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第87話 神・悪魔・人間【side:へラル】

「違う……あんたは天汰じゃない。女神がワタシを騙そうなんて生意気だね!」


「へぇ……ま、自分のことはよく分かってるよな。そう簡単に契約は破棄出来ないって。ただ、それも間違っている。我は女神でも男神でもないぞ? お前は女かもしれないが、我はバグそのものらしいからな」



 天汰の姿で腕を組み、ワタシが折角作った壁に穴を開けて外を眺めている。

 コイツ、神のくせしてそういうこと気にするんだ……。



「……いいからここ出ようぜ。我も悪魔と二人きりは結構気まずいぞ」


「は? 何逃げようとしてんの? 大切な相棒乗っ取ってるあんたに命令されないといけないの?」


「なぁに言ってんだよ、どっちかと言うと我と汝の方が相棒感あるじゃないか。そっちのへラルって名前を分け合って『へラ』と『ラル』とかどうだ? 我がラルで汝がへラだ」


「勝手に盛り上がんな。天汰を返せ」



 ワタシがそう言うと神はため息をこぼしてこっちを向いた。察しろよ、と言いたげな顔をしているがやはりムカつく。



「そっちが天汰を連れて元の世界に戻るのも、我のとある目的のためにも、天汰が奴らを()()()()ためにも向かう先は一致してるんだぜ。ここで揉めたら共倒れだ。まだ天汰を助けるつもりなら尚更」


「……たしかに」



 コイツの言うとおり、ここで無駄に争ったって何もいいことは無い。ワタシがただ魔力を消費して衰弱するだけなのは目に見えている。



「……その代わり、ワタシから離れないで。ワタシを裏切ったり逃げたりしたら許さないから」


「ふ……嫉妬か?」



 ……神め……! ワタシ以上に性格が悪いなあ……!



「どうした。ふざけた顔して」


「……早く歩け」



 ワタシは最低な神を蹴り飛ばして1歩先を進み出しすると、奴もゆっくりと歩いて北を目指し始めた。



「ヘラ、仲良くやろうぜこっから似た景色が続くわけだし話し相手が欲しいだろ?」


「ヘラって呼ばないで。ラルって呼ばれたいだけでしょ」


「……つれないねえ」



 そこから8時間近く歩き続け、時々神に話しかけられる度にワタシは適当な返答を繰り返し続けたが、最後まで折れることなく喋り続けられ更に2時間経った頃には完全無視を決め込んでいた。


 コイツ……他人と話したかったのか? 分かりやすい奴……。



「はぁ……自力で動くのってこんな疲れんだ。この身体、魔力以外は普通過ぎる」


「…………」


「そろそろ見えてきてもおかしくないはずなんだが……」



 一瞬、奴の言葉を遮るように強い風が吹く。大きく地面が揺れて、ワタシ達が何かのトラップに引っかかったようにそいつは目の前に現れた。



「――神と悪魔が仲良く登山か、余裕ありげだな?」


「……誰だ」


「…………誰?」



 自信満々で現れたソイツは何処かで見た覚えがあるが、一体誰なのか検討もつかない男だった。


 ワタシも覚えていなければ、神の方も知らないのか……?



「おいおい、オレを覚えてねえとは言わせねえぜ」


「知らねえよ。我らの邪魔をするな、人ごときが」


「今回だけは同意――ってこんな所に人……?」



 ふと冷静になって考えたが、どうして真世界に人がいるんだ。さっき戦っていたクローピエンスの中にはこんな奴いなかったし、警戒した方がいいかもしれない。



「……オレの名前はジュマだ。ここまで聞いても誰か分かんねえのか?」


「……あ。あの性格悪い奴!」


「……大して強くない奴か」


「くっ……いいからついて来い」



 あれ、ワタシ達と戦うつもりじゃなかったのか。ジュマ……コイツも信用出来ない奴なんだよなー。


 アレゼルを間接的に殺したような奴だし天汰は相当嫌っているだろう。

 今だけは天汰じゃなくて神で良かったのかも……。



「我をどこに連れていくつもりだ。場合によってはヘラと我が叩き潰すことになるぞ」


「折角クローン工場まで転移させてやろうとはるばるやってきたのにそんな態度でいいのか? あ?」



 相変わらず性根が腐ってるなコイツ……だけど直接転移してもらえるなら好都合だ、ワタシは敵対せずに媚を売っておくか。



「えー送ってもらえるならそれに越したことないよー、でしょ? ()()


「……! ふっ、なら仕方ない。案内してもらおうか。行くぞ、へラ!」



 ……単純で助かる。


 ワタシとラルがジュマの腕を掴むと同時にジュマを転移魔法を唱えた。


 するとあっという間にクローン工場らしき建物の入口前に辿り着いた。



「……ここが、クローン工場……ワタシが、生まれた場所なのか」


「我もだ。ところでジュマ、ただで我らをここまで連れてきたのか?」


「……くくっ、よくわかってんじゃないすか。……おい悪魔。お前は先に中へ入れ。残念だけどそっちのお前は別だ」


「は? なんでワタシだけ――」


「――タイマンだ。オレとお前、まだあの時の決着がついていないだろ?」



 この男の目的が未だに分からない。コイツがあの悪魔の契約者じゃないことはワタシにも分かるし、あの時っていうのはアマテラスと戦った時の話をしているのか?


 というか、ジュマはコイツが天汰だと勘違いしているのか? そんな訳はないか、初めにラルに向かって神と言っているし。



「我と汝では勝負にならないと思うが……()るか?」


「雑魚は黙っておけよ。偽物がッ!」

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