2. りんご飴
お久しぶりです! お待たせしました!
「わぁ! 色々あるのですね!」
街は朝から賑わっていた。馬車を降りて平民街に入った私たちは露店や出店を眺めながらゆっくり歩く。
「何か気になるものがあったら言うように」
「は、はい」
陛下の言葉に頷く。が、そんな言えるわけがない。私はそんな思いをそっと仕舞って屋台に目を向けた。
「陛下、あれって……?」
赤くて丸い光るものを見て首をかしげる。
「あれはりんご飴、というものだ。一つ買うか?」
「い、いえ、見たことないもので気になっただけですので……」
初めてみる見た目の飴。ツヤツヤして美味しそう。
そんな表情が出ていたのか、陛下は少し思案したのちそのお店に向かった。
「へ、陛下?」
「俺が食べたくなったんだ」
そう言うと、店主に慣れた様子で注文する。
「二つくれ」
「はいよっ! カップルかな? 仲良しだね〜」
「か、カップルだなんてっ……」
店主の言葉に思わず頬が熱を持つ。だが、否定する前に肩を抱き寄せられた。
「彼女が可愛すぎてね」
「ははっ、お兄さんやるね〜。ほれっ、二つ」
店主はニコニコと言いながら陛下にりんご飴を二つ渡す。その様子を見ながらも心臓がドキドキと音を立てていた。
な、なんか、変な気分……。
「おい、顔が赤いが大丈夫か?」
陛下が顔を覗き込んで言ってくる。か、顔が近い……!
「だ、大丈夫です!」
「そうか? それならいいんだが……はい、これ」
「あ、ありがとうございます……すみません……」
差し出されたりんご飴を受け取りながら思わず謝ってしまう。その言葉に陛下は少し険しい表情を浮かべる。
「謝ることはない。お前は不当に扱われてこれまでこういったものを経験することができなかったからな。今はただ楽しめばいいんだ」
「は、はい……ありがとうございます」
優しい言葉にジーンとする。陛下といるといつも心が温かくなる。
「っ!?」
笑みを浮かべると陛下はなぜかそっぽを向いてしまった。
「どうかされましたか?」
「い、いや、なんでもない。ほ、ほら、りんご飴食べないのか?」
「あ、いただきます」
陛下こそ頬が赤い気がするけど……でも、なぜか聞いてはいけない気がしてりんご飴に目を落とした。
初めて食べるりんご飴。どんな味がするのだろうか?
そっと舐める。途端に甘さが口の中に広がった。
「美味しいです!」
「そうか、それなら良かった」
陛下が笑みを浮かべる。
「陛下って綺麗な顔されてますよね……」
「っ!?」
思わず漏れた言葉にハッとして口を押さえる。
「し、失礼なことをっ……申し訳ありま」
「いや、良い」
遮るように言われる。口元を押さえている陛下に私は首をかしげる。
「嬉しかった、だけだ」
「っ! それなら良かったです」
嬉しいと思ってもらえたことに嬉しくなる。
私たちはお互いに笑みを浮かべたのだった。
「舐めてるだけだとりんごまでたどり着かないぞ?」
「えっ」
「中に丸ごとりんごが入っているからな」
りんご……たどり着けるかしら?
読んで下さりありがとうございます!
短い回だったのですが、金曜日に次話を投稿しますので少々お待ちください。
〈お知らせ〉
この度三度目の異世界恋愛短編に挑戦しました! まだまだ不慣れですが、精一杯書きましたので是非読んでいただけると嬉しいです!
「千年ぶりの魔法をあなたに」
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