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4話 犯人探し

「お嬢様また神話のご本ですか?」


 家庭教師達の授業が終わり、リシェルお嬢様はいつものお気に入りの席で本を読みふけっていた。

 まだ8歳なのに朝からダンス、刺繍、行儀作法、勉学、ハープの練習ととにかくやることが多い。

 その為自分の時間は僅かなため、あいてる時間はいつも大好きな神話や遺跡などの本を読み込んでいた。


「はい!新しい本を歴史学のラチェル先生が持ってきてくれました」


 言ってえへへと嬉しそうに本を差し出した。


 そして、いけないという顔をして


「い、いえなんでもありません。

 この本は後にしますね」


 と、謝られる。何故謝ったか。

 リシェルはリンゼがラチェル先生が嫌いだと思っているからだ。

 そう。リンゼはリシェルの味方になりそうな人物を遠まわしに嫌いと匂わせてリシェルから遠ざけていた。

 察しのいいリシェルにわざとわかる程度に嫌いを匂わせるのだ。

 リシェルを孤立させるために。

 リシェルは母親代わりのリンゼに嫌われたくない一心でリンゼが嫌いと匂わせる人物とは距離をとるところがある。

 それを面白そうに眺めながら利用していたのだ。

 何故か身体をのっとったせいかリンゼの記憶もあるため、それが思い出される。


 うん。まじこの身体のリンゼは許せない。

 こんな子供を貶めようとしてたんだから。

 リンゼ自身暗殺者ギルドでそういう教育を受けてきたのだから仕方ないといえば仕方ないのかもしれないけれど。

 

「それにしてもラチェル先生はいい先生ですね。

 お嬢様のために本を選んできてくれる方ですもの」


 言って微笑めばリシェルお嬢様が顔を赤くして嬉しそうな顔になる。


「は、はいっ!!」


 言って嬉しそうに私に抱きつく。


「お嬢様?」


「リンゼ大好きです」


 言ってエヘヘと照れる顔が可愛くて。

 私はお嬢様の頭を撫でる。


 けれど。


 それがリンゼが暗殺者ギルドで身に付けた知識でお嬢様を自分の操り人形になるように躾たために生まれた歪んだ愛。

 お嬢様自身気づいてない偽りの愛情。


 せめて。

 この愛情が本物になれるように努力しないと。

 自分がリシェルに感情移入しすぎてる自覚はある。

 けれどこうやって物語の中に転移しちゃったのも何かの縁だし。


 この子を守りたいと心から思う。


「私も大好きですよ。お嬢様」


 微笑めばリシェルお嬢様も嬉しそうに微笑むのだった。



 ■□■


 指紋というか手形集めは順調にいっていた。

 すでにあれから6ヶ月たち、手形は15回採取できている。

 手形の大きさ指紋からわかることは全て同じ人物だ。


 少なくともリンゼの薬を補充してる人員は一人。


 手の大きさ、指の太さからいって間違いなく男だろう。


 犯人の手形はわかった。


 次は特定する段階だ。


 容疑者はグエン様周辺にいる人物。

 グエン様の遠征に必ず同行している人物になる。

 

 一番怪しいのはグエン様が好むからと、私の作ったお菓子とお茶を遠征前に大量にもっていく護衛騎士の二人。

 そしてこの屋敷に長年使えている執事のセバス。

 あと騎士団長のラオスと、副騎士団長のグーテンベルク。


 この四人ならメイドの居る棟に怪しまれることなく入ってこれる。


 そしてグエン様について行って薬を飲ませる人物と、リンゼの薬を補充する人物が別だった場合。

 庭師のトーヤ。館全般の全てを取り仕切る室長のルーベルなど範囲はかなり広がってしまう。


 問題は彼らの手形をどうやって集めるかだ。

 相手も暗殺者ギルドの一員。

 私が怪しい動きをすればすぐさま殺されてしまうかもしれない。


 それに騎士や執事に限っていえば、普段手袋をしているため手形や指紋を手に入れるのはかなり大変だろう。

 手袋をとるなど食事の時くらいだ。


 ……そうか。

 食事だ!!!


 私はいいことを思いつきにんまり微笑むのだった。

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