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9話 エンカウント

 季節は巡り。あれから、私はひたすら怪しまれない程度の距離で。

 マルクさんと親睦を深めていた。

 作中で話が動きだすのは10歳。

 9歳までは何も動かないだろうとたかをくくっていたからだ。


 作中ではマルクさんはお嬢様が10歳の時に、お嬢様に病気を指摘されて重篤化しないですんだというエピソードがあった。


 そう!!10歳になれば貴方は今病気にかかっています!!どーんっ!!という情報でマルクさんを一気にこちらを信じさせる切り札がゲットできるからだ。


 ただ、お嬢様が10歳になると問題がある。


 お嬢様の一人目の婚約者のフランツの登場だ。


 作品を読んでいた時はこの子がヒーローなのかと思っていたが、敵役の令嬢といちゃついただけでその後出てくる事のなかった。

 かませ当て馬。


 このままだと作中のヒーローロゼルトとは出会わないのでそのかませ青年フランツと婚約してしまうはず。


 いや、別にその青年自体悪い人という情報はなかったが……。

 だが、性格がいいという情報もなかった。


 やっぱりあれだよ。

 作品を読んでいる自分としては作品にでてくる本ヒーローのロゼルトとくっつかないと落ち着かないっていうか。

 自分が歴史をかえちゃったから本来くっつくはずの二人がくっつかないのは心苦しいというか。


「リンゼ、具合でもわるいのでしょうか?」


 考え込んでいるとお嬢様が心配そうに顔をのぞき込んで切る。


「いえ、そんなことはありませんよ。

 お嬢様が今度10歳になられて秋に参加する予定の舞踏会のドレスに想いを馳せておりました」


 私が言えばお嬢様はほっとした顔をして


「舞踏会ですね。

 家の恥にならぬよう粗相のないようにしないと」


 と、ニコニコと微笑んだ。


 にしても、フランツとお嬢様ってどこで出会うんだっけ?

 作中でフランツとリシェルお嬢様が出会うのは本を読んでる時声をかけられたはず。


 一番エンカウント率が高いのは10歳のファルデーネの儀。


 10歳になる貴族は一度王都にある神殿で儀式を受けなければならない。

 お嬢様ももちろん、他の地域の貴族の子も一同に集まる。

 夏にその儀式を済ませ、しばらく王都にある自分の別荘ですごし秋に王宮主催の舞踏会に参加する。

 これが10歳になる貴族の儀式である。

 うちの領地で他領地の子息がうろちょろしてるわけもないので、フランツとエンカウントするのはそこだろう。

 まぁどうしても行けない場合などは自分の領地の神殿ですませてもいいのだけれど。

 お嬢様は王都にある図書館に行けるのを楽しみにしているのでおそらく参加するだろう。


 外にでたら私がずっと付き従っていればフランツとのエンカウントも防げるはず。

 

 儀式の時はお嬢様にずっと付き添ってフランツとのエンカウントを防がないと。


 今年はやる事一杯だなと私はため息をつくのだった。



 ■□■


「領地を離れるのははじめてです」


 旅支度をしているお嬢様が微笑んだ。

 嬉しそうにどの帽子をかぶっていこうか鏡とにらめっこしながら選んでいる。


「リンゼこの帽子はどうでしょう?」


「とても可愛いです」


「えーと、シークはどう思いますか?」


「とてもお似合いです」


「ではこちらは?」


「とても可愛らしいです。まるで妖精のようです」


「そうですね」


 と、私とシークがニコニコしながら答えれば


「二人は似合うしか言わないから参考になりません」


 と、お嬢様がちょっとむくれてしまう。


 う。しまった。

 本気で可愛いと想って言ったのだけれど、お嬢様は適当にあしらわれたと思ったらしい。



「お嬢様。似合う帽子しか買っていないのですから、似合うしかいいようがありませんよ?」


 私が言えば、お嬢様はぴこーんと閃いたような顔をして


「その通りですね!リンゼは頭がいいです!」


 と、過剰に納得された。

 確か小説の中では虐げられてややずれた性格になったと説明があったけれど。

 お嬢様の天然は元来のものも大きいかもしれない。


「ではこの洋服とこの帽子の組み合わせはどうでしょうか?」


「そうですねとてもよくお似合いです」


「はい。私もそう思います」


「………。自分で決めます」


 と、やはりお嬢様がむくれてしまうのだった。

 いや、本当に何着ても可愛いから可愛いとしか答えられないのだけれど。

 もう少し私も服装について学ぶべきだったかもしれない。


 ちょっとすねてるお嬢様も可愛いなと思いつつ、着替えの手伝いをするのだった。

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