18話 威圧
「リンゼ、皆が貴方とマルクさんが親密な関係だと噂しているのですが
本当なのでしょうか?」
唐突にリシェルお嬢様が聞いてきた。
あれから何度かマルクさんと会合をし、人前ではマルクさんが私を好きだというアピールをしまくっている為に出た噂である。
「付き合ってはいません。一方的に慕われてるだけです」
私がピシャリと答えた。
ここで付き合ってると認めてしまうと、暗殺者ギルドが何か言ってくるかもしれないし。
セバスの前では嫌ですわー興味ないんですわーを全力アピールしてある。
今のところ暗殺者ギルドの方からは何も言ってこない。
「そ、そうですか」
言ってお嬢様が少しほっとした表情になった。
あ、辞めるの心配してくれてたのかも?少し嬉しいかもしれない。
にしても……、私はマルクさんが恥ずかしい愛のことばを囁きながらプレゼントしてくれたネックレスを見た。
もちろん本物の宝石ではなく魔道具だ。
マルクさんが調べた情報が一回表示され、それ以後は消えてしまう。
そして二度目からはマルクさんの悶絶するような愛の囁きが表示される。
恥ずかしくないのですか?
と聞いてみた所。
何を恥じる必要がありますか?
と、ビジネススマイルで返された。
ああいうところがやり手商人たる所以なのだろう。
一回しか表示されないため、もらった時に情報は頭に叩き込んでくださいね。
と鬼畜風に微笑まれて私はコクコクと頷いた。
そして分かったこと。
1.セバスの娘・息子とも自由に行動しているが怪しい人物が張り付いている
恐らくいつでも殺せるように暗殺者をつけている
2.リンゼの所属している暗殺ギルドは『飛翔の翼』。
どうやらジャミルが以前所属していた『紅蓮の炎』と手を組んでなにかやっているらしい。
3.紅蓮の炎と神殿の人物とのつながりがあるらしい。
そして一番の問題はマルクさんが頼んでいたところに、これ以上はこちらの命がやばいので調べるのは遠慮したいと言われてしまったとのこと。
作中ではあまり触れられなかったが『紅蓮の炎』は結構大手?の暗殺ギルドでそこと神殿が繋がってるとは大仰な事なので手を出したくないとのことなのだ。
これはあれだ。
小説の中ではないけれど。実働してくれる駒としてジャミル達を仲間に引き入れるべきなのだろう。
あとでマルクさんと相談しないとな。
ジャミル達のギルドを裏切るキャラの名前はダラス。
テキサスにある都市と同じ名前だったから憶えている。
これは交渉カードとして使えるだろう。
あとは交渉を上手くやればいいだけの話。
マルクさんが。
もちろん私は危ない橋は渡らない。
全部鬼畜に任せようと思う。
■□■
「なるほど。わかりました。
その人物と接触をはかりましょう」
お嬢様の衣装の打ち合わせで訪れたマルクさんの家で。
ジャミルの事を話せば、マルクさんはあっさりうなずいてくれた。
「自分で言うのもなんですけれど。
本当に信じていいのですか?
予知能力とか怪しい言葉を信じるのでしょうか?
暗殺者ギルドとか命懸けですよ?」
「もちろん、貴方の話が本当かは検証させていただきました。
リシェルお嬢様に以前プレゼントした宝石を憶えていますか?」
「あ、はい。
一瞬綺麗に輝いた宝石ですよね」
「あれは実は聖女かどうかを見極める魔道具です。
あの光なら間違いなくお嬢様は聖女でしょう」
マルクさんの言葉に私は思わず出されたお茶を落としそうになる。
「そ、そんな神官しか持っていないようなもの何でマルクさんが持っているんですか!?」
「聞きたいですか?」
にっこり微笑まれたので、こちらもにっこり微笑んで「知りたくないです」と答えた。
聞いてもろくなことにならない。
この人がこういう笑顔を浮かべるときは大抵よろしくない事をしているのは、最近なんとなくわかってきた。
「本来なら神殿にお嬢様の身を任せるのが一番安全ではあるはずなのですが。
調べた所神殿内部にも紅蓮の炎が接触している形跡があります。
ですから調査を依頼した団体もこれ以上は危ないと判断し手を引きました。
お嬢様を任せるのは危ないかもしれませんね」
「なるほど、ラクシル達ですね」
私が思わず口に出せば
「その話、まだお伺いしていませんが?」
と、物凄く顔を近づけられて威圧的な笑みで微笑まれるのだった。
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