幸せを運ぶ白い鳩
次の日、彼女の家の上で合否通知はまだかなーとぷかぷか浮かびながら待っていると、一羽の白い鳩が封筒のようなものを口に挟みながら家の前までやってきた。
なんだろう?とその鳩を眺めていると、その鳩は器用に彼女の家のドアベルを鳴らすとポストに持っていた封筒を入れた。
そういえばこの星では手紙とかをこのように送るんだったっけ?
たしか、伝書鳩という物だったはず!……多分。
……でも、実際に見てみると面白いなぁ。鳩がこんな事をするなんて、私より頭がいいかもしれない。
いや冗談だからね!?
えっと、もしかして今鳩が持ってきた封筒が合否通知かな?ちょっと見に行くか。
私が封筒を見に行こうとポストの近くまで降りてくると、ちょうどその時家の中から勢いよく少女が飛び出してきた。
うわっ!……びっくりした!一瞬ぶつかるかと思った。
彼女からは見えてないし、触っても特になんともないんだけど、私からは当たり前だけど、問題なく見えるからびっくりするんだよね。
私も気をつけないとな。一々びっくりしていたら心が持たないよ。
……あ、そういえば封筒を確認するのを忘れてた!彼女たちがみる前にこっそり見ようと思ったのに……。
見事に先を越されてしまった。
取り敢えず家の中にお邪魔しよう。ドアや壁はすり抜けられるから問題ない!
家の中に入ると、そこは思っていたよりも質素な感じの内装だった。
外観は『お金持ちの家!』みたいな感じのだったのにな。
……今思えば彼女の事を色々調べたりはしていたけれど、家に入るのは初めてなんだよね。
どんな物が家にあるのか探してみたいな。でもまずは合否通知だよ、合否通知!
おそらくリビングの方から話し声が聞こえるからそこに彼女たちはいるんだろうね。
よし、早速見にいきますか!
私はドアをすり抜けリビングへ入る。
そこには真剣な表情で机に置かれた一つの封筒を囲む家族の姿があった。
正面に彼女、ソラ。右に彼女の母、左に彼女の父。そして正面奥にソラの妹、確か名前はルナ。
「ついにこの時が来たんだね」
「……んー、私ちゃんと面接で答えられていたのでしょうか?心配です」
そう?私は心配無いと思うけどな。……だってあんなに猫被るの上手かったし!
「大丈夫だよ、お姉ちゃん!お姉ちゃんは猫を被る上手さなら右に出る者無しとまで言われた天才だもん」
「そうだよね。うちの子は猫を被る事が上手いしね。……親が娘を信じないで誰が信じるのか!ってものだものね」
「そうだぞ、お前は猫を被る事に関しては世界で一番だろうからな!もっと自分に自信を持っていいんだぞ!」
えぇ……。さっきから聞いていればみんな猫を被るのが上手いから大丈夫しか言ってなくない?
いや、事実だけどさ。他にも絶対良いところあると思うよ?
「うん!確かに自分に自信を持つ事が大切だよね。ありがとう!みんな!」
「お、おう」
……みなさーん、この子もうダメです。ついに家族に対してまで猫を被り出したよ!
誰か……気づいて……。
もちろん私の願いがこの家族たちに届くはずもなく、誰も彼女が猫を被っている事に気づかなかった。
あぁ、彼女を見ていると退屈はしないけど神としてどうなんだと思えてくる。
と、そんな事を考えていると、どうやらソラが手紙の封筒を開けようとしているのが見えた。
お願い……!
私はその姿を見てそう願った。
彼女はゆっくりと、慎重に封筒を開けると、中に入っている紙を放り投げた。
……え、放り投げた!?
空中をひらひらと舞う折り畳まれた紙。それは、地面に落ちていく中で少しずつ開かれていった。
そして、ふと、開かれた紙のある文章に目がいった。
『二次試験に合格いたしました。明後日、5月16日に式典を執り行いますので、星廊の大聖堂へ同封のブローチをつけてお越し下さい』
…………やったね!合格だよ!
良かった……。紙を投げたからびっくりしたよ。
……あれ、そういえば何でソラは紙を投げたんだろう?
そう思いソラの方へ目を向けると、何かのブローチを持っているのが見えた。
あっ、もしかして『同封のブローチ』ってやつ!?
かなりキラキラしていて、作りも細かいし、かなりいい代物だね!
ブローチの真ん中には翡翠色の宝石が埋め込まれていて、ソラの白い髪とよく合いそうだ。
私がブローチを観察していると、突然ソラが笑い出した。
「ふふふ、やったぁ!!」
やっぱり、ソラも嬉しいんだね!そりゃそうだよね、数万人に五人の選ばれた人の中の一人だもんね。
「封筒が重かったりした時点で合格していた事は分かっていたけど、宝石の色が翡翠色だったって事は……私、主席だ!!」
「おめでとうソラ!」
「さっすがお姉ちゃん!!」
「……ソラならやれると思っていたぞ」
え、えー!!?
ソラが主席?凄い!……やっぱり私の認めた人なだけあるね。
「さぁお姉ちゃん、これからどうする?」
「そうね、これで究極の二択をしなければならない訳だけど」
「あぁ、この選択に一家の運命がかかっていると言っても過言ではないからな」
え?究極の二択?….何それ?
「どうしようお姉ちゃん。翡翠色の宝石でこの大きさという事は、売れば3億はくだらないよね?
でも、これを売ったら彗星としての活動ができなくなっちゃう」
え!!?売るの?
せっかく受かったのに?
そんな事したら早速この物語が終わってしまうんだけれども!?
ソラ、何とか言ってやってよ!あなただって旅はしたいでしょ?
というかこの家族、揃いも揃って悪い人ばっかりだよ!そりゃあソラもそんな性格になった事も納得できるわ!
「みんな……悪いけどそれはできないよ」
「お姉ちゃん……」
……やっぱりソラは根はいい子なんだね!良かった。安心したよ。
いやぁ、一時はどうなるかと……
「ルナ?こういうのは貰ってないことにしてもう一個貰うのが正解なんだよ!」
「なるほど!やっぱりお姉ちゃんは天才だなぁ!」
「それでこそうちの子だ!」
やっぱり腹黒は腹黒だったー!!
頭の良さをそこで発揮しないでもらっていいですか!?
「ふふふ、そうと決まれば早速運営に電話しましょう」
やめて、やめてぇー!!
私が、私がまた最高神様からお叱りを受けてしまうから!
これ以上給料を減らされたら食事からおかずが一品消え、更には昼食を無くさなきゃならなくなっちゃうからぁ!!
ううっ、この想い、届けぇ!!
もう、私は涙目になって叫んだ。どうせ声は届かないけど想いは、せめて想いだけは届いてほしいと願いながら。
ソラたち家族はそんな私の想いなんて知らずに
「ふふふ、これで私たち家族の日々のご飯にはおかずが一品増え、おやつが豪華になる事間違いなしですね!」
「やったねお姉ちゃん!」
と嬉しそうに話していた。
ううっ、そんなぁ……。
私はもう泣き寝入りするしかなかった。
それじゃあ、じゃあねソラ。また明後日来るね。
幸せに生きるんだよ……。
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因みにその後ソラたちは『ブローチの再発行等は受け付けておりません』と放り投げた紙に書いてあるのを見つけ、しばらく落ち込んでいたとか。
お読みいただきありがとうございます!
こういう系の小説は書くのが初めてなので、実は手探り気味なところがあります。
でも、書いていて楽しいので少しづつ文字数は増えていくと思います。
なのでこれからよろしくお願いします!
後、ほかの小説も読んでくださると私が喜びます。
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