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51 衣装合わせ・女性編

 さらに翌日。


 俺たちは呼ばれて帝城へ参内した。


 ただし皇帝は出てこなかった。

 代わりにフォルテからシバかれた。何故?


「ジラあああああッ!? なんで昨日は家にいなかったのだッ!?」

「それこそなんで!?」


 ガシたちと飲み会に行ってただけですが。


「男内だけのお祝いの何が楽しいというのだ!?」

「案外楽しいですけれども。気楽だしね」

「そういうことではなくてだな!? お前が家にいたらもっと楽しいイベントがあったかもでだなあ!」


 フォルテ本人は言葉を濁しているが俺は知っている。


 昨日、フォルテからの使者がウチに来てたそうだ。互いに十二使徒に昇格したお祝いに食事しようとかそんな要件だったらしい。

 同期たちとの飲み会に帰ってきてから両親に教えてもらった。


「食事に誘ってくれるのはいいけど、当日来るのは困るよ。俺にも予定があるからさ」

「ううう~……!!」


 フォルテに生えた犬耳が力なく垂れ下がる。

 ビーストピースを埋め込まれてから感情を表すアイテムが豊富な彼女。


「せっかく誘ってくれたのに留守にしてたのは申し訳ないから……。『日を改めて』ってことでどうかな? もしよければだけど……!?」

「本当か!? じゃあ今夜はどうだ!?」


 だから何故そんなに性急なのだ?


「へえ、面白そうな話だな?」

「ぎゃーッ!? サラカ!?」


 呼んでもないのにサラカがやってきた。


「タダ飯はいいよなあ、お前が奢ってくれるんならなおさらだ。オレも喜んで参加させてもらうぜ?」

「誰がお前を呼んだ!? しかも奢りだとか! 勝手に決めんな!?」

「おやあワリカンなの? ロボス族のお姫様はケチ臭いですにゃー? お前はどう思うセレン」


 意図的な飛び火?


「えー!? フォルテお姉ちゃんとお食事会!? 行く行く行くーッ!!」

「いやあの、セレンこれはな!? ジラと二人きりだから意味があることで……、私が真実お前の義姉(あね)になれるか瀬戸際の……! ああわかった! 皆で楽しもう!!」

「「やったー」」


 さすがにセレンに泣かれては全面降伏しかなかった。

 フォルテも相当妹に弱いな。


「つかお前までどさくさに紛れ込もうとするな!」

「えー?」


 そしてサラカはしっかり招待拒否されていた。


「で、俺たちはなんで今日呼ばれたわけ?」


 まさかこんな美少女コントをするためではあるまいし。


「呼んだ本人の皇帝も出てこないし。一体何なんだ?」

「皇帝陛下は政務のためお見えになりません。本日は私が皆様の対応をさせていただきます」


 そう言って出てきたのは、いかにも『文官』といったピッシリ綺麗ないでたちの女性。


「シモンハルトと申します。帝国の装備全般を統括する部署に所属しております」

「装備?」

「本日は、十二使徒の方々専用の戦装束を拵えよと皇帝陛下よりご下命賜りました」

「いくさしょうぞく?」


 セレンが『わー、新しいお洋服ー』と言って飛び跳ねた。

 フォルテ、サラカも得心したようにニヤリと笑う。


「なるほど、大幹部用の晴れ着を新調というわけか。さすが皇帝陛下は威しが得意でいらっしゃる」

「『帝国守護獣十二使徒』は、帝国を代表する最高戦力。それゆえ外見もそれに似合ったものにせよとの指示です」

「そのお考えには大いに賛成だ。特にジラ、お前その格好で十二使徒としてふるまうつもりか?」


 俺に振られた?


「ダメかな?」

「ダメに決まってるだろ。その服、完全に普段着ではないか?」


 まさにそうだけどな。


 一応錬兵所を卒業して正規兵になってからは軍服とか支給されてるんだけど、十二使徒に選ばれて一般兵の服装はどうなの? と思って今は普段着。


 近所のリーズナブルな服屋で買ったヤツだ。


「帝国幹部ともなれば戦闘にも耐えられる機能性に加え、見た目も威厳が求められる。グレイリュウガ様やワータイガ様のように」


 それであの人たち普段から鎧着てたの?


「いいなあ! だったらオレの新しいおべべはド派手なヤツがいいぜ! 生地がキンキラに光ってな! それでいてさり気なく!」

「アタシは可愛いのがいいーッ!!」


 サラカもセレンも新しい服作りに前向きだ。

 女の子はどこの世界でも着飾るのが好きなようだ。


「本日皆様にお越しいただいたのは、装束作成の協力をお願いしたいからです。まず皆様ご自身どのような衣装に袖を通したいか、構想を伺いたく思います。装着者の意向は何より大事ですので」

「言えているな。特に我々十二使徒の戦い方は特殊だ。しっかり打合せしておかねば最悪服に戦闘を阻害されることだってあり得る」

「おっしゃる通りです。そしてもう一件、さらに大事なことが」

「え?」

「採寸です」


 装備課のシモンハルトさん、巻き尺を取り出す。


「着る人のサイズ。それを把握することこそよい衣服を作る第一歩。ここで皆様の正確な間尺を測定させていただきたく存じます。身長から肩幅、股上、股下。その他諸々……!」

「えッ?」

「それってまさか……!?」


 なんかフォルテとサラカがザワザワしだす。


「女性の皆様には、より綿密な採寸をさせていただきます。女性はより厳密にプロポーションを把握しなければ美しいシルエットを作り出すこともできません!」

「それでは、もしや……!?」

「当然測らせていただきます。胸回りも」

「胸!?」

「腰回りも」

「腰!?」

「尻回りも」

「尻!?」


 女性たちの緊迫感が上がっている。

 加速度的に……!?


「わーい身体測定だー、今年こそ身長伸びてるといいなー!」


 その中でセレンだけが気楽だった。


「待て! 待ってくれ! それは今日はダメだ! せめて三日後、いや一週間後で!?」


 フォルテが何故か慌てて拒否しだす。


「違うんだ! 決して昨夜のやけ食いが気にかかるというわけではなく。とにかく今日の私は本当の私じゃない! 一週間かけてあるべき体型に絞ってくるから!」

「悪あがきしないでください。一週間そこらで体型なんてそう簡単に変わりませんよ」


 対する服作り係さんは冷静そのもの。

 きっとあんな見苦しい客を幾人も相手にしてきているんだろう。


「それに我々が求めているのは着る方の一番自然な体型なんです。時間をかけてシェイプした不自然な体型なんてそう長くもちませんよ。せっかく作った衣装がパツパツのボンレスハムになるだけです」

「そこまで肥えたりしない!!」


 女たちの熱い戦いが繰り広げられている。


「正確な採寸ができるようにできるだけ脱いでください。丸裸になれとは言いませんが、できるだけ素肌に近づくように……」

「仕方ないなあ、わかった……!」


 フォルテが今着ている服を解こうとしたところ……。

 目が合った、俺と。

 バッチリ。


「何を見ているのだスケベ!?」

「すみません!?」


 たしかにな!

 何女性が衣服を脱ぐところを冷静に観察しているんだ俺は!?


「ダメだぞダメだ! そういうのはだな、ちゃんと祝言を上げてからじゃないとダメなんだぞ! たとえ意中の前でも、嫁入り前の娘が素肌を晒すなど!」


 フォルテ、顔を真っ赤にしながら開きかけた胸元を即閉じるのだった。

 こんな仕草は年相応の女の子に見える。


「すまないがジラは席を外してくれないか? 気安く殿方に裸を見せるわけにはいかないし、これから暴かれるのは乙女の最奥の秘密……!?」

「何やってんだよフォルテー、さっさと進めようぜ」

「んなはああああああッ!?」


 フォルテが奇声を発したのは、サラカの奇行によってであった。


 年頃の乙女、すべての衣服を脱ぎ捨て全裸になっていた。


「いやあの、だから全部は脱ぐ必要はないと……!?」

「最高の衣装を作りたかったらサイズは正確に測らないとよ? やっぱり一番自然な姿がいいべ?」


 そう言ってサラカ、実に豊かな胸を張る。

 そして今、その豊乳を覆い隠しているものは何もない。


「アホがああああッ! 少しは隠さんかあああッ!?」


 大慌てでフォルテ、サラカの乳やらその下やら大事な部分を隠そうとする。

 主に俺の視線から。


「なんで? ハヌマ族の集落じゃおっぱい晒すぐらい普通だったぜ?」

「ここは帝国だ! 少しは現地の習俗に慣れんか!」

「はーん、草原の犬っころが偉そうに! ああそれでか、都会の暮らしに慣れて、いっちょ前に弛んだ腹を気にしてるのか?」

「弛んでない!!」

「安心しろよ、ここでわかった数字はしっかりジラに教えてやるからよ。そうだ折角だし勝負するか? 一試合は譲って、オレの二勝一敗かな!」


 どことどことどこで勝負する気なのか?


「ジラ!!」


 フォルテから怒鳴られた。


「いつまでそこにいる気だ!? ここはもう乙女の聖域だぞ! 許可なく侵入するなら死刑だ!!」

「失礼しましたー」


 俺はすたこらさっさと逃げだした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 衣装あわせに何故ジラが女性に混じって居るのか、男女に別れた部屋で説明されるだろう普通
[良い点] キンキラキンにさり気なく。そいつがサラカのやり方。
[気になる点] ガシたちはどこにいるの⁇
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