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31話 いれかわり

 神殿でエクシス様を裏切ったミュール達をエルフ達が捕縛し、空間魔法から出てみれば、鬼畜とジャミルが待っていてくれた。


「まったく、自分から入れ替わりを願うとか。

 どうして自分から危ないことに首突っ込むかな」


 ジャミルがプンスカ言うので


「まだ10歳のお嬢様を危険な目に会わせるわけにはいかないでしょう!?」


 と、私が答える。

 私だって危険な事をしたいわけじゃない。

 けれど一度ラオスの適性になっていた変化の魔道具を、無理矢理使うほど魔力があるのは私しかいなかったのだ。


「って、俺はいいのか!?」


 ロゼルトが突っ込んできたので、男は女を守るものです!!!と、手を握り誤魔化した。


「あの……これは一体どういう事でしょう?」


 エクシスが唖然とした表情で聞いてくる。


 目の前にはエルフの神兵達につかまった神殿の神官達の姿があった。


「まさか、本当に大神官が聖女を自らの私利私欲の為に囲おうとしているとはな」


 エルフの里の長クリフォスがため息混じりに言えば


「御助力感謝致します」


 と、優雅にマルクが頭を垂れる。


 そう――あの後。


 ラオスを自白剤で吐かせてみれば。

 ラオスは神殿の「神の使徒」だったのである。

 事の真相はこうだ。


 クロム・フォル・ロティエンが未来予知できる異世界人を手に入れた事から事件ははじまる。

 彼はグエン様に敵対心をもっており、なんとかグエンの元から聖女を奪う方法を考えた。

 だが誘拐などしても魔力の質などですぐグエンの娘ということがバレる。

 聖女がゆえ、娘を殺すなどということもできない。

 監禁しておこうにも、いつかは聖杯に力を注がねばならない。

 長い間監禁したなどと知れれば、一族郎党どころか国すら罪に問われて他国から裁かれかねない為、出来る訳がなかった。


 そこで考えたのが――聖女を崇拝してやまない大神官ダルシムを利用することだった。

 ある意味狂信的に聖女を慕っていたダルシムに、聖女リシェルお嬢様を囲う方法を提案したのである。


 リシェルお嬢様の力を摂取できる異世界人を偽聖女にしたてあげ、聖杯に力を注いだ後は、お嬢様をダルシムが囲う。

 聖女の職には偽聖女がいるため、ダルシムは思う存分本当の聖女も、愛でる事ができると。


 その案に事もあろうか、大神官は乗ってしまった。

 それを知るのはラオスと、現在エルフに捕まった4人のみである。


 その為、私たちはラオスから通行手形とエルフの里の位置をゲットして、エルフと繋ぎをとり、こうして神官連中を罠にはめたのだ。


 リシェルお嬢様が本当の聖女だと証明してみせれば、エルフはすぐに私達の味方になってくれた。


「エクシス・クラム・ナルシャータ。

 これが人間に与える最後のチャンスだ。

 我らがそなたの後ろ盾になろう。

 今すぐ聖女に害をなそうとした、背信者を神殿より一掃しろ。

 でなければ、未来永劫、聖女はエルフの保護下に置くことになる」


 エクシス様に告げるクリフォスの声は……物凄く冷たいものだった。



 ■□■



「……なんとか、解決したのかな」


 エルフ達に連れて行かれる神の使徒を見つめながら。

 私が呟けば


「はい。お嬢様も事が落ち着くまではエルフの庇護下に入ります。

 エルフの元ならお嬢様に害が及ぶことはないでしょう」


 隣でマルクがにっこり微笑んだ。


 これからきっと、本格的にクロム・フォル・ロティエンなどが捕らえられ、事の全容が見えてくるのだろう。

 世間に事件の真相が明るみになる。

 お嬢様が偽聖女呼ばわりされて、ガルシャ王子の婚約者にさせることもなくなったと思っていい。


 お嬢様がつらい未来を歩む事がなくなるのだ。


 そして私も一緒にギロチンされる未来を免れた。


 リンゼの身体になってからいろいろあったけれど。

 鬼畜に剣を突きつけられたり、ジャミルに切りつけられたり……って、思い返してみるとほぼ身内にいろいろされた気がするのは気のせいじゃないはずだ。


「エルフの後ろ盾のあるエクシス様なら、お嬢様に害をなそうとする神殿の勢力を排除することもできるでしょう。

 と、いいますか。してもらわなければ困ります」


 言って物凄く悪い笑みを浮かべる。

 

 ……きっと、影で暗躍するつもりなのだろう。

 流石鬼畜。やることが鬼畜。


 にしても、マルクさんが裏で牛耳るなら大丈夫だろう。

 旦那様のように密偵入りまくりました☆という事態にだけはならないと思う。 

 事件も終わった事だし旦那様にはみっちり説教を受けさせようと思う。

 主に鬼畜に。

 ぐぅの音もでないほど叩きのめすように頼んでおこう。


「それはよかったです。

 これで私も安心して死ねますね」


 私が冗談まじりに言えば



 ぐわっと肩をつかまれた。


「へっ!?」


「まさか、無事歴史を変えれば、貴方は消えて居なくなるのですかっ!??」


 物凄く慌てた顔で言われ、私は狼狽した。

 あれ、もしかして、よくある歴史を変え終わったら死ぬとかいう、物語の主役みたいな捉え方をされたのだろうか。


「やっ!!違います!!

 なんとなく言っただけです!!

 そこまで深い意味はありません!?」


「……本当ですか?」


 私がコクコク肯けば


「……そうですか」


 と、安心したように微笑んだ。

 まるで飼い主に置いていかれなくて安心した子犬のように。

 うん。なんだこのイケメン。

 

 普段凄い悪い顔しているくせに時々物凄く、優しい顔を見せるから困る。

 これはあれか、ギャップ萌えなのか。

 流石小説のキャラはやることが違う。

 と、妙にドキドキしてしまって私は顔を逸らした途端。


「はーい。そこイチャついてないで、ちゃんと仕事してくれっかな」

 

 と、ジャミルがニッコリ私達の間で微笑み、


「「いちゃついてなんかいませんっ!!!」」


 珍しく私とマルクの言葉がかぶるのだった。

 



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