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25話 囮

「私マジ幽閉されるんですね」


 ラムディティア領の城の塔の一室で私はため息をついた。

 塔の中には私と鬼畜とジャミルがいる。

 部屋にはテーブルと4人分の椅子。

 奥に別室があり寝室がある。


 あれから私は王都に行くお嬢様と涙の別れを済ませラムディティア領に残った。

 私とマルクが椅子に座り、ジャミルは呑気に外を眺めている格好だ。


「当たり前だろ。

 囮なんだから」


 ジャミルが腕を組みながら言う。

 セバスには旦那様が

「リンゼがリシェルの食べ物に毒を入れているかもしれない。

 しばらくリシェルの側から引き離し、マルク達に尋問させる」と指示してあるらしい。



 すでに旦那様もこちら側にマルクが引き込んでいる。

 と、いうわけで私達はマルクさんと塔に缶詰にされていた。


「私を殺しに暗殺者来るんですよね?

 絶対守ってくださいね」


 ちょっと怖くて、ジャミルに言えば


「まぁ、ぶっちゃけて言えば、お前は殺されないと思うけどな」


「え?そうなんですか?」


「だって何も知らないだろ?

 調べなければセバスが薬を補給しているのはもちろん

 所属ギルドすら知らなかったらしいじゃないか」


「それはそうですけど」


「恐らく、不満解消のためのはけ口として生きて俺たちに捕らえさせるつもりだ」


 ジャミルの言葉に私はげーっとした。

 つまりガス抜きのために、私をグエン様に捕らえさせて、拷問か何かさせて気をそらさせようって事?


 やー、潔いほどの捨て駒っぷりに涙がでる。

 まぁ、お嬢様と一緒に断罪されてギロチンで殺されたし、捨て駒なのはわかってたけどさぁ。


「文句のつけようのないくらいの捨て駒っぷりですね」


 私がげんなりとした表情で言えば


「暗殺ギルドの末端員なんてそんなもんだろ」


 言うジャミル。


「さて、そろそろ準備をしましょう」


 言ってマルクが何かの水晶を取り出した。


「……これは?」


「貴方の魔力を使って、遠視をします」


 鬼畜の言葉に私は目を輝かせた


「そんな事出来るんですか!?」


 ちょっとそれ、チートじゃない。

 そんな便利なものがあるなら覗き放題じゃない!


「誰でも出来るわけではありません。

 貴方の魔力があるから出来ると思ってください。

 これが出来るのは神殿でも『神の使徒』レベルでしょう。

 王宮の宮廷魔術師でも出来る者はそういません。

 そして前もってこの城の至る所に魔法陣を隠し施したから出来ることです。


 城の中でしか出来ませんので注意してください」


「旦那は人使い荒いからな」


 と、肩をすくめるジャミル。


 成程。前もってジャミル達が準備していたわけね。


「でも、私、遠視のやり方なんてわかりませんよ?」


「やるのは私がやります。

 貴方は私に魔力を分けてくだされば結構です」


 そう言えば、鬼畜に前魔力をお裾わけする方法は習ってた。

 私がマルクと手をつなげば……ぼぅっとセバスの姿が映し出される。


「狙われるのはやっぱりセバスですか?」


 私が言えばジャミルが頷いた。


「ああ、セバスに罪を全部かぶせて幕引きをはかる。

 はじめからバレたらセバスを殺すつもりだ。

 ご丁寧に部屋に遺書まであったしな」


「遺書って?生きてますよね?」


「ああ、本棚の中に隠されていた。

 暇なら写しがあるから読むか?

 セバスの死後見つかるようにしてあるんだろう」


「……いつでも殺せるようにですか?

 それはまた準備万端な事で」


 私が遺書の写しを受取りながらげっそりした顔で言えば


「紅蓮の炎が関わってるんだからそんなもんだろ。

 だからこそ、今回は俺たちもセバスの尾行ができない」


「何故ですか?」


「セバスを殺しにくるやつは、確実に強いからだよ。

 側に俺たちがいればあっさりバレる。

 紅蓮の炎も、神殿の『神の使徒』に勝るとも劣らない魔術の使い手がいるからな。

 俺たちじゃ敵わない。

 俺たちの存在に気づけば、すぐに殺すのをやめるだろう」


「神の使徒って、確かめちゃくちゃ強い設定ですよね。

 あまり関わりたくないですね……」


「そうですね。実力では敵いません。

 捕縛の魔道具を使います」


「そんな物があるのですか?」


「ええ。作動までに遠くに人を配置する必要はありますが。

 この魔道具なら神の使徒でも捕まえる事が可能でしょう」


「わー。やっぱりそれお高いのですよね?」


「はい。王都にある私の屋敷くらいは買えるでしょう」


「な、なんでそんなにお金持ってるんですか?」


 私にくれた指輪といい。確かに商家だけど弱小国の商人にしては裕福すぎる気がする。

 王都だって土地代だけでかなりするはずだ。


「聞きたいですか?」


 ニッコリ微笑むマルクさんに私もニッコリ微笑み返し


「怖いのでいいです」


 と、答えるのだった。




 ■□■


「にしても、いつまで私はマルク様と手を繋いでいればいいのでしょうか?」


 セバスの映し出された水晶を見ながら私が呟けば

 あれからもう軽く5時間くらい経過している。

 この水晶。姿は映るが声は聞こえないので暇なことこのうえない。

 セバスは通常業務を行なっていて怪しいところなんてひとつもないし。


「私はいつまでもこのままでも大丈夫ですよ?」


 ニッコリ笑顔で返される。


「や、遠慮しておきます」


 と、げっそりする私。

 相変わらず全力で人をからかってくるのはどうにかならないだろうか。

 なんだか心無しか身体が疲れてきたような気がするのだけれど。

 魔力を吸い取られているせいなのか、鬼畜とずっと手をつないだ状態だからなのかはわからない。


「大丈夫だ!魔力の回復する薬は完備だからな」


 ズラリと高価なポーションが並べられた棚をジャミルがニコニコ顔で披露する。


「わー、嬉しい。人を酷使する気満々ですねー」


「当たり前だろ。お前は旦那を何だと思ってるんだよ」


 真顔でジャミル。


「そうですね。マルク様ですものね」


 力強くうなずく私。


「……二人とも私への評価が若干酷いような気がしますが」


「何を言ってるんだ正当な評価だ」


「そうです。まごうことなき、正しい評価だと思います」


 私とジャミルがにっこり言えば


「いいでしょう。ではお二人には望みの対応を致しましょう」


「や、なんだかごめんなさい」


「申し訳ございませんでした」


 マルクの答えに私とジャミルの謝罪がかぶるのだった。



誤字脱字報告&ポイント&ブクマ本当にありがとうございました!!!


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