表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/44

35話 森の中

 気が付けば――森の中にいた。

 ここはどこだろう?

 またリンゼに身体を乗っ取られたのだろうか?

 マルクに告白され、一人テンパリ部屋の中で悶えていてそのまま寝てしまってから記憶がない。


 身体が乗っ取られてもいいように、エルフの護衛の人が近くにいてくれたはずなのに。

 その護衛の人もいない。


 私の身体はふらふらと森の中を歩き回り……断崖絶壁の上で立ち止まる。


「……ちょ!?まさか飛び降りる気!?」


 私が心の中で叫べば


「自分の自由にできない身体に何の意味があるのよ。

 どうせなら貴方も道づれだわ」


 言って本当のリンゼが微笑んだ。


 確かに身体を乗っ取られたらそうしたくなる気持ちはわかる。

 リンゼからしたら、知らない人間に身体を乗っ取られて理不尽以外のなにものでもないだろう。

 が、わかるからって死んであげていいわけじゃない。

 私だって死にたくない。

 それにお嬢様にあんなことをしたリンゼも許せない。


 見張りのエルフは何をやってるの!

 ああ、どうせ人間だからって塩対応だったんだろうなぁ。

 エルフって人見下してるし。

 せっかく頑張って平和になったと思ったのに!

 平和になった世界を満喫することなく死ぬって!?


 嫌だ。嫌だ。嫌だ。


 意思に反して、身体は崖の端を進んでいく。


「いい気味。一人だけいい子ぶって。

 あんただけ幸せになるなんて許さない」


 ちょっと待ってよ!!

 私憎しで死まで選ぶか普通!!

 私は心の中でつっこむけれど。当のリンゼに声は届いていない。


「あんたの思い通りになんてさせないんだから――――」


 リンゼがつぶやく。

 なんとなく伝わってくる感情は――私憎しの気持ちしかない。

 どうやら今までお嬢様にむいていた負の感情が私にむいたらしい。


 私を殺せるなら――自分もどうなってもいいと本気で思っている。


 怖い。どうしよう。まだ死にたくない。

 必死にもがくけれど。想いは届かない。

 身体の主導権はリンゼのままで――。


 そして――宙を舞った。

 身体が崖を飛び降りたのだ。




 助けてーー誰かっーー!!



 私が心の中で叫んだ瞬間。



「リンゼッ!!!」


 崖の上で一生懸命手を伸ばしている鬼畜がいた。

 それでももう私の身体は宙を舞っていて――手は全然届かない。


「マルクさ……んっ……」


 やっと言えた一言はそれだった。



 ■□■


 人は死ぬとき。

 走馬灯を見ると何かの本で見たことがある。


 私は何故か日本人だった頃の自分の人生を振りかえっていた。

 めまぐるしく。自分の記憶が流れてくる。


 幼稚園のお遊戯会。

 小学生の遠足。

 中学生の体育祭。

 高校生の文化祭。

 大学に入ってからのサークル活動。


 そして――社会人になった所で。


 今の世界にきてからの記憶が流れ込んできた。


 一生懸命指紋を集めたり。

 お嬢様を微笑ましく眺めていたり。

 フランツとロゼルトのお嬢様の三角関係でハラハラしたり。


 ラオスを捕まえたり。


 いろいろ大変だったけど。

 きっと私はやり切れたと思う。

 少なくとも、お嬢様の悲惨な運命はかえられた。


 私が転生したことは……きっと無駄じゃなかったはずだ。

 無駄だったら悲しすぎる。


 最後に――鬼畜の顔が浮かんで私は涙が溢れた。


 

 やっぱり好きだったのかなぁ……と。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

■□■宣伝■□■
★書籍化&漫画化作品★
◆クリックで関連ページへ飛べます◆

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ