゅうないぞ!」


「「ガッハッハッ!」」


 まるで子供のようにはしゃぎながら高笑いを上げるヨネシゲとドランカド。

 その時である。背後からドランカドの名を呼ぶ、中年男のガラガラとした声が響き渡る。


「おう、ドランカド! どのツラ下げて王都に戻ってきた!?」


「!!」


 2人は声がした背後を振り返る。

 そこには黒髪オールバック、角張った顔の中年男が鬼の形相でドランカドを睨む。

 一方のドランカド。彼は目の前の真四角オヤジを目にした途端、トレードマークの細い瞳をかつてない程見開く。額の血管は浮き上がり、顔を真赤にしながら中年男を睨んだ。

 そしてドランカドが呟く。


「――出たな、クソ親父……!!」





 

    挿絵(By みてみん)







 そう。ドランカドの前に現れた黒髪オールバックの真四角オヤジは、ドランカドの実父「ルドラ・シュリーヴ伯爵」だった。王都保安局の長官だ。


 クソ親父呼ばわりする息子に、ルドラが怒号を上げる。


「なんだとっ!? このバカ息子がっ!! お前はこの王都から追放した筈だぞ!? よく戻ってこれたものだな!! 恥を知れ!!」


「あぁ!? たかだか伯爵の分際で何様のつもりだ? 王都はアンタの物じゃねえだろ? 俺を王都から追放する権限なんてねえよ!!」


「このボケがぁ!! お前はその条件を受け入れたから王都から立ち去ったんだろうがっ!! 今更ふざけたこと抜かすなっ!!」


「勘違いするんじゃねぇ!! クソジジイの顔を見たくなかったから、自ら王都を離れたんだよっ!!」


「おのれっ!!」


 城内の廊下に響き渡る怒号。それを耳にした貴族や使用人、兵士たちが各部屋から顔を覗かせる。ヨネシゲはその様子を横目にしながら一人あたふたしていた。

 そして親子の喧嘩はヒートアップ。ドランカドは父ルドラを挑発する。


「や〜いっ! 悔しかったら俺を力尽くで王都から追放してみろよ〜! お尻ペンペン! ここまでおいで〜!」


「ぐぬうっ!! このバカ息子がぁぁぁっ!!!」


 激昂のルドラ。

 舌を出しながら馬鹿にしたような表情で走り出すドランカドを全速力で追う。

 やがて親子は睨み合いながら並走。バルコニーに向かって猛進する。

 その様子を見ていた城内の人々は唖然。ヨネシゲも呆気に取られていたが、これではいけないと親子の後を追い制止を試みる。

 だが――親子は5階にあるバルコニーの柵を突き破り、地上へと降り立った。

 バルコニーに到着したヨネシゲは柵から身を乗り出し、地上の2人に視線を向ける。


「おいおい……マジかよっ!?」


 ヨネシゲは顔を強張らせながら冷や汗を流す。

 地上では、衝撃波を伴った殴り合いの親子喧嘩が繰り広げられていた。


「平気で息子を縁切りにできるアンタは血も涙もない出世欲の塊だっ!!」


「戯けっ!! 誰のお掛けで生き延びられたと思ってるんだ!? でなければお前は命令違反で極刑だったのだぞ!?」


「そのほうがマシだったわい!!」


 親子から繰り出される拳は、互いの顔面や腹部にめり込んでいく。その度に生まれる衝撃波が城内の建築物にダメージを与える。建物や城壁にはヒビが入り、窓ガラスは粉々に砕け散った。止めに入ろうとした城内警備隊もあまりの衝撃ゆえお手上げ状態だ。


 その様子をバルコニーで見ていたヨネシゲは、両手で頭を押さえながら膝を落とす。


「なんてこったー!!」


 虚しく、角刈りの絶叫が城内に響き渡った。



つづく……

ご覧いただきありがとうございます。

2024年11月1日で、ヨネシゲ夢想の連載が始まってから一年が経過しました。ここまで執筆活動が続けられたのも応援してくださる皆様のお陰です。

この場をお借りしてお礼申し上げます。

これからも面白いお話が書けるよう日々精進して参りますので、今後とも宜しくお願いいたします。

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