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優しさの裏には咲く火花

作者: 堆烏

私の家族構成は、父、母、姉、私、そして弟だ。

家の中では母の権力がとても大きく、父さんは気弱な性格をしている。

そんな家庭だからか、弟は気弱で泣き虫な男の子に、私は暴力的ですぐに喧嘩するような女の子になってしまった。

よくなよっちい弟を殴ってしまったり、クラスの男子に喧嘩をふっかけたりしてしまう。

その一方で、姉はとても優しいお嬢様みたいな性格をしている。

いつもニコニコしていて、私や弟を可愛がってくれる。

私と弟は、それこそ年はあまり変わらないのだが、私と姉には4歳の月日の差がある。

お母さんにガミガミ叱られる涙目のお父さんをフォローし、弟を慰めたりと、家族の調停役と言っていいほどしっかりしているお姉ちゃんだ。


私は少し前、彼女に聞いたことがある。

「どうやったら、お姉ちゃんみたいに可愛くて優しい人になれるのか」と。

お姉ちゃんは、軽く苦笑して答えてくれなかった。

それ以来、私はお姉ちゃんみたいな人を目標にしていこうと決心した。

・・・・決心してはすぐにキレて、喧嘩して、の繰り返しではあったけれど。


お姉ちゃんの真の素晴らしさを知ったのは、私が高校を卒業するまさにその日の事だった。

私は大好きなクラスメイトに告白した。彼は県外の大学に行ってしまうため、想いを伝えられないまま終わってしまうのはどうしても嫌だったからだ。


結果はというと、やはりフラれた。私はそんなに可愛くはなかったし、すぐに怒ったりするところや、お淑やかではないところも男子からしたら魅力的には映らないことの方が多い。

彼は申し訳なさそうに、でもきっぱり「付き合えない」と返事をしてくれた。

問題は、それを陰から聞いていた男子たちが、クスクスと笑い合っていたことだ。


「アイツ程度の女がA君に釣り合うわけないのにね」

「OKしてもらえるとか、思っていたのか、笑える」


などのような陰口だった。

私は家に帰った後、凄く泣いた。お姉ちゃんに泣きついた。

彼女はよしよし、と優しい笑顔で慰めてくれた。


「あとは私に任せてね、」と優しい声で囁いてくれた。


私は、優しい声の陰に潜む姉の無表情を垣間見てしまった。

夕食の時間になっても姉はリビングに現れず、更に当惑してしまった。


「お姉ちゃんはね。一番私に似た子なのよね~。我が家の中では一切見せないけれど、あの子は怒ると本当に怖いのよ。」


静かに母が言った。聞けば夕食はいらない、ごめんと言って姉は外出したらしい。

姉が夕食を断ったのはこれが初めてだった。


次の日、クラスメイトから連絡がきた。

名前も知らなかった陰口を言っていた男子たちが全員何故か病院送りになったと。

目撃者によると、一人のきれいな女性が殴り倒し消し飛ばしていたという。


1か月後、その男子たちと同じ大学へ進学した元クラスメイトから連絡がきた。

その男子たちは、どの先輩からも疎まれてしまったと。

「怒女神」を怒らせた奴らには、一切関われないという。


「この私の妹の魅力が分からない奴はこの世にいなくてもいいと思うの」


ぼそっとつぶやく姉はとてもかっこよく、私にはまぶしく見えた。

誰かのためにだけ、自分の怒りを使う。姉は誰よりも家族に、友達に、そして私に優しかった。


「お姉ちゃん!大好き!」

「あらあら。私も好きよ」


それから私はことあるごとにちゃんと伝えるようにしている。大好き、と。

そして、大好きな人の魅力的な部分は、私も積極的に取り入れようと思う。


「だからってさ。暴力的な部分を取り入れまくるのはやめた方がいいんじゃないかな」


「何か言った?」

「何か言った?」


「いや・・・何も・・・」


弟は、なぜかいつもため息をついていた。げせぬ。



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