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創作世界  作者: 金日
9/39

008 鼠

タンタンタン(チースとニーとカイが帰り道を歩く)


チース「かぁあああっ、疲れたぜぇえええ!!」


カイ「いやめっちゃ声出てるけど…。ああしてみんなで遊ぶのって、そういえば久しぶりだったよね、楽しかった」


ニー「最近は個人個人が忙しかったり、集まっても黒い影に関する報告会ばかりだったからね…」


ニー「私たちも、漸く引越し作業が終わったことだし、これからはまた小さい頃みたいに、八人で遊べる機会が増えるといいな」


チース「八人だけじゃねぇ!!ミナミちゃんやヒッシャともだ!!」


ニー「そうだね。コンクールが終わったら、ルイコも呼ぼう」


カイ「十一人かあ…。それだけいたらサッカーのチームが組めるよ」


チース「フォワードは間違いなく、ミナミちゃんとヒッシャだな!!」


ニー「二人の運動能力は凄まじいからね。今日、二人がエアホッケー対決をした時も凄かった…」


カイ「ヒッシャの方は、原作の書の力で幾らでもドーピングできるとして。それに息も切らさず付いていけるミナミって、一体どんな運動神経してるんだろう…?」


(カイが首を傾げる)




チース「…まさかミナミちゃんは、実はこの星の人間じゃねぇとか!?」




ニー「ッ」


カイ「…え。何でそうなるの」


チース「だってよ、この星で創造主より上の存在っつったら、全てにおいて一番になることが確定している、未来のオレ以外にいねぇだろ!?」


チース「もし仮に、オレ以外にヒッシャを超えるヤツがいるとすれば、ソイツはこの星の人間じゃねぇに決まってんだ!!」


ドオオオン(チースが踏ん反り返る)




ニー「……」


カイ「…何を言ってるのこの人?」


ニー「…この星の中で、ヒッシャを超える人間はオレだけだ、ってことじゃないかな」


カイ「翻訳ありがとう」


チース「その証拠に、同じ宇宙人のカイだって、オレらとは桁違いのパワーを持ってるだろ!?」


カイ「まあね。ボクはまずホッケー台に身長が届かないし、サッカーに加わればものの数分で蹴られる側に…、ってこらー!」


チース「ま、ミナミちゃんが宇宙人だったとしても、オレがミナミちゃんを好きなことに変わりはねぇけどな!!」


チース「愛さえあれば、人種の差なんて関係ねぇんだよ…」


ファサア(チースが自身の短髪を搔き上げる)


ニー「その台詞が言いたかったんだね…」


カイ「っていうか、仮にミナミが宇宙人だったとしても、彼女がどうやってこの星にやってきたかの説明がつかないよ」


カイ「ヒッシャ曰く、少なくともここ数十年の間で宇宙船がやってきたのって、六年前、ボクが墜落してきた時の一回だけらしいよ?」


チース「チッチッチッ、そもそも前提が間違ってるぜ、カイ」




チース「あのミナミちゃんに、宇宙船が必要だと思うか?」




カイ「は」


チース「そう!!ミナミちゃんが宇宙を漂うのに、船なんてモンは必要ねぇんだ!!」


チース「きっと船どころか宇宙服すら着用せず、単身でこの星に降り立ってきたに違いねぇ!!」


チース「雲を開き天からヒュゥウウウっと地上に姿を現す様は、正にこの世界のヴァルキュリア!!すげぇよミナミちゃん、マジで愛し




ヒュウウウ




チース「て…」


ピタ(チースが歩みを止める)




ニー「……?どうしたのチース、急に固まっちゃって」


チース「……」


カイ「ついにショートした?」


チース「…いや、何か聞こえてこねぇ?」


カイ「え?」


チース「ほら、ヒュゥウウウって音が」


ヒュウウウ


ニー「…あ、確かに。耳を澄ませば聞こえるね」


カイ「ボクにも聞こえる…」


チース「だろ?」


ヒュウウウウウ


ニー「少しずつ、音程が下がってる…?」


カイ「音量は、だんだん大きくなってる気がするよ。飛行機でも飛んでいるのかな?」


チース「お前ら、オレの話を聞いてたか?ヒュゥウウウっつったら、一つしかねぇだろうが」




チース「落下音だよ」


ニー「らっ…」


(三人が空を見上げる)




ズドオオオオオン(三人から数メートル離れた道路に何かが落下する)




カイ「わっ!?」


ニー「きゃあ!!」


チース「うぉおおお!!」


ゴオ(突風と砂煙が三人を覆う)




シュウウウ(周囲の砂煙が薄れる)


ニー「ケホッ、ケホッ…。な、何だったの、今の…」


カイ「何かが、空から落ちてきたみたいだけど…」


(カイが顔面を覆っていた手を退ける)


(カイが落下地点に目を向ける)


カイ「あれは…、クレーター?」


(道路に大きな凹みができている)


チース「すげぇすげぇ!!クレーターなんて初めて見たぜ!!」


タッ(チースがクレーターに向かって駆け出す)


ニー「ちょっ…、待ちなさいチース!!」




タン(チースがクレーターを覗き込む)


チース「うぉ…。結構深いな…」


シュウウウ(クレーター内に砂煙が立ち込めている)


チース「落ちてきたっつうが、何が落ちてきやがったんだ?」


チース「…ん?」


ユラ(砂煙の中で何かが蠢く)


???「ピピピ…」


チース「…今、何か…」




ビュッ(何かが砂煙の中から飛び出す)


チース「ぬぉ!?」




ドンッ(何かが道路に降り立つ)


???「ピピピ…」


ピピピ(何かが電子音を発している)




チース「こ、コイツ…」


ニー「チース!」


タン(ニーとカイがチースの元へ駆け寄る)


ニー「全く、危ないでしょ!クレーターに落ちたらどうするの!?」


チース「落ちねぇよ!!ガキじゃあるめぇし!!」


カイ「今、何か中から出てきたよね…?一体どうしたの…」


???「ピピピ…、俺は…」


(三人が声のした方を向く)




ピピピ(黄色い鼠型のロボットが立っている)


???「俺は…、黒い影…」




カイ「…い、今の、聞こえた…?」


ニー「聞こえた…。確かに、黒い影って…」


カイ「落ちてきたのって、あいつ…?じゃあ、他の影と同様、ボクたちの持ってるリングを狙っているってこと?」


黒い影「遂に、遂にこの時が来た…」


黒い影「どれほど待ち焦がれたことか。奴への復讐を果たす、この日を…」


ピピピ(黒い影がチースたちに顔を向ける)


黒い影「ピピピ…、貴様らは、チース、ニー、カイ、だな」


チース「そうだ!!」


ニー「ちょ、ちょっとチース…」


黒い影「貴様らの中の、誰でも、全員でも構わない。今から俺に付いてこい」


カイ「え、付いていくって…」


ダン(チースが一歩前に出る)


チース「お断りだ!!誰がてめぇの命令になんか従ってやっかよ!!」


ニー「チース!変に煽るような発言はやめなさい!」


ニー「影さんも、どうか今日は勘弁して下さい…。夕方のチャイムはとっくに鳴り終わっていますし、これから夕飯の支度を…」


黒い影「誰も付いてきたくなければ、それでも構わない。ただし、」




黒い影「この区域一帯は、焦土と化すがな」




ニー「ッ!!」


チース「何だと!?」


黒い影「俺が貴様らに与えているのは、選択肢じゃない。猶予だ」


黒い影「もし今俺に従えば、その後俺に殺されるまでの数分間、従わない場合よりも長く生き延びられる、それだけの話」


ニー「何、言って…」


バチバチ(黒い影の周囲に電気が発生する)


パリンッ(影の近くにあった街灯が音を立てて割れる)


ニー「きゃあ!」


黒い影「周囲にこれ以上の被害を出さないためにも、貴様らが取るべき行動は二つに一つだが」


黒い影「さて、どうする」


ピピピ(影の無機質な目が三人を映している)




チース「てめぇ…、散々このオレをコケにしやがって…」


チース「いいだろう!!最近お飯事にも飽きはじめていたところだ、受けて立ってやる!!」


カイ「ち、チース…!」


黒い影「賢明だな。付いてこい」


キュラキュラ(影がキャタピラを回し移動を始める)


チース「ぶっ壊してやる…!!」


ダッ(チースが影を追う)




カイ「待って、チース!くそっ、やっぱり嫌な予感が的中した…!」


ニー「嫌な予感…?」


ニー「まさかカイ、昨日から私たちと一緒の帰り道を歩いていたのって、こうなる可能性を見越して…」


カイ「確信までは、持てていなかったけどね…」


タン(カイが割れた街灯へ近づく)


カイ「先日、近所のおばちゃんたちが、最近周辺区域を彷徨いてるらしい、怪しい黒づくめの人影について話していたんだ」


ニー「黒づくめ…。黒い影のこと?」


カイ「多分ね。けど、影がボクたち以外の人前に姿を現すことって、今まで一度もなかったじゃん?」


カイ「そんな彼らが、噂にされるほど街中に出没しているのは、今までの影の出現法則とはかけ離れていて、なんだかおかしいなって」


カイ「そして一度発生した以上、影のイレギュラーな部分は、今度は、ボクたちの目の前に形として現れるかもしれない」


カイ「そう思って、街中を歩くときは、可能な限り二人と行動を共にすることにしたんだ」


カイ「まさか、そう決意した二日目にして、こんな突然に現れるとは、思ってもみなかったけれど」


ニー「イレギュラー…」


(ニーが二人の去った方向を見つめる)


ニー「全身真っ黒じゃない、黄ばんだメカボディ。夕方のチャイムが鳴ったのに、一向に帰らない性質」


ニー「そして、私たちに向けてくる、明確な殺意…」


(ニーが道端に落ちている街灯のガラス片を拾い上げる)


ニー「確かに今までの影とは、明らかに別物…。じゃあ、その目的もリングじゃなくて、何か別の…?」


カイ「分からない…。けれど何にしても、このままチースを一人で影の元へ行かせるのは、ものすごく危険だと思う」


カイ「とりあえず今は、急いで二人の後を追おう!」


ニー「わ、分かった!」


ダッ(ニーとカイが走り出す)




ーーーーーーーーーー




キュラキュラ(黒い影がひと気のない住宅街を走る)


黒い影「ピピピ…、この辺りでいいだろう」


キッ(影がキャタピラを止める)




タッ(チースが影に続き足を止める)


チース「…おい、どうしたんだよ?こんな道の途中で止まりやがって」


チース「まさか、道中で怖気付いたんで、今日はもう見逃してください、とか言わねぇよなぁ?」


(チースが挑発的な笑みを浮かべる)


黒い影「ピピピ…、戯言も大概にしろ」


黒い影「俺たちは今から、ここで戦闘を行う。それだけだ」


チース「は?ここって…」


(チースが辺りを見渡す)




(二人の周囲に住宅が建ち並んでいる)




チース「…ふざけんな!!こんな住宅街のど真ん中で、ガチのドンパチなんかやってみやがれ!!」


チース「近隣住民がピーピー喚きだして、面倒くせぇだろうが!!」


黒い影「…"安心しろ。この住宅街は、現在の創造主が開発途中にある、市街地拡大計画の対象区域だ"」


黒い影「"家宅や道路等は、全て形骸にすぎん。本来立入を創造主によって制限された場所ゆえ、案ずることなく曲芸に励むがいい"」


ピピピ


チース「…よく分かんねぇけど、要するにうるせぇヤツらは一人もいねぇってことか?なら構わねぇぜ!!」


チース「つぅか、さっきから何読んでんだ?」


ピピピ(影が一枚の紙をアームに持っている)


黒い影「…今の台詞を、指定箇所へ到着後、戦闘開始前に読み上げるよう言われているんでな」


チース「は?」


黒い影「この紙は、今回の陽動作戦について、手順を現在の俺の主が考案し、その概要を書き記したものだ」


ジュ(紙が一瞬にして焦げ灰と化す)


チース「てめぇの主、だと…」


黒い影「そうだ」


ピピピ(影の目の光が点滅する)




黒い影「…主と聞いて、貴様が何か思い起こすものはないか」


チース「何…?」




カイ「チースー!!」


タッ(カイとニーがチースの側に駆け寄る)


ニー「大丈夫、怪我はない!?」


チース「まだ何もされてねぇよ…。コイツさっきから、変なことばっか言いやがる」


カイ「変なこと?」


(ニーとカイが影の方を見る)


黒い影「ピピピ…、貴様らも、ここまで何も思い出す気配がない、か…」


黒い影「まあいい。これで嫌が応にも、全てを察するだろう」




バッ(黒い影がアームを広げる)




黒い影「よく聞け!!そして見るがいい、この俺のボディを!!」


黒い影「黄色い身体に赤いほっぺ!!電気を操る鼠と聞けば、知らぬ者はいまい!!」


黒い影「そう!!黒い影とは、貴様らを誘き寄せるため、主より与えられた仮初の名前」


黒い影「この世界に復讐を果たすべく、没設定の海より器を有し舞い戻った存在!!」


黒い影「その真の名は、」




黒い影「ピッ、"ピ◯チュウ"!!」


チュドオオオン(ピ◯チュウの体に雷が落ちる)




ピ◯チュウ「ピピピ…、何故俺がここに、一体何の目的で…。そんな疑問が今、貴様らの脳内を渦巻いているに違いない」


ピ◯チュウ「本来ならば、数分後に命を落とす貴様らへ、それを聞かせる道理はないが…。俺は情け深いからな、せめてもの冥土の土産として、特別に教えてやろう」


ピ◯チュウ「ありがたく頂戴するがいい。俺の目的、それは…」




ピ◯チュウ「…ん?」




ポケエ(チースたちがピ◯チュウを眺めている)




ピ◯チュウ「…何だ貴様ら、その顔は」


ピ◯チュウ「まるで母親から昔の学友の名を挙げられた際に、いまいちピンと来なかった時のような間抜け面…」


ピ◯チュウ「全く記憶に無い自称友人に、街中で突然声を掛けられた時のごとく、胡乱な目つき…」


ピ◯チュウ「…まさか、貴様ら…」


ニー「…ごめんなさい…」




ニー「あの、どなたですか…?」




ピ◯チュウ「……」


ピ(ピ◯チュウが硬直する)




ニー「え、えっと…。二人は彼のこと、知ってる?」


チース「知らね」


カイ「全然」


ニー「だよね…。えっと、ピ…、チュウさん?」


ピ◯チュウ「ピ◯チュウだ!!さん付けして距離をとるな!!」


カイ「人違いでは?」


ピ◯チュウ「貴様ら全員分の名前を把握しておいて、人違いなわけねえだろ!!」


チース「だよな」


ピ◯チュウ「マジかよ!?貴様らサトシの友人でありながら、あいつの本来のパートナーを覚えてねえのかよ!?」


ピ◯チュウ「覚えてねえっつうか、知らねえのか!?うっそだろ仮にもヒッシャオリジナルと呼ばれるこいつらがそんなことも知らねえとか」


ピ◯チュウ「けどそうだよな俺この世界じゃただの没キャラだもんなとはいえ認知すらされてねえとは思いもせず多大な精神的ショックがぐわあああ」


ガシャンガシャン(ピ◯チュウが電柱に自身の頭部をぶつける)




ニー「大丈夫かなあの人…」


カイ「…サトシと関係がある、黄色い鼠…。…もしかして」


チース「お、何か思い出したのか、カイ!?」


カイ「どうだろう…。断片的に、雑誌で見たことがあるだけなんだけど、」


カイ「確か、現実世界に存在するサトシってキャラのパートナーが、そんな感じだったような…」


ガシャンガシャン(カイがピ◯チュウを観察する)


チース「現実世界だと?」


カイ「うん…」




カイ「ほら、この世界って、ヒッシャの想像や脳内妄想を元に、創り出された世界じゃん?」


カイ「だから、ヒッシャが住む元の世界、つまり現実世界の文化や流行りの影響を、創造時、もろに受けるんだよ」


カイ「例えば、今ボクたちが使ってる世界共通の言葉だって、現実世界にあるヒッシャの出身国で使われている言語を、丸々こっちに転用したものだし」


カイ「道路とか信号とか建築物とかも、ヒッシャが一から図案を考えたんじゃなくて、彼が現実世界で見た同様のものを、イメージとしてパクってきただけ」


カイ「この世界のあらゆる概念は、現実世界に存在する同名の諸々がなければ確立できなかったと言っても、過言じゃないんだ」


(カイが周辺の住宅を眺める)


カイ「それで、現実世界のパクリスペクトは、物事や現象だけじゃなく、人をはじめとした生き物にも及ぶことがあって、」


カイ「その際たる例が、サトシと、ヒカリと、タケシなんだって」




ニー「つまりサトシたちは、ヒッシャに創られる際、その元となるキャラクターが、現実世界に存在していたってこと?」


カイ「だと思う。もしかしたらヒッシャの手によって、性格や言動が、元より多少異なっているかもしれないけれど」


カイ「現実世界のサトシは、国民的アニメの主人公の名前だったはずだよ。タイトルは確か、ポケットモン


ピ◯チュウ「そうだ!!現実世界におけるピ◯チュウとは、サトシの相棒にして、アニメ内の代表的マスコットキャラクター!!」


ピ◯チュウ「その人気は老若男女問わず、ぬいぐるみやストラップ、饅頭にヌードルといったグッズが多く作られ、飛ぶように売れるほど!!」


ピ◯チュウ「そしてそんな金のなる鼠を元に、この世界へと創り出された俺、ピ◯チュウ!!」


ピ◯チュウ「超人気マスコットとしての地位はこの世界でも揺らぐことなく、世界中の人民共から俺という存在がチヤホヤされるムホホな未来は、最早約束されたも同然だった…」




ピ◯チュウ「だのに!!」


チュドオオオン(再びピ◯チュウの身体に雷が落ちる)




ピ◯チュウ「あの糞創造野郎!!六年前、いざ"ヒッシャオリジナル"を創造する段階まで来たところで唐突に、」


ピ◯チュウ「"別に、この面子に人外二人も要らなくね?"とかいうふざけた理由で、メンバーからこの俺を除外しやがったんだ!!」


チース「ヒッシャオリジナルって、何だ?」


カイ「この世界で初めて、ヒッシャに直接創られた人間のこと。つまりボクたち八人を、世間ではそう呼んでいるんだって」


ニー「えっ…。じゃあ本来なら、私たち、サトシたち、コウタたちに、あの黄色い機械


ピ◯チュウ「ピ◯チュウだ!!」


ニー「を加えた九人が、その、ヒッシャオリジナル?になる予定だったってこと?」


カイ「あの黄ばんだ鼠


ピ◯チュウ「ピ◯チュウだ!!」


カイ「の言い分を信じるなら、そういうことになるね」


ピ◯チュウ「つうか何で、よりによってリストから外すのが俺なんだよ!!リストの中にサトシがいたのなら、そこにピ◯チュウの付随は絶対だろ!!」


ピ◯チュウ「ヒカリとかタケシとか、どう考えてもシーズン変われば降板になるだろ!!実際既になってるしよ!!」


ピ◯チュウ「人外の選定についても、まず前提の"二人も要らなくね?"ってのが突飛すぎて意味分かんねえし、審査の結果何で俺が落ちるんだよ!!」


ピ◯チュウ「いくらカイがあいつのオリジナルデザインキャラだからとはいえ、評価点に贔屓目を全振りしすぎだろ!!つか三十秒で考えただろあいつのデザイン!!」


カイ「何かすごい貶されてるんだけど」


ニー「溜め込んだ恨みの量が、半端じゃないね…」


チース「…要するに、てめぇの目的っつぅのは」




ピタ(ピ◯チュウの動きが止まる)


ピ◯チュウ「…ああ、そうだ」


ピ◯チュウ「俺の目的。それは、」




ピ◯チュウ「ヒッシャオリジナル、そして創造主に、復讐すること」




ピ◯チュウ「創造主の手により没キャラとなった俺は、中途半端にキャラクター構想だけ残され保留、つまり放置を食らった」


ピ◯チュウ「その所為で、肉体が存在せず魂のみが取り残され、亡霊同然にこの世を彷徨い続ける羽目となったのだ」


ピ◯チュウ「主よりこの器を授かるまでの六年間、俺が溜めに溜め続けた怨嗟の念は、俺自身含む誰にも計り知れん」


ピ◯チュウ「今こそ、貴様らの命をこの手で葬り去ることによって、今までの雪辱を晴らしてくれよう!!」


チュドオオオン(ピ◯チュウの身体に雷が落ちる)




カイ「…なんていうか、単に攻撃的なだけかと思ったら、けっこう複雑な事情が絡んでいたんだね」


カイ「もしかしたらボクたち八人に加わって、それかボクに代わって、この街で、何気ない日常を過ごしていたかもしれない…」


ニー「ほんの少し運命が違っていただけで、六年間、ずっと苦しい思いをしていたんだ…」


ニー「私たち、今までそのことに気づきもしなかった…」


ピピピ(ニーがピ◯チュウを見つめる)


ニー「…貴方のその六年を、私たちが取り返してあげることはできないけど…」


ニー「それなら、それこそ戦うんじゃなく…。話し合って、今までの分を一緒に過ごして、」


タン(ニーがピ◯チュウに歩み寄る)


ニー「これからは、九人で笑顔に…」




チース「死ね、"アイスメーカー"!!」




ピキイイイン(ピ◯チュウの体が一瞬にして凍りつく)




カイ「ちょ…」


チース「馬鹿め!!今はゲームのムービーシーンじゃねぇんだぜ!!」


チース「テメェが無意味な自分語りをしている間、オレはずぅっとリングに力を込めていたんだ!!」


チース「これぞ戦略勝ちってな、ガッハッハ!!」


ガハガハ(チースが高笑いをする)




ニー「チース!?あんた、何してるのよ!!」


チース「それはコッチの台詞だぜ、バカな真似しやがって、クソ姉が!!」


ギロ(チースがニーを睨む)


チース「戦うんじゃなく、話し合って?あの機械野郎、自分が何年間あの世を彷徨ってたっつってたよ」


チース「六年だぜ六年!?例えるなら、ガキが生まれてから、そいつが小学校に上がるまでの間だ」


チース「そんだけもの長期間、恨みつらみを重ねていたようなヤツが、いざ妬み相手と対面して、相手の言葉でコロッと改心、なんてことになるはずねぇだろうが!!」


ニー「そんなの、ただの決めつけじゃない!それに、その場で改心してほしいなんて思ってない!」


ニー「今はまだ、たとえ彼に恨まれたままでも構わない…。無知は罪、十字架を背負う責務は、私たちにだってあるんだから…!」


チース「そんな、いつ背後から刺されるかも分からねぇモン、背負ってられっかよ!!」


ニー「じゃあ、その気持ちはどうなるの!?誰にもぶつけられず、誰からも気づかれなかった、彼の積年の思いは…」


チース「チッ…」


(チースがニーから目を逸らす)




チース「…死に損ないの考えなんざ、いちいち慮るのも面倒くせぇ」


ニー「あんた…!」


カイ「あの、ちょっといいかな」


クイクイ(カイがチースのズボンを引っ張る)


チース「…んだよ、カイ」


カイ「兄弟喧嘩中にごめんね。気の所為だったら悪いんだけど」


ニー「…何が?」


カイ「いや、ボクね、さっきからあの氷を見てたんだけどさ」


(カイが氷漬けのピ◯チュウを指差す)




カイ「なんか、ヒビ入ってない?」




ニー「え…」




パリイイイン(氷が砕け散る)




(氷片がニーたちの服や皮膚を切り裂く)


ニー「い…ッ!」


カイ「ッ…」


チース「は…!?な、何でだよ、オレは何もしてねぇぞ!?」


???「ピピピ…」




シュウウウ(蒸気の中からピ◯チュウが姿を現す)




チース「てめ…!!何で、アレを食らって生きていやがる!?」


ピ◯チュウ「ピピピ…、今のは貴様の能力か。まさか本気で思っていたのか?」




ピ◯チュウ「この程度の力で、俺を殺せると」


チース「んだと…!!」




ピ◯チュウ「ピピピ…、リングの力を使い、指定した地点に氷柱を発生させる能力といったところか」


ピ◯チュウ「盾や台座といった用途の他に、座標上に障害物があれば、そいつを氷漬けにすることもできる」


ピ◯チュウ「氷柱に囚われた対象は、碌に身動きも取れないまま、肉に氷が張りつく痛みと、身体の芯が急速に冷えていく感覚に襲われ、絶命」


ピ◯チュウ「仮に抜け出せたとしても、一度氷に覆われた時点で凍傷は免れない…。なるほど、貴様らしい、生き物の命を命とも思わない能力だな」


ピ◯チュウ「だがそれは、対象が有機体であった場合の話。機械の器を持つ俺にとっては、温度の低下など問題ですらない」


ピ◯チュウ「内部に搭載されたオーバーヒート機能を稼働させることで、行動不能状態の解除も容易だ」


ピ◯チュウ「尤も、あの程度の氷には、わざわざ機体負荷と数十秒の時間を掛ける必要もないがな」




チース「…ッ、"アイスメーカー"!!」


ピキイイイン(ピ◯チュウの体が再び凍りつく)




ピ◯チュウ「"1◯万ボルト"!!」




チュドオオオン(ピ◯チュウの体に雷が落ちる)


パリイイイン(氷が砕け散る)




チース「な…」


ピ◯チュウ「言っただろう。必要もないと」




カイ「まさか、チースの氷が、こんな簡単に跳ね除けられるなんて…」


チース「…ッ、クソ…!!」


ダッ(チースがピ◯チュウに向かって走り出す)


ニー「チース!?何やって…!!」


チース「鏡の世界を救ったオレの力が、こんな雑魚に効かねぇはずがねぇ!!」


チース「リングが使えねぇってんなら、肉弾でぶっ殺してやる…!!」


ピ◯チュウ「ピピピ…、馬鹿は死ななきゃ何とやら、か」


ピ◯チュウ「いいだろう。ならば、本当の能力というものを見せてやる」


ジジジ(ピカチュウが電気を纏いはじめる)


カイ「…ッ、アレ、やば…」


ニー「いけない!!チース逃げて!!」


チース「ッ、」


ザッ(チースが足を止める)


ピ◯チュウ「ピピピ…、もう遅い」


ガコッ(ピ◯チュウの口が開く)




ピ◯チュウ「"100万ボルト"!!」


カッ(ピ◯チュウの口から光線が放たれる)




チース「ッ、"アイスシールド"!!」


ピキイイイン(チースの周囲を氷の球体が包む)




ジュッ(シールドが光線に触れた瞬間焼き消える)




チース「え…」


ピ◯チュウ「本当に、直らないな」




チュドオオオン

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