26話 監視
「……ところでマルクさんは寝ないのですか?
夜はどうするつもりなんでしょう?」
夕方になっても動かない状況に私はため息をつきながら問う。
あれからずっとセバスの姿を水晶で追ってはいるが、特に怪しい動きはない。
セバスはいつもの業務をこなして部屋にもどっただけだ。
既に時刻は夕方になっている。
「薬を飲めば20日くらい不眠でも問題ありません」
と、さらりと言ってのける。
うーん。それはそうなんだけど。
流石はファンタジーの世界。
薬で何でも解決しちゃうんだよね。
私はため息をついた。
「眠いなら寝てもかまいませんよ。魔力はお借りしますが」
「マルクさんが頑張ってるのに一人寝るのは気が引けます」
私が言えば
「その考えは合理的ではありません。
一人が働いているならもう一人は休んで体力の回復を優先すべきです」
「そういう問題でしょうか」
「そういう問題だと思います」
言ってニッコリ微笑む顔はやっぱり美形で。
台詞だけ聞けば超イケメンなのに、この人が言うと物凄く裏がありそうに感じるのは何故だろう。
……まぁ一応気をつかってくれてはいるのだろう。
私が寝ようか迷っていれば
「動いた」
言ったのはジャミルだった。
部屋で本を読んでいたはずのセバスの前の空間が歪んだのだ。
これはあれか。
作中で神の使徒がつかっていた、突然現れる技だろうか。
そして――セバスの前に現れたのは……。
「あれは……騎士団長のラオスですね」
そう。グエン様の右腕とも言える人物だった。
「公爵家……密偵いすぎだろ!!ザルすぎない!?」
思わず口に出して呟けば、ジャミルも鬼畜も無言で頷いた。
うん。思ってたのは私だけじゃなかったようだ。
あとで全部解決したらグエン様を小一時間ほど説教したいと思う。
わりとマジで。
■□■
因みに遠距離で見える魔道具は……見えるだけで聞こえない。
セバスと騎士団長が何やら会話したあと……。
唐突に、セバスの身体が吹っ飛んだ。
そしてそのまま、騎士団長の姿が消え……セバスの身体もなぜか空間に呑み込まれていく。
「これは!?」
「まずいですね、空間移動で移動するようです。
このまま城の外に出てしまわれては後を追うのは無理です。
まぁ犯人がわかっただけでもよしとしないといけませんか」
「とにかく視野を全部広げてみようぜ。城の中に移動したかもしれない」
ジャミルの言葉に鬼畜は水晶の視野を全体に広げ。
「――いました」
と、マルクが映したその場所は。
わりと私が幽閉されている場所のすぐ近くだった。
気を失ったセバスを背負った騎士団長が普通に通路を歩いているのだ。
「何で、空間魔法を使わずどうどうと歩いているんですか?」
私が聞けば
「警備の位置は把握しているのでしょう。
空間魔法も、人を運びながら移動となると、魔力の消費的に長距離は無理です。
まぁ、貴方ならできるかもしれませんが、いくら神の使徒レベルといえども無理でしょう。
やむなく姿を現したのではないでしょうか」
騎士団長は、塔の下の奥まった場所についた途端。
セバスをその場にぼとんと落とす。
空間魔法内で殺したのだろうか
もう死んでいるのかぴくりとも動かない。
セバスは既に事切れているようで、どくどくと血だまりがひろがっていく。
「自殺にでも見せかける気か?」
「そのようですね」
「よし、じゃああとは手はず通りに。
魔道具を準備する」
ジャミルが言ってる間にマルクが眉根を寄せた。
「どうしたんですか?」
「まずいですね。女性が一人こちらに向かっています。
このまま行けばラオスと鉢合わせします」
「女性って?」
「貴方と仲のいい侍女のクレアさんです」
マルクに言われて私が慌ててそちらを見れば、確かにクレアが本を持ってこちらの塔に駆けてきていた。
手には私が好きそうな本を三冊大事そうに持っている。
……もしかして幽閉された私にこっそり差し入れをするつもりだった!???
どうしようこのまま鉢合わせしたら殺される!!
「ちょ!!クレアが危ない!!!
ジャミル!!どれくらい時間を稼げばいいの!?」
「5分だ。それだけあれば用意できる」
「わかった!!まかせて!!」
「なっ!!リンゼっ!?まさか現場に行く気ですか!?」
「ジャミルが魔道具を準備するまで私が時間を稼ぎます!!!」
言って私はそのまま、塔から飛び降り、屋根を伝っていく。
これくらいは暗殺者として軽々できる。
わかってる。
本当なら飛び出すべきじゃない。
でも。
自分だって罰をうけるかもしれないのに。
友だからと懲罰覚悟で本を差し入れてくれようと友達を見捨てられるわけないじゃない。
無事でいてクレア!!
私はそのまま走り出すのだった。
誤字脱字報告&ポイント&ブクマありがとうございました!!多謝!











