表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?  作者: 火産霊神
異世界に転生しちゃいました?
17/45

第17話 温泉探偵ユメ・解決編

 くだひゃい? くだひゃい?

 エルフの隊長(たいちょう)たちは(みな)ひそひそ声で「いま()んだ?」「くだひゃいって言ったよな?」と話している。

 顔から火が出る思いだったが、会議の場が少し静かになったのはありがたい。

 私って別に「肝心(かんじん)なところでセリフを()むドジっ子」という属性(ぞくせい)はないはずなのに、なんで今日に(かぎ)って!…でも、結果オーライとしよう。言ってしまったものは仕方がない、うん。

 そう自分で自分を納得(なっとく)させた。


「皆さん、初めまして。私の名前はユメ。オルデンブルク伯爵家(はくしゃくけ)のアレクサンドラ先生の弟子(でし)です。」

 隊長(たいちょう)たちの表情(ひょうじょう)がぐっと変わった。

「おお、あの高名(こうめい)なアレクサンドラ先生のお弟子(でし)さんということは…お(じょう)さん、あなたも医者(いしゃ)なのですか?」

「はい。」

 隊長(たいちょう)たちにどよめきが走る。

「あの、それではユメさん。腹痛(ふくつう)の者を()てやってはくれませんか?」

「はい。勿論(もちろん)、そのつもりです。その前に皆さんにお話をしておかないといけないことがあります。」

 なにを話すのだろうか…と隊長(たいちょう)たちは身を乗り出してきた。

 ようやくこちらに耳を(かたむ)けてくれるようになった。アレクサンドラ師匠(ししょう)知名度(ちめいど)が高くて助かった…と胸をなでおろす。


 私は一呼吸(ひとこきゅう)ついて、続きを話し始めた。

「今回、腹痛(ふくつう)原因(げんいん)になったのは井戸水(いどみず)高濃度(こうのうど)無臭(むしゅう)硫黄(いおう)が含まれていたことが原因(げんいん)です。」

 無臭(むしゅう)硫黄(いおう)というのは前世には存在しなかった物質(ぶっしつ)だ。

 そもそも硫黄(いおう)なのに無臭(むしゅう)などありえない。

 私も初めて聞いた言葉だが、井戸水(いどみず)水質(すいすつ)調査(ちょうさ)のために『インスペクティオン』の魔法を(とな)えた(さい)、この単語とその性質(せいしつ)脳内(のうない)に浮かんだのだ。

「ユメ、あなた毒薬(どくやく)()いって言ったじゃない。」

 ソフィアが反論(はんろん)した。

「ソフィア、無臭(むしゅう)硫黄(いおう)毒薬(どくやく)ではないの。自然に存在(そんざい)する物質(ぶっしつ)で、有用(ゆうよう)なものでもあるから。ただ、大量(たいりょう)摂取(せっしゅ)するとお(なか)(こわ)すみたいね。」

有用(ゆうよう)ってどんな風に有用(ゆうよう)なのよ?」

 ソフィアが食い下がる。

「えっとね。無臭(むしゅう)硫黄(いおう)は口から摂取(せっしゅ)しなければ…(たと)えば(はだ)に少し()れる程度(ていど)では害はありません。むしろ、無臭(むしゅう)硫黄(いおう)が含まれているお湯に()かると、(はだ)保温(ほおん)保湿(ほしつ)効果(こうか)()られたり、新陳代謝(しんちんたいしゃ)が良くなって(はだ)(なめ)らかになったりします。そしてこの無臭(むしゅう)硫黄(いおう)、ここエレン村の温泉に高濃度(こうのうど)で含まれているんです。」

 隊長(たいちょう)たちがザワザワし始める。

「ユメ、それってもしかして…」

「ええ。おそらく、宿の建設(けんせつ)のため温泉(おんせん)拡張(かくちょう)した(さい)に、温泉(おんせん)井戸水(いどみず)水脈(すいみゃく)(つな)がってしまったのではないかと思います。」


「ちょっとよろしいかな?」

 一人のエルフとしてはやや屈強(くっきょう)身体(からだ)つきの男性が手を()げた。

「はい。何でしょう?」

「私は温泉宿(おんせんやど)工事(こうじ)責任者(せきにんしゃ)のブラムスと(もう)す者。水脈(すいみゃく)と言うのは初耳(はつみみ)なのだが、いったいどういう物なのかな、お(じょう)さん?」

 私も(くわ)しくはないけれど、前世で土木(どぼく)関係(かんけい)の人に教えてもらった知識(ちしき)を思い出しながら説明(せつめい)する。

「ええと、森に雨が()ると雨は地面(じめん)に消えていきますよね?もちろん、森の木々が根から吸収(きゅうしゅう)する水もありますが、木々が吸収(きゅうしゅう)できなかった水は、地面(じめん)の下で水たまりになったり、川のように流れたりするんですよ。」

 (こま)かく言うと間違(まちが)っているかもしれないが、そこは私もうろ覚えだし、この場は大まかに伝わればいいだろう。

「お(じょう)さん、(うそ)はよくねえですよ。地面(じめん)の中に川や水たまり…そんなのがあればすぐに気づくさぁ!」

 ブラムスが眉間(みけん)にしわを()せる。

 うん、わかる。私も最初ピンとこなかったもん。

「川や水たまり、といっても皆さんが普段(ふだん)目にするようなものではありません。砂などの目が(あら)くて水が通りやすいところに()まったり流れたりするんです。」

 そう言って私は目の前に(すわ)っている女性エルフの目の前に(すわ)った。

 女性エルフの目の前には水差(みずさ)しと陶器(とうき)のコップが置かれている。

「お借りしますね。」

 女性エルフはあっけにとられているのか、無言(むごん)のまま(うなず)いた。

「皆さん、この陶器(とうき)のコップは水が()み出しませんよね?陶器(とうき)原料(げんりょう)である粘土(ねんど)も水を通しません。ブラムスさん、工事をした(さい)粘土(ねんど)が出てきませんでしたか?」

 ブラムスが思い出したような顔をした。

「そう言えば、ぬるっとした土が出てきたな。そういやぁ、そのすぐ上の砂がやたらと湿(しめ)っているとは思ったんだが。」

「それです!!」


 後になって知ったのだが、エルフは森に(くわ)しい「森の民」と言っても、知識(ちしき)があるのは地面(じめん)より上の部分だけ。

 地下の構造(こうぞう)はよく知らないらしい。

 そこにミュルクウィズ(ぞく)はじめての大規模(だいきぼ)建設(けんせつ)工事(こうじ)でよく分からないまま水脈(すいみゃく)(つな)げてしまった、というのが今回の事件の原因(げんいん)だった。


 ここから先はエルフの(えら)い人(たち)会議(かいぎ)で話し合う事。私は私の出来ることをしよう…と村長(むらおさ)の家を後にして、私は腹痛(ふくつう)になったエルフさん(たち)の家を訪問(ほうもん)して、治療(ちりょう)を行った。

 原因(げんいん)がわかっているので、対処(たいしょ)は楽である。

 私は体内の毒物(どくぶつ)を消し去る魔法を応用(おうよう)することにした。

 魔法(がわ)は何が毒物(どくぶつ)で何が毒物(どくぶつ)でないかを自動判別(じどうはんべつ)してはくれないので、魔法を使う(がわ)が何を除去(じょきょ)するかを選択(せんたく)する。今回は無臭(むしゅう)硫黄(いおう)のみを選択(せんたく)し、体内から除去(じょきょ)すればよい。

 これならば、魔力値最大(カンスト)の私が使っても、体内に残留(ざんりゅう)した無臭(むしゅう)硫黄(いおう)除去(じょきょ)されれば終わりなので、身体(からだ)に他の影響は出ない。

 患者(かんじゃ)が皆、症状(しょうじょう)が軽くて回復(かいふく)を行う必要が無かったのは僥倖(ぎょうこう)だ。私が回復(かいふく)魔法を…例えば腹痛(ふくつう)()く魔法を使おうものなら、魔力値最大(カンスト)のため身体を破裂(はれつ)させてしまうので…。


 一仕事(ひとしごと)終えると、ソフィアの自宅でたいへんもてなされた。

 森の民だけあって、森の(めぐ)みがたくさん。

 野ウサギのソテー、木の実のスープ、季節(きせつ)果実(かじつ)をふんだんに使ったスイーツ。

 伯爵家(はくしゃく)貴族(きぞく)料理も大変美味(おい)しかったが、こちらの料理は野趣(やしゅ)あふれていて、負けず(おと)らずの美味(おい)しさだった。

「ねぇ、ユメ。今日は私の部屋で一緒(いっしょ)に寝ましょう?」

 そろそろ就寝(しゅうしん)の時間だが、ソフィアはまだお話をしたいらしい。

「いいよ。」

 ああ、こういう『友達とのお(とま)り会』というのに(あこが)れていたんだよなぁ…。社畜(しゃちく)ボッチだった前世からは考えられない。


「ユメ、今日はありがとね。」

「ソフィアったら、それ今日5回目だよ?」

 そう言って私はクスクス笑う。そんなに気を使わないでよ、という気持ちも込めて。

「ううん、あのね。今回の一件(いっけん)で私たち…最初はチューリヒの町の人を(うたが)っていたじゃない?もしユメが解決(かいけつ)してくれなかったら、(おそ)からぬうちに町の人たちとの間でいざこざが起きていたと思うわ。そうなっていたら、取り返しのつかないことになっていた。だからね、本当に感謝(かんしゃ)しているの。」

「うん。」

「私たちはエルフであることに(ほこ)りを持っているわ。先祖(せんぞ)代々から受け()がれてきたその(ほこ)りを(けが)さないでくれた。これはね、ユメが思っている以上に感謝(かんしゃ)されるべきことなの。」

「そう…なんだ。」

 私自身は、旅の途中(とちゅう)で事件に()き込まれて、たまたま自分の能力を()かして解決(かいけつ)できただけで、これといって大したことをした覚えはないのだが…。でも、これ以上は押し問答(もんどう)有難(ありが)感謝(かんしゃ)の気持ちを(いただ)こう。


「ねぇ、ソフィア。ひとつお願いがあるんだけど。」

「なぁに?ユメ。何でも言って!私ができることなら何だってするわ!」

 そんな完璧(かんぺき)美人(びじん)の顔で何でもする、と言われるとこちらが赤面(せきめん)してしまう。

「また、ソフィアのお(うち)に遊びに来てもいいかな?」

「そんなことでいいの!?いつでも、いつでも大歓迎(だいかんげい)よ、ユメ!好きな時に遊びに来て。そしてまた温泉(おんせん)に入りに行きましょう!」


「あの、ユメ…私からもお願い…いいかな?」

「なぁに、ソフィア?」

「私と、その…あの…えっとね、お友達(ともだち)になって欲しいんだ。」

 私はぷっと()き出してしまった。

「ひ、(ひど)いわ、ユメ!私の頑張(がんば)った告白(こくはく)を笑うだなんて!」

「ううん、ごめん、ごめん。そういうわけじゃないの。あのね、ソフィア。私はもうとっくに…」


――貴女(あなた)とお友達(ともだち)だと思っていたわ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ