運命
誤字とかあるかもしれませんがご了承ください。
俺はこの世界が嫌いだ。
この世界は運命で支配されている。そして俺たち人間はそれに動かされるコマに過ぎない。
俺は幼い頃から病気を患っている。治し方も分からないため薬はもちろんない。つまり治ることがないに等しいということだ。両親も俺が幼い頃は病気を治すために勤しんでくれていたが『そういう運命だから仕方がない。』といって俺の病気を治すことを諦めてしまった。
運命とはなんと残酷なことか俺から全てを奪っていく。病気で家族すらも奪ってしまった。もう俺に残っているものなどなかった。
それも運命なのかとも思えた。けれど俺は運命に左右されるのは大嫌いだ。何もかも奪っていくその言葉が俺にとっては憎らしくあった。病気を患っても死ぬことがない俺はこのまま死ぬことを運命として扱うのが嫌だった。運命に翻弄されて死ぬのはごめんだ。
とある日、俺は病院から抜け出した。どこか遠いところに行きたかった。あてもなく何のしがらみもない場所に行きたかった。病院に俺の居場所はなかった。いくら抜け出そうが誰も俺のことを気にする人などいなかった。
病院のすぐ近くに小さなカフェがあった。お金はあまり持っていなかったが、そのカフェに寄ることにした。何か温もりを感じたかったのかもしれない。
カランコロンと鐘がなる
病院からあまり出たことのない俺にとってその音は新鮮であった。俺は目の先にあった席に座った。ここに来たのも最後に誰かの声を聞きたかったのかもしれない。
『あの、すみません』
すると後ろから声が聞こえた。
『西山くん…?だよね、私、小学校の時に同じクラスだった川中!』
俺はいきなり話しかけてきた女性に対し、言葉が詰まった。
『…って、小学校の頃だし、覚えてないか…』
といい彼女は愛想笑いをした。
俺は確かに、彼女を知っていた。
『…覚えている』
俺は小声でそういった。
『本当!そっか…』
彼女は少し嬉しそうにした。
俺の病気が発覚したのは小学5年生の6月の時だった。なんの拍子もなく、いきなり俺の感覚が無くなっていた。川中と言った彼女は俺が小学5年生の時に同じクラスだった。そして、俺が最後に話したクラスメイトでもあった。
『西山君は今も病院にいるの…?』
彼女は気まずそうに言った。
『そうだよ。ものすごく退屈さ。俺の人生なんて悲惨な運命に呪われた抜け殻みたいなものだったんだよ。』
そう言って俺は店を出ようとした。同じクラスと言ってもたかが2ヶ月だ。話すことなど何もないと思っていた。
彼女は言った。
『行くの?』
俺は彼女の言葉に返信をした。
『あぁ。』
彼女は言った。
『君はそれでいいの?』
俺はまた彼女の言葉に返信をしようとしたがそれに対する言葉が見つからなかった。
まるで図星をつかれた言葉だった。
運命に従っている自分を見て見ぬフリをして、俺は店を出た。
俺は歩いた。
途方のない道を。
終わりのない道を。
俺の向かう先は海だった。
海は全てを飲み込んでくれる、そう思ったからだ。
けれど海にたどり着くことなどなかった。
俺に海なんてたどり着けるはずがなかった。
『無駄だよ』
『西山くんにはできないよ』
川中の声だ。
『お前、着いてきていたのか。』
『ついていくよ、もちろん。』
川中は涙っぽい声でそういった。
『お前は、泣いているのか?』
『泣いてないよ』
鼻を啜る音が丸聞こえだった。川中はなぜ泣くのだろう。
『俺はもう、この世からいなくなるんだ。お前も分かっていただろう?』
俺は川中に問いた。
『分からないよ。そんなこと。』
『分からない。』
『分かりたくない。』
『なんでか分かる?』
川中は俺に問いた。
『お前は正義感が強いやつなんだな、最後にお前と話せて良かったよ。』
俺は悟ったようにいうと、それはその後の川中の言葉に否定された。
『私は正義感が強い人間じゃない。』
川中の言葉は重い。
重い。
思い。
思い出。
『お前と話すと頭が痛くなる。』
俺は純粋にそう思った。
『ごめん…。』
川中は謝った。
そして俺は倒れた。
そして数日後俺は意識を戻した。
『西山くん…!!西山くん…!!』
川中の声が聞こえる。
『うるさいぞ、川中。俺は上手く出来たのか?』
俺の言葉で少し鎮まり、そしてまた動き出す。
川中は言った。
『ううん、ごめん。西山くんはまだこの世にいるよ。そういう運命なんだよ。』
また、運命か…。
『運命って、その言葉やめろ。俺はその言葉が大嫌いなんだ。』
『ふふ、つい…ね。』
川中が少し微笑んでそう言った。
そして川中は語った。
『ねぇ、西山くん。運命ってなんだと思う?』
『そんなの神が決めた悪戯だろ。』
俺はそう言った。
『私はね、違うと思うんだ。運命っていうのは元々決められたものじゃなくて、自分が歩いている道そのものだと思うんだよね。』
『つまり人生ってことか…?』
『ふふ、そういうことかもしれないね。人生のように長く私たちと関係が深いもの、そして運命っていうのは自分が決めた意志そのものが運命になると思うんだ。』
『けど、それはお前の考えにすぎないだろ…。』
『そうだよ。』
『じゃあ、俺には関係が無い。』
俺は言葉を切ろうとした。
だが川中は言った。
『そうかもしれない、でも、西山くんが少しでも希望を願う限り、運命は西山くんの味方であることを忘れないで。』
『運命が俺に味方?そんなわけないだろ。』
川中は少し黙った。
そして俺にこう聞いた。
『西山くんは西山くんを知ってる?』
俺は変な質問をする川中に疑問を抱いたが、
『当たり前だろ、俺のことは俺がよく知っている。』
と淡々と返した。
ここから川中は質問をたくさんした。
『好きな食べ物は?』
『好きな色は?』
『好きな動物は?』
『…………?』
『……………?』
両手で数えられないくらいの質問を、俺は全て解答した。
川中は
『正解。』
と言った。
俺はその言葉が不思議で仕方がなかった。
『なぜ、正解、なんだ?』
川中は答えた。
『それはね、全部私も知ってることだからだよ。』
『そんなの教えたこともないだろ。』
教えたことがない?本当にそうか?
『私は全部、西山くんの口から聞いたんだよ。』
『小学5年生の時にか?そんな昔のことよく覚えているな。』
小学5年生の時に川中にそんなこと言った覚えがない。
『西山くん、あなたはーーー』
『もういい。』
俺は言葉を切るようにその言葉を発した。
『もう何も言わなくていい。』
川中は黙った。
俺は話した。
『薄々は気づいていたんだ。俺にはないんだろ。小学5年生からあの、事故が起こった時までの記憶が。そしてそれはこの目にも関係しているんだろ。』
川中がうなづいた気がして話を続けた。
『俺は目が見えない。お前の顔だって見えない。でも、俺は、お前の声を聞いた時に川中だってすぐ分かったんだ。なんでだろうな。まるでいつもその声を聴いてたような気がしてならない。』
川中の鼻を啜る音が聞こえる。
『ごめんな、川中。』
川中は涙ぐんだ声で言った。
『ううん、ありがとう。』
そしてこう続けた。
『あなたは私の運命のヒーローだよ。』
その言葉は俺のなにかを解放した気がした。
長年閉じていた扉を開いてくれたような感覚だった。
俺と川中は抱き合って泣いた。
俺の目からは涙がこぼれなかったが、心は涙でいっぱいだった。
川中は後日、西山に事故のことを話した。
『あの事故の時、あなたは私を庇ってトラックにはねられてしまった。でもあなたは笑ってこう言ってくれた。
「お前が無事で良かった。俺はお前を守るために生まれた運命だったんだな。」
私を守ってくれてありがとう、西山くん。
私はずっと、この言葉をあなたに伝えたかった。』
それを聞いて俺は
『運命って、悪くないもんだな。』
と返した。
読んでいただきありがとうございます。
この作品は、適当に書き始めたら出来ちゃった作品でして、もしかしたら矛盾している箇所とかもあるかもしれませんがご許しください。
そしてこの作品が私の初投稿の作品となっていまして、学校に初登校しにいくぐらい緊張していると言いたいところですが全く緊張はしておりませんでした。
誠にすみませんでした。
と、茶番を一回挟んだところで後書きがこんなに長かったらここまで読む人も少なくなるでしょうし、一言言わせてください。
うんめーラーメン食いたい。