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第16話 ヨネシゲと姉家族と年齢



 今晩、ヨネシゲの退院を祝う夕食会が行われる。

 既に夕食の準備が完了し、あとはヨネシゲの姉家族が到着するのを待つだけだ。

 この間にヨネシゲの退院を知った近所の人たちが、ヨネシゲの元へ続々と見舞いに訪れていた。ヨネシゲはゆっくりする間もなく対応に追われていた。


「じゃあ、ヨネさん。お大事に」


「どうも、お気遣いありがとうございました。お気を付けてお帰りください」


 ヨネシゲは最後の一人を見送ると玄関の扉を閉めた。

 ヨネシゲが後ろを振り帰ると、近所の人たちから貰った大量の見舞いの品が山のように積まれていた。

 ヨネシゲは苦笑いを見せる。


「気持ちはありがたいんだが、どうすんだこれ」


 貰った見舞いの品は、日持ちする菓子や雑貨品などが中心である。しかし中には日持ちしない肉や魚、今晩作った夕食のお裾分けなど、早急に消費しなければならない品も数多くあった。

 ただでさえ市場の人たちから大量の食材を貰っていたヨネシゲは、その消費の方法に頭を抱える。


「参ったな。姉さんたちに少し持って帰ってもらうか」


 そこへルイスが姿を現す。彼も山のように積まれた見舞いの品を見て苦笑いを見せる。


「父さん、凄いなこれ」


「参ったよ、どうしよう。そうだ! もしあれだったらルイスの友達に配ってもいいぞ。俺たちだけで消費するのは大変だからな」


「うん。使えそうなものがあれば貰っていくよ。でも流石に肉や魚は友達には配れないな」


 立ち尽くす親子2人。すると本日何回目になるかわからない、玄関のベルが鳴り響く。

 

(また客か? これ以上見舞いの品が増えるのは困るぞ)


 ヨネシゲはそう思いながら玄関の扉を開いた。


「おじちゃん!」


「うおっ!?」


 扉を開けたと同時に小柄な少年が家の中に入ってきた。そして、ヨネシゲが玄関の外に目を向けると2人の女性の姿があった。


「おまたせ、シゲちゃん!」


「おじさん、退院おめでとう!」


「トム! リタ! それに姉さん。いらっしゃい。みんなには心配かけた。まあ、とりあえず上がってよ」


 ヨネシゲの元を訪れてきたのは、ヨネシゲの姉メアリーとその子供たちであった。


 ヨネシゲの顔を見上げる、こちらの笑顔が可愛らしい小柄な少年の正体は、ヨネシゲの甥っ子「トム・エイド」だ。

 紫色の瞳と髪が特徴的。同年代と比べて小柄な体型、それに加え可愛らしい見た目から、女の子と間違われることが度々あるそうだ。

 内気な性格だが、ヨネシゲにはとても懐いており、よくロボットのプラモデルを一緒に作ったりしていた。


 続いてメアリーの隣に居る、このボーイッシュな女性は、ヨネシゲの姪っ子「リタ・エイド」である。トムの姉だ。

 母親譲りの赤い瞳に茶色がかった黒髪。髪型も母メアリーと同じでショートヘアである。

 そして性格までもがメアリーに瓜二つであり、その破天荒ぶりは中々のものだ。一度暴走をするとヨネシゲでも手が付けられない。


 そして、この2人の母にして、ヨネシゲの姉である「メアリー・エイド」

 ヨネシゲは幼い頃からメアリーにはよく振り回されてきたが、その反面よく助けてもらった。

 ソフィアとルイスを亡くし、現実に失望していたヨネシゲだったが、メアリーの支えもあって持ち堪えることができた。メアリーの存在がなければ、ヨネシゲは早々に妻子の後を追っていたことだろう。

 ヨネシゲはメアリーに返しきれない程の恩があり、頭の上がらない存在なのだ。メアリーだけではない。トムとリタにもかなり励ましてもらった。

 そんな姉家族と対面したヨネシゲは、ある違和感を覚えていた。


(そういえば姉さん少し若返ったか? それにトムもこんなに小さかったっけ? リタもなんか子供に逆戻りしたような雰囲気だ)


 ちなみにリタの年齢はルイスと同い年だ。17歳で亡くなったルイスだが、もし生きていれば今頃20歳になっている。故に同い年のリタも数ヶ月前に20歳の誕生日を迎えていた。ヨネシゲが20歳なったリタと対面した際、垢抜けてとても大人びた印象だったことを記憶している。しかし、目の前に居るリタはどこか子供っぽい。

 ヨネシゲはリタとトムに年齢を尋ねる。


「えっと、リタとトム今は何歳だっけな?」


「私はルイスと同じ17歳よ」


「僕は8歳だよ」


 なんと2人の年齢はソフィアとルイスが亡くなった当時、3年前の年齢だった。


(多分この世界は、俺の3年前の記憶が反映されているんだ。ソフィアとルイスがまだ生きていた、3年前の記憶がな……)


 ヨネシゲはある仮説を立てる。

 この世界はソフィアが思い描いた空想でありながら、ヨネシゲの記憶も入り混じっている。そしてヨネシゲの人生で、一番色濃く残っている記憶が、ソフィアとルイスを失った3年前のものだ。恐らく当時の記憶がこの空想世界の軸になっているとヨネシゲは仮説する。自ずと、ヨネシゲの記憶にある人物が、この世界に登場すると、3年前の年齢になってしまうという訳だ。

 

 ここでヨネシゲはあることに気が付く。


(待てよ! そうなると姉さんの年齢は俺の2つ上だから、それが3年前となると……この姉さんは俺の一つ下ということか!? そもそも俺はどうなんだ? この世界に来たということは、俺も3歳若返ったということなのか!?)


 ヨネシゲが考えを巡らしていると、メアリーとリタが両手に持たれたバスケット籠を差し出してきた。


「シゲちゃん! 手料理たくさん作ってきたわよ!」


「私も手伝ったんだから残さず食べてよ」


「お、おう。ありがとう!」


 バスケット籠の中には食べ切れない程の手料理が詰め込まれていた。


(これまたすごい量だな)


 ヨネシゲが大量の料理に圧倒されていると、トムに袖を引っ張られる。


「おじちゃん、早くご飯食べよ! お腹ペコペコだよ」


「おう、そうだな! 食べよう食べよう!」


 ヨネシゲはトムに引っ張られながらリビングへと向かう。その後をメアリーたちが続いていく。


 そして、ヨネシゲお待ちかねの退院祝いが始まるのであった。



つづく……

ご覧いただき、ありがとうございます。

本日、19時過ぎに、第17話を投稿します。

是非、ご覧ください。

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