14話 鬼畜認定
「この話は私以外にはしないでください。
病気を疑われます」
散々尋問されて。
マルクさんに言われた言葉がそれだった。
無理矢理全部吐けと剣つきつけて根ほり葉ほり自分で聞いておいてそれですか。
私はハハハと乾いた笑いを浮かべる。
本当は転生者などと話す気はなかったのだけれど。
指紋捜査なんて出来るなんてどこで知ったのでしょう?
他国でもそんな捜査方法は確立されていないはずですが?
と、突っ込まれて、結局いろいろ吐かされた。
鬼だ。こいつ鬼だ。
流石にこの世界が素人のweb小説のだとは言えなかったけれど。
一応断片的に未来が見える転生者という話でおちついた。
「ではその異世界の力で予知能力があると?」
「はい。そうなります」
「しかし、異世界人の召喚は神話などで聞いたことがありますが……。
魂が入れ替わるなど聞いたこともありません」
「私だって知りたいですよ。
いきなり知らない人間の体にはいっちゃったんですから」
マルクさんに解放されて、私はご機嫌斜めを隠さず答える。
「失礼いたしました」
先ほどとは違い急に紳士の振る舞いになるマルクさん。
しかし今更遅い。
さっき本気で怖かったのだから。
マルクさんが信じてくれたのは理由がある。
この世界、魔力量は生まれた時から決まっている。
マルクさんは使用人全ての魔道具を頼まれた事がありリンゼの魔力量も測定したので知っていた。
そして本当に魂が違うなら魔力量を測定できますよね?
と、凄まれ測定したところ。
魔力量が私の方があきらかに多かった。
マルクさんが言葉を失うくらいなのだからかなり高かったのだろう。
転生特典とかいうやつだろうか。ここは純粋に嬉しい。
そしてやっと話をまともに聞いてもらえるようになったのだ。
急に態度をかえたところで中身鬼畜なのはもうバレている。
私の中でこの人はもう鬼畜商人だ。
「しかし執事のセバス様がですか……。
人事権を握る彼が既に裏切っているとなるとかなりの数の密偵が公爵家に紛れ混んでいると考えるべきですが……。
ですが貴方の薬の補充などを彼自身がやっていた所を考えると、それほど人数はいないと見るべきところか迷うところですね」
言って考え込む。
確かに。
何人もすでに公爵家に紛れ混んでいるならセバス以外が薬の補充をやったほうが足がつきにくいだろう。
私もまさかそんな重要人物がリスクをおかして薬の補充をしてるとは思わなかった。
「私もセバスの家族など調査してみます。
彼は長く公爵家に仕えていた忠臣です。
裏切っているとなるとそれなりの理由とそれなりのバックがいるとみるべきでしょう」
「例えば神殿とか国とかですか?」
「そうですね。
もしくは貴方がグエン様とお嬢様に飲ませている麻薬効果のある薬とやらで薬漬けにされて逆らえないか……」
「とにかく、一度私は帰ります。
そろそろお嬢様の授業が終わる時間です。
私もあまり外出していると疑われますから。
詳しいお話はまた後ほど」
言って私が立ち上がれば
「はい。申し訳ありませんでした。
……ああ、それと。
貴方の魔力量は異常な量です。
くれぐれも人前で魔力を測ることのないように」
と鬼畜マルクに念を押されてしまうのだった。
誤字脱字報告&ポイント&ブクマ本当にありがとうございました!
本編ではマルクは敵側貴族の買収(借金づけにして逆らえなくする)やら主要都市の商家を抑えるやら公爵家の密偵洗いざらいあぶり出すなど裏方で活躍してたはずなのですが、恋愛関係なかったのと単なるマルク無双になってしまうのでカットされましたorz
リシェルにはリンゼの詳細を伝えなかったというのも大きいです(本編だとセバスとかの裏切りは知りません