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クマの人形である

「ふんふーん。ふんふーん」


「おやおや。ご機嫌ですな、お嬢様」


「あ、爺や! 見て見て! ママとパパからもらったの!」


「これはこれは、素敵なお友達でございますな。お名前はなんと仰られるのですか?」


「この子はね、フレディ! クマのフレディよ! フレディ、この人は爺や。挨拶してちょうだい?」


お初にお目にかかる、御仁よ。我が名はフレディ。主より立派な名を授かった、クマの人形である。


「ほっほっほ。私のことは気軽に爺とお申し付けくだされ、フレディ様。さて、お嬢様? お友達と遊ぶのは大変よろしいことですが、お勉強の方はお済みでございますか?」


「うっ......あ、あと少しだから......


主よ。我も主とは思う存分遊びたいが、主が怒られる姿は見たくない。我のことは放っておいて、勉学に励むといい。


「お嬢様?」


「い、今から終わらせてくる!!」


「全く......お嬢様には大変困ったものです。いずれはご主人様の跡を継いでもらわねばならないというのに」


爺殿も大変であるな。


「フレディ様、どうか、どうかお嬢様のことをよろしくお願いしますぞ」


任されよう。


「さて、私も仕事に戻らねばなりませぬ。フレディ様、お嬢様が戻られるまで、この椅子にお座り下さい」







『我が名はフレディ。主より立派な名を授かった、クマの人形である。元より名前もないただのクマの人形であったが、名を授かるのは悪くない。我が主の元に馳せ参じたのは、主が我とそう変わらない背丈の時だ。我はそこそこに大きい人形であってな......ふっ、小さくなれればと常に神に祈っていたものだ。主はその頃大変忙しそうに勉学に励んでいたのを覚えている。ご当主の跡を継ぐために、だとか。我としては1人の女の子らしい遊びを、考えをして欲しかったものだが......何分クマの人形である。喋れはしない。できたところで怪しいであるからな。そんな主と我であったが、主が我の背丈をとうに追い越し、主の背丈に半分届くかどうかの頃合だった』







「ねぇ、フレディ。あなたは約束を守れる?」


もちろんである。我は主のもの。主がそう思うのであれば、我はそれに応えるのみ。


「私、今日告白されちゃったんだ......」


......今......今なんと?


「同じクラスの男の子なんだけどね? 顔は......うーん、パパの方が好きだけど、ちょっとした時に見せるあの顔とか、みんなに優しいところとか、前からいいなぁって思ってたの」


主よ......ご当主にはまだか? まだだと言って欲しい......!


「で、パパとママにクラスにこんな子がいるんだよって、私ちょっと気になるなーって言ったら、ママは喜んでくれたんだけど、パパったら持ってたコップ落としちゃったの! パパったらおっちょこちょいなのよ」


あぁ......遅かったか......


「そしたらパパ、その子のことずっと聞いてくるんだもん。私は、嫌になっちゃったから、『そんなに聞いてくるならその子のパパになったら?』って言っちゃったの......そしたら、パパ部屋にこもっちゃって......ママは謝ったら許してくれるって言ってるけど......どうしたらいいかな」


主......


「それが昨日あったことで、今日告白されたんだけど、返事出来なくて......今待ってもらってるんだ......どうしたらいいかな、フレディ」







『あの時、我は何故クマの人形なのだろうか。主の助けになぜなることができないのか。我を恨んだ。結局のところ、ご当主にはその後謝られておられた。が、次の日にはご当主がきてな......』


「おんおんおんおん......おーんおんおんおん......フレディ! あの子に......あの子に!! 彼氏なんて出来ちまったよ!!!!! おーんおんおんおん......」


ご当主よ、大の大人が人形に泣きつくのはみっともないのである。


「俺は......俺はどうすりゃいいんだ! そりゃ、あの子が幸せならそれでいい......だけど! どこの馬の骨ともわからん男に渡したくはない!! けど、ママが怖いし......俺にはフレディしかいねぇんだ!!!」


諦めた方がいいと思うが......


「おーんおんおんおん......おーんおんおんおん......」


......後で乾かしてもらうとするか。






『と、まぁ、盛大に泣崩れていた。おかげで我の腹の辺りが湿ってしまってな。主に怒られて小さくなっていたのを覚えている。この頃は楽しかった。まだ、この頃は......な?』






「フレディ! フレディ!!」


「お嬢様! フレディ様はこちらに!」


「あぁ、フレディ! 無事でよかった......」


主? これは一体......


「お嬢様、フレディ様。ここは私に任せて、ここからお逃げ下さい」


「でも爺や!」


「ご当主も奥方様も、お嬢様の為に戦ってらっしゃいます。お嬢様が生き残ることが、御二方、そして私の願いでございます」


爺殿......


「私は......ううん、私も残るわ」


「お嬢様......お戯れはおよし下さい」


「いいえ、事の発端は私にあります。ならば時期当主として、ケジメは付けなくてはなりません」


「私がこれほど言ってもですか?」


「例え、お父様とお母様に縁を切られることになっても」


主の意思は固いようだぞ、爺殿?


「お嬢様......わかりました。ならばこの爺、例え命に変えてもお嬢様をお守りしましょうぞ」


「ふふ、お願いするわ。あなたは......どうする、フレディ?」


主よ、我が主を置いてどこかへ行くなど有り得ぬ事だ。


「そうね、あなたが一緒なら心強いわ。私と一緒に戦ってくださる?」







『その後の結果は、勇者。お前が、一番よく知っていることだろう? 我はあの時のクマの人形である。全てを、主の全てを見届けてきた。この結果になったのも、全てはお前が、お前たち人間が悪いのだよ』


「あら、フレディ。そこまでにしなさいな。私の分がなくなってしまうでしょう?」


『主よ、この男には死より惨い目に合わせねば、主の元には出せぬ。それだけは、それだけは譲れぬ』


「ふふ、仕方のない子ね。いいわ、存分に遊んであげなさい」





我はフレディ。クマの人形である。


我はフレディ。我の背丈は主の背丈が我に半分どころか腰に届くかどうか。


我はただのクマの人形ではない。主の忠実な友である。


我はフレディ。魔王様の第1の部下である。

ここまでお読みくださいましてありがとうございます。


予想通りの方はおめでとうございます。

予想外の方はそういうことです。


私も最初はそういうことにしようかと思いましたが、在り来りかなと思い、この結果に。

これはこれでいいかな?


ということで、連載ものです。

と言っても、世界が魔王のものになってしまうというテーマの元、色んな話をくっつけていく形になりますが。


思いついた時にまた書こうかと思いますので、気長にお待ちいただければ、と思います。


それではまた次回。

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