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能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?  作者: 火産霊神
異世界に転生しちゃいました?
18/45

第18話 始祖の守りを渡されて

 ピロロロー ピロロロー

 小鳥の(さえず)りのような音がする。

 目をゆっくり開けると見知らぬ天井(てんじょう)…外はまだ(いく)ばくか仄暗(ほのぐら)いが、窓から少し光が差し込み始めていた。

 朝?あぁ、そうか昨日はソフィアの家に()めてもらったんだ。

 私は眠りに落ちる前にソフィアから()いた話を脳内(のうない)反芻(はんすう)した。


 エルフが人間と友達になるというのは(きわ)めて(まれ)なことらしい。ソフィア達ミュルクウィズ族はエルフの中でも社交的だが、それでも人間と友達になることは滅多(めった)にない。

 その理由は「エルフと人間との寿命(じゅみょう)の差が大きいから」だと言われている。エルフの寿命(じゅみょう)は約3000年。それに対して、ここ異世界の人間の寿命(じゅみょう)は約70年。

 エルフ側からすると、せっかく友達になってもすぐに死んでしまう…となるので、無意識(むいしき)の内に友達になることを拒絶(きょぜつ)しているのだそうだ。


 では私はどうして大丈夫(だいじょうぶ)なのかというと、一つは「ソフィアが私を好意的(こういてき)に思ってくれているから」そしてもう一つは「長命(ちょうめい)と思われるから」なのだそうだ。

 エルフ自身にもよくわからないらしいが、野生の(かん)とか種族(しゅぞく)維持(いじ)本能(ほんのう)とかそういうのだろう、何となく長命(ちょうめい)の者を察知(さっち)できるらしい。

 エルフ(たち)はこうして長命(ちょうめい)の者同士で夫婦(めおと)となり子を(さず)かることで、(みずか)らの種族(しゅぞく)長命(ちょうめい)(たも)っているのだろう。


 ここで私はふと思う。

 この寿命(じゅみょう)、もしかして生命力のことではないだろうか?確か神様の説明で生命力とは

・0になると死んでしまう

・何もしなくても徐々(じょじょ)()っていく

・病気などで大きく減少することもある

 だった。

 うん、間違(まちが)いなく寿命(じゅみょう)に関係しているのだろう。


 えっと。

 全能力値(のうりょくち)最大(カンスト)の私は生命力も最大(カンスト)。ということは、不死(ふし)とまでは言わないけれど、とんでもなく長命(ちょうめい)!?

 ってどうしよう?

 そんなこと、考えたこともなかった。


「ん…おはよう、ユメ。早起きね。」

「おはよう、ソフィア。あはは、すごい寝癖(ねぐせ)。」

 ソフィアの絹糸(きぬいと)のような髪が爆発(ばくはつ)していることに、私は可笑(おか)しくて笑ってしまった。

「ちょっと、ヤダ。見ないで!」


 ソフィアとやりとりをしていると、先程(さきほど)(なや)みが(うそ)のように晴れていく。

 今はじたばたしても仕方(しかた)がない。なるようになるしかないよね。


 ソフィアの家で美味(おい)しい朝食を(いただ)いた後、外に出ると、村の中は沢山(たくさん)人夫(にんぷ)さんっぽい人で(あふ)れかえっていた。その中に、昨日の会議(かいぎ)の場で話をしたブラムスさんがいた。

「おはようございます、ブラムスさん。」

「おお、おはよう。ユメさんにソフィアお(じょう)ちゃん。」

(みな)さん、朝早くからお仕事ですか?」

 ソフィアがブラムスに(たず)ねた。

「いやぁ、実は昨日(きのう)からでしてね。夜通(よどお)しかけて工事をしたんですわ。」


 徹夜(てつや)明けだったとは(おどろ)きだ。

 井戸水の水脈(すいみゃく)と温泉の水脈(すいみゃく)(つな)がっていた件については、間に大量の粘土(ねんど)()()めることで解決(かいけつ)したらしい。

 なぜこんな急ピッチで工事したのか、ブラムスは最初のうちはモゴモゴと言葉を(にご)していたが、どうやら私が村を(はな)れる前に工事を終えて、井戸の浄化(じょうか)をして欲しかったらしい。

 特に(ことわ)る理由も無いというか(むし)ろそうしたかったので、私は手早(てばや)く井戸を浄化(じょうか)し、ついでに工事中に怪我(けが)をした人夫(にんぷ)さんの手当(てあて)を終えると、さぁ出発という時間になった。


 昨日来たばかりだというのに、小さい村だからだろうか…私のことは部族(ぶぞく)(すく)った英雄(えいゆう)かのように持ち上げられて(うわさ)になっていたらしく、一目(ひとめ)見ようと沢山(たくさん)の人達が見送りに来てくれた。

「ユメさん、本当に治療費(ちりょうひ)はいらないのかい?」

「はい、まだ開業(かいぎょう)前ですから。お(だい)結構(けっこう)ですよ。」

「これ、焼き菓子(がし)を焼いたの。旅の途中(とちゅう)()し上がって?」

「ありがとう!(うれ)しい!」

「次はいつくるの?」

「わからないけれど、新居(しんきょ)が落ち着いたらまた来るわ。温泉(おんせん)に入りに。」

 なんだろう、田舎の親戚(しんせき)の家に遊びに行った帰り(ぎわ)に、おじいちゃんとおばあちゃんと話をしているようだ。

 まぁ実際、長命(ちょうめい)のエルフ達なので、16歳の自分よりは(はる)かに年上なのだろうけれど…。


「ユメさん。」

「はい。」

 呼び止められて振り返ると、そこには村長(むらおさ)がいた。

「もう、ソフィアから()いておられるとは思いますが、我々は貴女(あなた)に本当に感謝(かんしゃ)しております。」

「そ、そんな…。」

 村長(むらおさ)にまで改めて言われると()ずかしくて仕方(しかた)がない。

御謙遜(ごけんそん)なされますな。貴女(あなた)から(いただ)いたご(おん)はとても大きなもの。エルフは種族(しゅぞく)として(おん)を返さぬことを最大の(はじ)としております。どうぞこれを受け取って下さい。」

 そう言って村長(むらおさ)手渡(てわた)してきたのは、青色の小さな宝玉(ほうぎょく)がついた、木彫(きぼ)りのペンダントだった。羽模様(はねもよう)がとても可愛(かわい)い。

「わぁ、可愛(かわい)くて素敵(すてき)なペンダントですね!ありがとうございます!」

 よくある観光地(かんこうち)のお土産(みやげ)のようだ。

 高価(こうか)なものではなさそうだし、お気持ちを有難(ありがた)頂戴(ちょうだい)しよう。

 そう思って受け取ると、私の身体が一瞬(いっしゅん)ポワッと光った。


「え!?何、今の!?」

「それは始祖(しそ)の守りと呼ばれている物でして、人間の方にはエルフの庇護(ひご)とも呼ばれております。」

 なんだか(すご)仰々(ぎょうぎょう)しい名前のペンダントだ。

「あの、これはどういう物なのでしょうか?」

「おや、ご存知(ぞんじ)ではありませんでしたか。」

 この異世界ではポピュラーな物なのだろうか?当然、私は知るはずもない。

「失礼。その守りを持つ者が何かしら困っているとき、それが公序良俗(こうじょりょうぞく)に反していない限り、エルフはその者を助けなければならない、そういう物でございます。」

「それは…(すご)い物…ですね?」

「はい。これは我々(われわれ)エルフがエルフという種族(しゅぞく)に対して大恩(だいおん)ありと(みと)めた人に対して、感謝(かんしゃ)の気持ちとしてお渡ししている物です。」

 思った以上にとてつもないペンダントだ。

 私自身としては、ソフィアに呼ばれて立ち寄って、自分が使える魔法で出来(でき)ることをやっただけという認識(にんしき)なので、どうにも申し訳なさが先に立つ。

 ミュルクウィズ族だって、人間に(うたが)いを持ってはいたけれど、何かが起こる前に誤解(ごかい)()けて、解決(かいけつ)したではないか。それなのに。

「こんな大切な物…」

 私の言葉に村長(むらおさ)が力強い口調(くちょう)(かぶ)せてくる。

「受け取れないとは言わないで下さいな?」

 ここまで言われては、受け取らざるを得ない。

「分かりました。有難(ありがた)頂戴(ちょうだい)します。でも村長(むらおさ)さん、やっぱり対価(たいか)として(いただ)きすぎだと思います。だから、私が医者を開業(かいぎょう)したときには、ミュルクウィズ族の皆さんは治療費(ちりょうひ)半額(はんがく)、そして定期的(ていきてき)にこちらに訪問診療(ほうもんしんりょう)させて(いただ)きますね?」

 村人からどよめきがおこる。

「やれやれ、(よく)のない(こま)ったお人だ。であるからこそ、その守りを(たく)すに相応(ふさわ)しいのですがな。しかし、訪問診療(ほうもんしんりょう)治療費半額(ちりょうひはんがく)有難(ありがた)いこと。村を代表して感謝いたします。」


 こうして私はエレンの村を後にした。

 なんだか短いようで長く()た気もするが、しばらくはこの村とはお別れ。

 私はお土産(みやげ)をたくさんカバンに()めて一路(いちろ)、ミューレンの町を目指(めざ)した。


 森を()け、丘を二つ()えたあたりから植生(しょくせい)が変わった気がする。

 ソフィアたちエルフの住むエレンの村は、広葉樹(こうようじゅ)の森の中にあった。

 それに対してこのあたりの木々は、クリスマスツリーを巨大化したようなモミの木(なのかな?)のほか、針葉樹(しんようじゅ)が目立つようになり、道端(みちばた)には大きな石がゴロゴロと転がっている。

 遠目(とおめ)に見えていたホルン山脈(さんみゃく)の山々は今や間近(まぢか)に見え、(かべ)のように(そび)え立っている。

 山の(いただき)雪化粧(ゆきげしょう)で真っ白。見渡(みわた)すと、今歩いているあたりにも溶け残った雪が見られることから多分、気温も低いと思うのだが、夜天(やてん)装備(そうび)保温(ほおん)効果(こうか)で寒さは(まった)く感じない。


 海と見間違(みまちが)えるような大きな大きな湖のほとりを歩き、3つめの小高い丘の頂上(ちょうじょう)にたどり着くと、少し先の山のふもとに集落(しゅうらく)が見えた。山側には人家が並び、ふもと側には牧場らしい柵で囲われた土地がある。

 町全体の外側にはモンスター除けの柵が設置されている。

 アレクサンドラに()いていたとおりの町、ここがミューレンだ。


「見えたー!」

 達成感(たっせいかん)からか、思わず(ひと)(ごと)が出ていた。

 牧場(ぼくじょう)には牛のような動物、それとアルパカを足したような動物が放牧(ほうぼく)されていて、呑気(のんき)に草を食べては「ンムァアア」という鳴き声を上げていた。

 町の入り口には人ひとり入るのがやっとの大きさの小屋があり、自警団(じけいだん)なのか守衛(しゅえい)さんっぽい革鎧(かわよろい)を着た40代くらいの男性がいる。

 平和な土地柄(とちがら)なのだろう。午後の温かい日差しの中で、男性はとても気持ちよさそうに寝ていた。

 起こすのは躊躇(ためら)われたが、声をかけずに街中(まちなか)不審者(ふしんしゃ)(あつか)いされるのもよろしくない。意を決した私は男性の肩をトントンと(たた)いた。


――こんにちわ、起きてくださーい

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