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創作世界  作者: 金日
6/39

005 学友

チュンチュン(少年少女が学校の門を潜る)




ガヤガヤ(教室内で生徒たちが駄弁っている)




ガラガラ(教室の扉が開く)


カイ「あっ、チースとニー、おはよう!」


ニー「おはよう、カイ」


チース「ムニャ…」


タンタン(ニーとチースが教室に入る)


チース「…ねみぃ…。学校だりぃ…」


カイ「チースの方は、今日は一段とおネムだね」


ニー「昨日は夜遅くまで、チャンバラの特訓なんてしていたから…」


チース「つぅかよぉ、黒い影が出現した翌日は学校休みになれってんだよ…。不審者出現してんだぞおぃいいい…」


ドサ(チースが自身の席に座る)


カイ「だって黒い影のこと、この街じゃ創造主とボクたち八人以外は誰も知らないし」


チース「何でだよぉおおお、認知しろよぉおおお」


ビタン(チースが机に突っ伏す)


ニー「無関係な人を巻き込んだところで、かえって街の混乱を招くだけだからね」


ニー「創造主からもきつく念押しされてるでしょ?諦めなさい」


チース「オレらん所はともかく、サトシん所の影とかクッソ凶暴なんじゃねぇのかよぉおおお」


チース「ねみぃよぉおおおだりぃよぉおおお」


ビタンビタン(チースが机を両手で叩く)


カイ「ほら、駄々を捏ねてないで早く席に…」




ガラガラ(教室の扉が開く)


カイ「…あ、ルイコとミナミ。おはよう」


チース「!!」




ベレー帽を被った少女ルイコ「おはようございます、皆さん」


三つ編みの少女ミナミ「おーっす、おはようさーん」


タンタン(ルイコとミナミが教室に入る)


ニー「おはよう、二人と


チース「ミナミちゃぁあああん!!おはよぉおおおおお」


ドドドドド(チースがミナミに駆け寄る)


ミナミ「おはよ。相変わらず元気やな自分」


ニー「さっきまでの省エネモードが噓のように…」


チース「ったりめぇだろうが!!一度ミナミちゃんに声を掛けられれば、このチース!!」


チース「たとえ千年の眠りからだろうと、目を覚ますぜぇ…」


カイ「くっさ」


ニー「弟ながら調子のいい奴…。ごめんねルイコ、朝から騒々しくて」


ルイコ「いえいえ、いつも楽しませてもらっていますよ」


ルイコ「先日のコンクールでの入賞も、皆さんから頂いたインスピレーションがあったからこそですし」


カイ「コンクール?」


ニー「少し前に、街中心部の方で、絵画のコンクールが開催されていたんだよ」




ニー「そこへルイコが応募した結果、ルイコの作品が、コンクールの最優秀賞に選ばれたんだって」




ミナミ「最優秀賞!?」


チース「一番ってことか!?」


ニー「この街ではね。近々地方代表として、全国大会にも出場するんだとか」


カイ「全国!?」


ニー「もしかしたら、世界大会にも…」


カイ「世界!?」


ルイコ「さ、流石にそれは言いすぎです…!」


ミナミ「常日頃から、上手い絵描くなあとは思っとったけど…」


ミナミ「なんや、凄い子が身近におったもんやなあ…。おめでとう」


カイ「おめでとう、ルイコ!」


チース「オレもオレも!!オレもおめでとう!!」


ルイコ「あ、ありがとうございます、皆さん」


ペコ(ルイコがはにかみながら頭を下げる)




ニー「ルイコ、コンクールに向けて毎日練習してたもんね」


ルイコ「はい…。努力が実る結果となって、嬉しい限りです」


ルイコ「ですがそれだけでなく、入賞の要因は、先ほども言った通り、やはり皆さんと過ごした日々によるものが、大きいと思っています」


ミナミ「え、ウチら?」


カイ「そんな、ボクたち何もしてないよ!」


アワアワ(カイが両手を左右に振る)


ルイコ「何も、理由もなく言っているわけではないんです」


ルイコ「実は、私は、以前にも数多の地区コンクールや絵画展に、自身の作品を出展していました」


ルイコ「ですが結果はどれも、良くて佳作止まり。最優秀賞どころか、代表選出なんて夢のまた夢」


ルイコ「当時の私も、ここが自身の限界なのだろうと思い、作品の出展も諦めてしまっていました」


チース「……」




ルイコ「けれど去年、この学校で皆さんと出会ってから、それまでの私という人間が、いい意味で崩れ去ったんです」


ルイコ「どんな常識にも囚われず、己の道を歩み続けるチースさん。不慮の事故から見知らぬ星にやってきて、それでも前を見て生きるカイさん」


ルイコ「毎日が宝物だという気持ちを露に、いつも笑顔を絶やさないミナミさん。そして、私に友情を教えてくれたニー」


ルイコ「皆さんと過ごした日々が、私が抱いていた気持ちに、新たな方向性を示してくれた。例えばこうして、今一度コンクールへの応募が決意できたように」


ルイコ「もし皆さんと出会うことがなければ、私は今も、限界の壁を背に座り込んでいたことでしょう」


ルイコ「だからこそ、私に限界を超える勇気を与えてくれた皆さんこそが、この入賞を現実のものとした功労者なのだと、私はそう、確信をもって言えるんです」


カイ「ルイコ…」


(カイがルイコを見つめている)


ルイコ「…全国大会では、地方の時とは異なるテーマに沿った作品を、期間中に仕上げる必要があるそうです」


ルイコ「概要はまだ知らされていませんが、テーマが何であれ、皆さんから頂いたインスピレーションを胸に、全力で作品と向き合う所存でいます」


ルイコ「なので皆さん、」


ペコ(ルイコが深々と頭を下げる)




ルイコ「いつも私の友達でいてくれて、ありがとう」


ルイコ「そしてこれからも、よろしくお願いします」




チース「……」


ニー「……」


カイ「……」


ミナミ「…や…」


ミナミ「何や…」




ミナミ「何やこの天使はあああああ!!」




ガバッ(ミナミがルイコに抱き着く)


ルイコ「わ…っ!?」


ミナミ「ルイコちゃん、いっつもそんなこと考えとったん!?何やその純粋培養、あり得へんやろ!?」


カイ「聖人すぎる…」


ドバア(カイが号泣している)


ミナミ「友達でいてくれてありがとう!?ウチらの方こそ、あんたの優しさにはいっつも助けられとるんやで!?」


ミナミ「ウチの癖の強い喋りにも、必死に付いてきてくれたり!」


カイ「高くて手が届かない所にある物を、代わりに取ってくれたり」


チース「忘れた宿題を、写させてもらったりな!」


ニー「それ初耳なんだけど」




ドン(ニーがチースの背後に立っている)


チース「げ」


ニー「宿題は模写せず、自力でやりなさいって…」


ニー「いつも言っているでしょう、チース…?」


ゴゴゴ(ニーの手がチースの体に伸びる)


チース「よ、よよよ要するにオレら全員、いつも互いに助け合ってるっつぅことだな!!」


チース「んじゃなお前ら、オレは席に戻るぜ!!」


ビュン(チースが自身の席へ走る)


ニー「あっ、こら!全くもう…」


ミナミ「よおおおし、こうなったらクラス中、いや、学校中にポスターを貼って、みんなでルイコちゃんを応援や!」


ルイコ「ポスター、ですか…?」


ミナミ「せや!"ルイコちゃん地区大会優勝"ってのと、"全国大会出場決定"って字をデカデカと書いてな!」


ミナミ「当日は生徒教職員揃って、ミナミちゃんを応援するんや!ええ案やろ?」


カイ「学校のみんなが、一丸となってルイコを応援する…。凄くいいと思う!」


ミナミ「せやろせやろ!んじゃ早速、下書きの作成に…」




キインコオン(学校のチャイムが鳴る)


カイ「あっ、もうこんな時間…。残念だけど、続きはお昼にしようか」


ミナミ「せやな…。んじゃルイコちゃん、改めておめでとう、楽しみにしとってな!」


ルイコ「何から何まで…。本当にありがとうございます…」


ミナミ「気にすんなって!ウチら、友達やろ?」


ルイコ「ッ、は、はいっ!」


ミナミ「ほなまたな!」


タンタンタン(ミナミたちがそれぞれの席に着く)




ガタ(ルイコが自身の席に着く)


ルイコ「…ふう」


ニー「ごめんね、疲れさせちゃった?」


ガタ(ニーがルイコの隣の席に着く)


ルイコ「ニー…。いえ、私は全然大丈夫です」


ルイコ「その、何というか…。安心してしまって」


ニー「安心?」


ガサ(ルイコが鞄から教材を取り出す)


ルイコ「チースさんやカイさん、ミナミさんが、私のことを友だちだと認識してくれて、良かったな、と…」


ルイコ「私はあまり、普段、自発的に言葉を発する性格ではないので…。もしかしたら、そうとは思っていただけていないのかもと、邪推してしまって…」


ニー「相変わらず自己評価低いんだね」


ルイコ「ニーに言われたくありませんよ」


ニー「あれ、そう?ふふ」


ルイコ「うふふ…。なので今は、漸く肩の荷が下りたような、そんな気分です」


ルイコ「本当に良かった。もう何も、思い残すことはありません」


ニー「未来ある高校生がババ臭いこと言っちゃって。目の前に全国大会も控えてるのに、まだまだこれからでしょう?」


ルイコ「…ええ、そうですね」




トントン(ルイコが教材を整える)


ルイコ「…友情というものに、上下の区分を設けるべきではないのでしょうけれど」


ルイコ「やはり、私の中で、一番の友達はニーなんだと、そう思います」


ニー「え」


(ニーが教材を漁る手を止める)


ルイコ「…一年前の入学式。こうして隣の席に座っていた私に、話しかけてくれたニー」


ルイコ「あの一言から今に至るまで、私はずっと、貴女に支えられてきた」


ルイコ「私に再度筆をとるきっかけを与えてくれたり、私のマネージャーになってくれたり」


ニー「…マネージャーって言っても、実際は何もできていなかったけどね…」


ルイコ「そんなことはありませんよ。貴女の助言や時間管理に、私がどれだけ助けられてきたか」


ルイコ「それこそ、どれだけ感謝しても、しきれないほどに…」


(ルイコが自身の教材を見つめている)


ニー「それは私も、同じ気持ちだよ」


ニー「私が抱え込んじゃった悩みや不安に、ルイコはいつも耳を傾けてくれる」


ニー「それを抜きにしたとしても、数え切れないほどの貴女の優しさに、私の心はどれだけ救われてきたか」


ルイコ「……」


ニー「私にとってもルイコは、私の中で、最高の友だちだよ」


(ルイコが顔を上げニーの方を向く)




ニー「…って、え、ええっ!?何で涙ぐんでるの!?」


(ルイコの目尻に涙が浮かんでいる)


ルイコ「…ずみまぜん」


ニー「声も掠れてるし!?」


ルイコ「…貴女に、そんなことを言っていただけるだなんて…」


ルイコ「嬉しくって…、つい…」


ゴシゴシ(ルイコが涙を拭う)


ルイコ「…失礼、しました」


ルイコ「本当にありがとう、ニー…。この一年、私に、多くのものを与えてくれて」


ルイコ「私と、出会ってくれて…」


(ルイコが顔を上げ笑う)


ニー「か、悲しくて泣いているとかじゃないのかな…?なら良かった…」


ホッ(ニーが息を吐く)


ニー「…うん、私の方こそ、友だちでいてくれてありがとう、ルイコ」


ニー「これからもずっと、大人になっても、友だちでいようね!」


ス(ニーがルイコに手を伸ばす)




ルイコ「……」




(ルイコがニーの手を見つめている)




ニー「…ルイコ?」


(ニーが首を傾げる)


ルイコ「…友達って、隠し事はするべきじゃない、ですよね…」


ニー「え?」




フ(ルイコが顔を上げる)




ルイコ「…私、実は、貴女に隠していることがあるんです」


ニー「隠している、こと…?」


ルイコ「はい」


(ルイコがニーの目を見つめる)




ルイコ「私、本当は、貴女のこと…」




ガラガラ(教室の扉が勢い良く開く)




カイ「…あ、創造主だ」

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