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28話 閑話 リシェルとロゼルト

「久しぶりリシェル!元気にしてたか!」


 リンゼと別れの挨拶を済ませ出発すること数日。

 リシェルはグエンとともに婚約の儀の準備のために、王都のラムディティア領の別荘に着けば門の前でロゼルトが出迎えてくれた。


「ロゼルト!!待っててくれたのですか!」


 嬉しくなってリシェルは馬車が到着するなり飛び降りる。

 

「ああ、すぐにでもリシェルに会いたかったし」


 言ってロゼルトが飛び込んできたリシェルを抱きかかえれば、すぐ後から降りてきたグエンの鋭い視線に気づいて慌ててリシェルを地面に下ろした。


「久しぶりで積もる話もあるだろう。だが中に入ってからにしなさい。

 まだ婚約前だ」


 言って、リシェルの頭を撫でる。

 その声は穏やかで、見つめる目は優しくて。


「はい、ごめんなさい。お父様」


 言ってリシェルは微笑んだ。



 ■□■


「親父さんと仲良くなれたんだな」


 リシェルの部屋に入るなり、ロゼルトに言われてリシェルは振り返った。


「そう見えましたか?」


「ん?うん。

 なんだか前よりお互い見る目が優しかったっていうか……何ていうか。

 言葉じゃうまく言えないんだけどさ。

 悪い、もしかして違ったのか?」


 ロゼルトが言えばリシェルはぶんぶん首を横にふり


「違わないです!そう言ってもらえると嬉しいです!」


 言ってニコニコ微笑む。


 王都に来るまでの馬車の中で。

 リシェルはグエンに謝罪された。




「何でパパはママを見捨てたの?」




 母が死んだ時、父を責めるように言ってしまった幼かった自分。

 リシェルはずっとその事を気にしていた。


 あの言葉のせいで、父は自分を嫌いになったのではないかと。

 何も答えず立ち去る父の背中が今でも忘れられなくて。

 あれからいままでろくに口すら聞いていなかった。


 けれど気にしていたのは父グエンもまた同じだったのである。


 守れなかったのだから言い訳をするべきではない。


 そう考え答えず、「すまない」とだけ答えて立ち去ってしまった。

 けれどそれは親として間違っていたと謝られたのだ。


 嬉しかった。

 

 自分が父に嫌われていたのではないと。


 父もまた自分と同じで、大事だけれど話しかけにくかっただけと。

 それからはもう嬉しくて、リシェルは一生懸命父に話しかけていた。

 いままでいろいろあった事。ロゼルトの事。リンゼの事。フランツ達と王都で過ごしたこと。

 グエンはその話を嫌がらず聞いてくれた。

 王都につくまでの旅路で大分父と娘の距離は縮まったのである。


 ロゼルトに馬車であった事を話せば、ロゼルトも嬉しそうに聞いてくれた。

 

 それが嬉しくてリシェルは微笑む。


「ロゼルトは聞き上手ですね」


「え?」


「リンゼが言っていました。

 ロゼルトの年齢で、ちゃんと人の話を最後まで聞いてあげられるのは偉いと!

 私もそう思います!」


「そ、そんな事はないと思うけどな。

 まぁ、よく妹に話の途中で割って入るなとは怒られたから気をつけるようにはしてたけどさ」


「だから上手なんですね」


 ニコニコ嬉しそうに言うリシェルに、ロゼルトは赤面した。

 それを言うならリシェルだって褒め上手だと言おうとしたが、なんとなく恥ずかしくて言えない。

 リシェルはまっすぐに、何のためらいもなく褒めてくるから照れる。

 ロゼルトの妹はすぐに「これだからお兄ちゃんは」と、悪いところばかり指摘するものだから、女なんてそんなものだと思っていたが、リシェルは違った。

 相手のいいところばかり見て、純粋に褒めてくる。

 だからこそ可愛くもあり、同時に危なっかしいとも思う。

 悪意のある相手にすぐ騙されてしまいそうな危うさもあるのだ。

 舞踏会前にプロポーズしたのも、それが理由だった。

 あんな魑魅魍魎の巣食う王宮のパーティーになど、この純粋な少女を参加させるわけにはいかない。


 フランツならまだしも、他の変な男にプロポーズされ騙されるくらいなら!!と、勢い込んでプロポーズしたのである。


 御陰でこうして、リシェルとの婚約を迎えられる事になったのだが。



「お父様とも話せて、ロゼルトともこうして一緒にいれるだけで、私は幸せです」


 顔を赤らめて言うリシェルが可愛くてロゼルトは思わずリシェルの頭を撫でようとして手をとめる。


「ロゼルト?」


「あー、悪い。なんか頭を撫でたくなった。

 でもダメだよな?」


 以前小さいときの癖で妹にそれをやって、髪が乱れるでしょ!?と、怒られたのを思い出しロゼルトは慌てて手をひっこめた。


「だ、ダメじゃありません!嬉しいです!」


「い、いいのか?」


「はい!」


 顔を真っ赤にして嬉しそうに微笑むリシェルが可愛くて。

 ロゼルトはそのままリシェルの頭をなでるのだった。

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