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第120話 南都戦士のプライド



 トロピカル城の会議室に姿を現したのは、南都守護役「リッカルド」だった。彼は会議室に入るなりマロウータンに詰め寄る。


「マロウータン様! 兵を引けとは、一体何をお考えなのですか!? 説明してください!」


「リッカルドよ、落ち着くのだ。今説明を致す」


 マロウータンはリッカルドを落ち着かせた後、今回の計画を打ち明ける。


「南都をエドガーと改革戦士団に明け渡すですと!? そして、奴らに明け渡した南都をタイガー・リゲルに取り返してもらう!? 無茶苦茶過ぎます!」


「どうか、理解してくれ……」


「申し訳ありませんが、この計画、受け入れることはできません」


「リ、リッカルド!」


「宜しいですか? 南都を無傷で明け渡すことは簡単かもしれません。ですが、いくら最強と謳われるタイガーとて、敵から南都を無傷で奪い返すことは不可能でしょう。南都は間違いなく戦火に飲み込まれてしまいます!」


「確かに、無傷で取り返すのは無理じゃろう。だが、壊れた街はまた立て直せばよい。今回は人命を優先したいのじゃ」


 マロウータンの言葉に、リッカルドが声を荒げる。


「人命を優先させたいですって? 冗談はおやめください! この南都を守るために、どれ程多くの同志たちが散っていったか、あなたはご存知なのですか!? 今更人命など言われても遅すぎますよ! これでは、散っていった同志たちが報われないっ!」


 マロウータンは反論できずに口を閉ざす。すると彼の代わりにメテオが語るようにして口を開く。


「リッカルド。マロウータンを責めるな。責を負うのはこの私だ。この計画を立案したのは私だからな。それに戦死した兵士たちには本当に感謝している。彼らが居なかったら、今頃南都は落ち、私もここに居なかったかもしれない……リッカルド、君たちはよくやってくれた。私はこれ以上、大切な同志たちを失いたくない。だから、私たちと一緒に逃れよう……」


 リッカルドは大きく息を吐いた後、メテオに返答する。


「お断りします」


「リッカルド……」

 

「やはり、メテオ様はお優しい。私たちのことを大切に思っていただき感激しております」


「では、共に参ろうではないか」


「それはできませぬ」


「何故だ?」


「私は、南都守護役です! この役職を背負う限り、私は命尽きるまで南都を守り続けます。そして、オスカーや他の同士たちも、私と同じ考えでしょう。何故ならば……私たちは、南都の誇り高き戦士たちなのですから!」


 リッカルドはそう言い終えると、会議室を後にしようとする。その彼をマロウータンが引き留める。


「リッカルド!」


「マロウータン様。先程のご無礼、お許しください」


「構わない。リッカルドよ、気は変わらぬのか?」


「ええ。同志たちがウラナス関所で待っておりますから……」


「そうか……」


「マロウータン様。リゲルの援軍が来るまで、我々は、敵に一歩たりとも南都の敷居を跨がせません! さすれば、南都の街は、傷を一つも負わずに済むでしょう……」


「リッカルド……」


 マロウータンは涙を堪えながら、リッカルドを激励する。


「誇り高き南都の戦士、リッカルドよ! 必ず敵を食い止めて、生き延びるのじゃ! そして、仲間たちも連れて帰ってこい!」


「勿論です! 私も、同志たちも、そう簡単に命を落とすつもりは御座いません!」

 

「武運を祈っているぞ!」


「ありがとうございます。メテオ様と……我が家族たちをよろしくお願い致します」


「任せよ!」


 リッカルドは、マロウータンに微笑みかけた後、同志たちが奮闘するウラナス関所へと戻っていった。


「メテオ様。彼らの働きは無駄にはできません。予定通り、今夜南都を出立しましょう!」


「あいわかった! 方々、出立の準備を致せ!」


「承知仕りました!」


 メテオに頭を下げる南都五大臣たち。その表情は、皆違っていた。




 その頃、ホープ領北部の平原にはリゲル軍本隊の姿があった。そこに別行動していた重臣カルロスの部隊が、予定よりも早く合流していた。

 伸び切った白髪と白い髭の老年の大男が、タイガーの元まで歩み寄ってきた。彼こそが、リゲル家重臣「カルロス・ブラント」である。


「タイガー様っ! アルプに侵入した改革の鼻垂れ小僧共は、息子と共に一人残らず討ち取ってやりましたわい!」


「ご苦労、大義であった。ゆっくり休んでくれと言いたいところじゃが、あと3、4日で南都に到着したい」


「ほほう。タイガー様にしては、珍しく焦っておりますな!」


「ああ。実はな、ロルフ王子から書状が届いてな……」


「ロルフ王子から? して、何と?」


「ウィンターとの和睦、レナが裏で糸を引いていたことがネビュラに知られたようじゃ。今レナは奴に軟禁されているらしい。そして奴は、生意気にこの儂を脅しておるようじゃ……」


「成る程。要するに王妃様の命が惜しかったら、兵を引けとでも?」


「その通りじゃ。奴は、儂がこの程度の脅しで、本気で兵を引くと思っているのか?」


「ワッハッハッ! 恐らく本気だったのでは?」


「フッ。流石、能無し暴君じゃ。あのような小僧に娘を嫁がせたのは、儂の人生の最大の汚点かもしれん……」


「仕方ありません。それはギャラクシー様の意向でしたからな。しかし、そのような脅迫状を貰って黙っている訳にはいきませんな」


「無論じゃ。儂は怒っておる。あの小僧には、きついお仕置きをせねばならんな。南都の件はとっとと片付けて、儂は王都へ向かう」


「御意。では、そうなると……手土産に、エドガーと改革幹部共の御首が必要ですな!」


「そうじゃな。そろそろ、狩りを始めようではないか……!」



つづく……

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