眺める神と黒い猫
この宇宙には沢山の星があり、その中には沢山の生物が暮らしている星もあります。
この物語はその星と星の距離が近い、もちろん物理的な意味ではないですけど。そんな世界線で暮らす一人の少女の物語です。
え?私ですか?……私はですね、神様ですよ!名前はカノンって言います!
嘘くさい?……まぁそうですよね、私、下っ端だしね……。
っと、落ち込んでいる場合ではありませんでした。今日はその、例の少女の門出の日なんですよ!
早速見にいきましょう?
◇ ◇ ◇
着きました!ここは、惑星コーメルトという場所です。
変な名前?やめて下さい、そんなこと言ったら私が最高神様に怒られてしまいます……。
もう減給は懲り懲りですから……。
コホン、何でもないですよ。それでですね。この惑星には十二歳を過ぎたら旅人になる試験を受けることができるんですよ。その試験に受かるとですね、なんと!他の星々へ自由に旅をしに行けるようになるのです!
ね、凄いでしょう!
更にその試験に受かった人、つまり旅人となった人は彗星と人々から呼ばれ、二つ名まで貰えるのです。
これはとても名誉な事なんですよ!人々から尊敬の眼差し見られる事間違いなしです!
と、まぁここまで長々と説明しましたけど、もちろんこの試験、簡単なわけがありません。
一年に一回、十二歳から十五歳までの少年少女たちの中から五人選ばれる事になっています。
今回、私が側で眺める事にした少女は少々人としてどうなんだ!と思うところはありますが、優しい人です。
容姿は整っていて、私もつい眺めてしまう可愛らしい十二歳の少女なのですが、実はちょっと腹黒かったりします。
まぁ、それでも正義感が強かったり優しかったりするんですけどね。
そんな彼女は今筆記試験を突破して、残すは面接のみとなっている訳ですが……
「私の名前はソラと言います。今日はよろしくお願いします!」
……見事に猫を被っていますね。
それにしても彼女……猫被るの上手すぎません?
「何故旅人になろうと思ったというと、様々な世界を見てきて、そこで得た知識をこの星に生きる人の為に役立てたいという夢があるからです。
そして、お母さんとお父さんを幸せにしてあげたいと思ったからです!」
……言っていることはいいんですよ。でもね、多分腹の中は十二歳とは思えないほど黒いですよ?
ちょっと覗いてみます。
…………やばいこの子、旅人になる志望動機が単純に稼げるからって、まずいですよ。
人々の幸せなんて1ミリも願ってないよ!あるのはただの欲望だけだよ!
……でも、お母さんとお父さんを幸せにするっていうのは本当みたいだ。
少し安心したよ。
やっぱり彼女、根はいい子なんだ。
まぁ、この猫を被る上手さがあれば大丈夫そうだね。
多分、いや絶対彼女はこの試験に受かることができる。
この子、実はしっかり頭がいいしね。
じゃあ私は今日のところはこれで帰ろうかな。
明日、また見に来よう。……彼女を見ていると退屈しなさそうだしね。