6話 よくある食べ物チート?
「お菓子作り?」
「はい。お嬢様にはいろいろ経験していただきたいと思っています。
本来使用人のすることではありますが。
経験は決して無駄にならないと思います。
お客様をもてなす時の心得を知る勉強と考えていただければ」
グエン様が仕事が終わり屋敷に戻った所で、私は話を切出した。
お菓子パーティーを開くにしても領主であるグエン様に許可をとらなければいけない。
「……ふむ。確かにリシェルは本を読むばかりで趣味らしい趣味がないとは聞いている。
違う事を経験させてやるのも必要かもしれぬな。
わかった許可しよう。
費用はいくらかかってもかまわない」
言ってグエン様がスカーフをとりながら
「……で、それはいつだ?」
と、物凄く真面目な顔で問う。
仕事を休む気ですね。わかります。
基本親馬鹿なのだから、さっさとリシェルお嬢様に謝っていればここまで親子関係が崩れる事もなかったのに。
私は心の中でため息をつく。
……まぁ一番の原因は、悪意あるリンゼが二人の間をとりもっていた事だろう。
リンゼがお互い誤解するような方向で意思を伝えていたのだから。
そのせいで結局二人の誤解が解ける事もないままお嬢様はガルシャ王子と婚約をさせられることになる。
やっぱり元凶こいつじゃないか。
ああああ、考えただけでマジムカツク。
リンゼの身体だからできないけれどリンゼも裁かれるべきだと思うの!?
や、私が裁かれても困るけど!?
どうしようもない怒りに私はため息をつくのだった。
■□■
「見てください!!リンゼ!!この容器は可愛いです!!」
リシェルお嬢様が領地でよく物品を納入してくれる商家のマルクさんが持ってきた食器類を見ながら微笑んだ。
可愛い花柄の容器を持ち、嬉しそうに私に見せる。
「はい、とても可愛らしいですねお嬢様」
「でも、男性の方のプリンを入れるのは可愛すぎるでしょうか?
もっと落ち着いた色にしたほうがいいですか?」
「なら一人一人違う容器にするのはどうでしょうか?
それならば甘いものが苦手な者の分は甘すぎず作ることもできます」
私の提案にお嬢様が瞳を輝かせ
「その通りです!流石リンゼですね!」
と、誰誰にはこの容器でしょうか?と真剣に吟味しだす。
流石ラムディティア領。
鉱山の利権を山ほどもっているためお金持ちだ。
まぁ作中では他国から奇襲をうけて鉱山もダメになり、一時期かなり貧窮してしまうのだが。
現在はお嬢様の趣味で開くパーティーにも食器を一新で買い揃えられるのなど余裕なほどお金持ちな領地だ。
そのおかげで、誰がどの容器をつかったのかわかるようになって有難いのだけれど。
それに、私は嬉しそうにニコニコと容器を選ぶリシェルお嬢様を微笑ましそうに眺めるマルクさんを見る。
この人も作中に登場するキャラだ。
酷い拷問を受けて死んでしまったお嬢様が逆行したあと、まっ先に真実を打ち明けた人物。
この国でそこそこの規模の商家の当主マルク
リシェルが説得した暗殺者ギルドの統括やら、リンゼの件の調査やら裏でやっていた裏方的存在だ。
作中では後半はほぼ出番がなく忘れられていたが。
作中で彼がどれだけリシェルお嬢様の事を想っているかは知っている。
自分の子供のように親身になっている彼なら、リシェルお嬢様の危機と知れば私にも協力してくれる可能性が高い。
側に暗殺者ギルドの密偵がいるグエン様よりも、協力してもらうならこちらのマルクさんだろう。
だが、彼は作中で頭の切れるキャラ設定だ。
それなりに確証を得てから話を進めないと、相手にしてもらえるかすらわからない。
とにかく、裏に誰がいるかだけでも自分で調べないと。
私はいま交渉のカードがひとつもない。
私に必要なのは交渉できるカードの所持。
でなければお嬢様とグエン様に毒を飲ませていた罪で裁かれてしまう。
なんでよりによって敵側に転生したのかなぁ。
こういうのは味方側に転生してお嬢様をお守りします!とかやるものじゃないだろうか。
私はトホホとため息をつくのだった。