1.うわっ...俺の腕、脆過ぎ....?
────────────パァン
夜に響き渡る破裂音。
今日が夏祭りだから、この音を花火の音だと思う者がほとんどであろう。
この言い方だと花火の音ではないと言いたいかのように聞こえる。では、何なのか。
今日は夏祭り、屋台もたくさん並んでいる。
「ああ、射的か」
そう言って納得した者も少なくはないだろう。
というより、これはあくまで仮説であって、最終的にどのくらいの割合が音の正体を聞き分けられていたかは分からない。知る余地もなかった。
これは正真正銘、本物の銃声である。
正直言って初めて聞いた。
鼓膜で風船が破裂したと思ってしまうほどに耳を劈く音。
画面で聞いてた音より全くと言っていい程に大きい。
音の発生地点は目の前、うるさくて当然だ。
なんと、トリガーを引いたのは俺。
どうしてこうなったのか。
こうなってしまったら、もう戻れない。俺は罪人扱いされるのだろうか。
いや、これは列記とした正当防衛だ。俺は正しいことをしたんだ。
目の前でスーツの大男が驚いた顔をして右胸を抑えて足を倒壊する建物の様に体勢を崩した。うつ伏せになった後、その右胸の位置から大量の血がコンクリートを浸透していった。
見ての通り、彼は”即死“した。
腕の震えが止まらなかった。初めての“人殺し”が今日になるなんて誰も思わなかっただろう。しかし、これは誰かを守る為の殺しだった。
大男の背後で力の抜けた声を吐いた少女がいた。
そのまま座り込んでしまう。
俺が守ったのは彼女だ。しかも、今日初めて出会った名も知らない。
彼女は無事に生きている、守りきったんだ。
たまには調子に乗れば良いこともあるもんだ。
それも束の間。どうしたものか、俺の腕の震えは止まらない。
「あぁ?」
思わず疑問形の感嘆を吐いてしまっていた。
右手に持った拳銃は発砲の反動で他所を向いている。
「え…………あ?」
事実を知った時、腕の震えに“恐怖”という感情が乗った。
「は?」
右腕が─────逆を向いている。
「──────────!!」
針がチクリと──────どころではない痛みが彼を襲う。
声にならない声が夏の夜に響き渡った。
「───────ぁが………。」
その少年の意識は、ここで途切れた。
この世界での映像がここで止まった。
夜空に「パァン」と花火が咲くそんな日に。