7.お姉さまは寝相も美しいのです
「出れない…………出れない………」
「うっ………うぅ……」
敵に捕まって動けないアネモネと、崩れ落ちるようにうずくまるティア。
「あああああ!!!! どうすれば良いんだよ!? 俺のせいかよぉ!?」
上手くいかない状況に苛立ちを爆発させた俺はとりあえず───────ティアの元に歩み寄り。
「ほんっとうに……ごめんなさい、許してください」
深く、深く─────土下座した。
そもそもこういう文化って、この世界の日本に存在しているのか。
「すぐには.......許さないから」
真っ赤に染めた顔、震える声でティアは答えてくれた───が、やはり許されていなかった。
それはともかく、なんとかなりそうだ。
「えーっと、さっきは何を言おうとした?」
「お姉さまはきっと寝ぼけてるの」
「ああ、ね」
今なんて言った。
「お姉さまの集中力は基本的に1日1任務しか持たないの。私の不祥事からのこの様な連勤....正常に保てるわけが....」
「なんだそりゃ.......で、対策は?」
「..........」
眉をハの字にしてこちらを見る。
「どうでも良い情報じゃねえか!!!!!!」
という言葉が喉元で出かかる。だが、これ以上の無意味な会話はマイナスにしかならない。
とりあえず分かったのは、この子がポンコツだって事だ。
「ん?」
アネモネを包んでいた膜が溶けていく。
そして、頭から取り付いていた蜘蛛型の機械はマニュピレーターを繊細に動かしてアネモネを突き放した。
「お姉さま!」
駆け寄るティア。
さっさと去ろうとする蜘蛛型を俺は見逃さなかった。
「すばしっこいこった.....!」
的は大きめだ。ただ、素早い。
集中して狙いを定めなければ、
この拳銃で仕留められない。
銃口だけを向けて、奴の軌道を沿う。
止まった、今。
引き金を引いた。
「あぁ!? 外したぁ!?」
空かさずもう1発放つ───当たった。
「よし!仕留めた!...............って、あれ」
敵はピンピンしていた。
確かに弾は当てた筈なのに。
「どうなってんだ? 」
急所を外したのか、当たったかの様に見えただけなのか。
いや、見てみろ。どこか痒そうにマニュピレーターを動かしているじゃないか。
胴体をポリポリと引っ掻いて───機械の癖に舐めた態度取っているの腹が立つな。
「あっ」
どうこう考えている間にピコピコと機械音を発して、路地裏の方へ逃げ去ってしまった。
結局、敵に翻弄されたままだった。
「はあ〜なんじゃそりゃ」
溜め息を吐いても仕方あるまい。
少し離れてしまったし、さっさと戻ろう。
〜
ティアがアネモネを膝枕している。
アネモネは無事なのだろうか。
「......まじかよ」
幸せそうな顔で寝てらっしゃる。