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008 カオル無双

村の入り口まで戻ると、カオルといまだに何かを口に入れて食べている村で最初に出会った女の子が待っていた。


「兄貴! どうだったんだ?」

「無事解決したよ。ちょうど居合わせた第三騎士団の人が、モシト男爵の罪を……」


罪を裁いたと言おうとしたら、全身に痛みが走る。

既に屋敷を出てしまっているから虚偽を伝える事は言えない。


「第三騎士団ならハンス・ベル隊長がいる騎士団ですね。ハンスさんなら、すぐに対応してくれそうだ」


都合よく勘違いをしてくれた。カオルは、頭が良いのか? 公爵関係者とのことだったしハンス・ベルとは知り合いなのか?

「そ、そうなんだ。それで村人は解放される事になっているから安心してくれ」


「じゃぁ、俺たちが行かなくても問題なかったんですね。無駄足でしたね。芋料理屋に村人が戻ってくるまで待ちますか?」

「帰ってきたらすぐに開店とはいかないだろう。芋はあきらめて村人が戻ってきたら出発しよう」


カオルと二人で村の入り口で待っていると、しばらくしてから女の子が採れたての芋を持ってきた。

「二―ゼロさんに食べるものもらったからお礼! 調理できないからそのままだけど」

「ありがたくもらっていくよ」


もらった芋を荷馬車へ運んでいると、遠くに村人達が帰ってきたのが見えた。

まだ遠くでここに来るまでに10分ほどかかると思われるが、先頭が第三騎士団だった。

「あ、兄貴! 先に急ぎましょう! 騎士団が来るから大丈夫ですよ」


カオルが焦っている。やはり隊長のハンスとは知り合いなのかもしれない。

まぁ、私も会うと気まずいからな。


急いでカオルと荷馬車に乗り込んで出発した。

村人達と騎士団が来る道と反対方向の道を選んで村から離れていく。

村の方向をみると私たちが見えなくなるまで、女の子が手を振っていた。


今回の功績ってどうなんだろう?

荷馬車に揺られながら馬を御者しながら、振り返ってみた。


【監視プログラムのログを見ますと、15年ほど短縮されています】


15年! 凄い短縮なんだが理由が知りたい。


視界に、刑期用のメニューが表示された。

思考するだけで操作できるシステムである。


私の行動を監視しているログを見る。


模範的な人物としての行動。

模範となる判断。

罪人の断罪。


3個の功績により、あと295年と1ヶ月と19日になっていた。

300年きったよ! ペースが速いな。これだと今年で刑期が終わるんじゃないか?


【罪人の断罪に関しての判定ログが、100万文字ほどの詳細ログとして残っていました。分析すると、モシト男爵の断罪が大きな功績になっています。不当な人身売買を止めた事が大きな要因のようです】


うぁ、読みたくない詳細だな。インディがいてくれて助かる。

色々な感情も戻った上に刑期も短くなりやすいアクシデントにあふれていて、人間として生活できる素体ロボットがある。

異世界に来て本気で良かったと思うが、反面こんなに楽で良いのか不安になるな。


考えながら荷馬車の速度を上げた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


再び、カオルとの旅で10日ほど経過した。


「特に問題なく、平和だな。盗賊や魔物などが全くでないな」

「王都から離れるほど治安が良くなりますよ」


「え? 普通は逆なのでは?」

「メルクボルク王国は、王都の周辺は、子爵以下の貴族が領地を治めていることが多くて、離れるほど伯爵以上の貴族が収めているんですよ。離れるほど大貴族の領地にになるために、治安が良くなると言う訳です」


カオルは公爵関係者だから王都から遠いと言う事か?


「この辺は、武闘派のルズワルト辺境伯が収める領地なので街道沿いには魔物は皆無だと思いますよ」

「武闘派?」

「ルズワルト様が、自分で魔物を討伐するほどの武人ですね」


あまり関わりたくない人物の予感がする。


しばらく走ると、前方に4頭の馬に引かれている豪華で大型の馬車が路肩に車輪を取られて停車していた。

護衛の4人の騎士だと思われる人物が、必死に馬車を持ち上げようとしているが大型馬車の為にうまくいかないようである。


功績チャンスだが貴族に関わると、いまちょうど話した辺境伯が出てきそうな予感がする。

何事もなく横を通り抜けようとしたが、巻き込まれた。


「お前たち!その荷馬車をかしてもらおうか?」

護衛の騎士の陰に隠れるようにいた40歳ぐらいの魔術師のような男が、荷馬車の前に立ちふさがった。


急に出てきたので、馬を急停車したため馬が暴れだす。なだめるのに時間がかかった。


「危ないですね。いま私達が使用しているので貸す事はできません」

「貴様ら貴族の私に逆らうと言うのか?」


あら、まさかの身分での権威主義者が現れた。

「借りたい理由はなんでしょうか?」

「生意気な奴だな、騎士長!貴族を侮辱した罪でこいつらを捕まえろ」


いまのに侮辱行為が入っていただろうか?

【無実の罪を負わせる虚偽告訴罪が発生したと考えられます。対象は犯罪者集団と囚人プログラムが認識したので反撃可能です】


「ベルナンド様、流石に通りがかりの平民から物を奪うのはどうかと思います」

「騎士爵ごときが、辺境伯の長男に逆らうのか?」

「お父様に言いつけますよ」

「うぅ、卑怯だぞ!」


騎士長の人がまともだった。


「通りがかりだけの関係ですが、助けましょうか?」

「すまんな、馬車が特注品の大型の為に4人がかりでも車輪が抜けなくて困っていた。君達も参加してくれれば動かせると思う」

「無視してるんじゃない! 私はルズワルド・ウズの息子のベルナンド・ウズだぞ!」


典型的な虎の威を借りるタイプだ。

ベルナンドが見事に辺境伯の関係者だったし、やばい奴のようだが、騎士長になじられているので無視しても大丈夫な予感がする。

騎士長に免じて助けてやろう。


「わかりました。すぐに手伝いますよ」

「兄貴! 俺も手伝うか?」

カオルが話の展開に戸惑っている。


「助かるよ。私はルズワルド様に使える騎士長のヘンリだ」


荷馬車から降りて路肩に車輪を取られている馬車へいく。


車輪を右手で持って持ち上げる。

馬車の傾きが水平に戻った。

このまま降ろしてたらまた路肩に落ちるので、車輪の強度がかなり強いと判断し無理やり車軸を左手で掴んで馬車ごと持ち上げて道の真ん中へ移動させた。

重さで足が少し地面にめり込む。


「「「「「はぁああ!?」」」」」

「流石兄貴だな。俺も鍛えないとなぁ」


カオル以外のベルナンドとヘンリと3人の騎士が、白昼夢を見たような表情をしている。


「助けましたので、私達は旅を続けますのでこれにて」

荷馬車に乗って、移動しようとしたらヘンリに止められる。


「ちょ、ちょっと待った!!」

荷馬車を完全に塞がれて、進めない。


「困りましたね? まだ用事があるんですか?」

「き、貴公らは何者だ!」


カオルと顔を合わせて、少し考える。

「「旅の冒険者です」」

カオルと私でハモる。

カオルに私のナノマシンを体内にインプラントした為なのか、何故か何を考えているかわかる気がする。


「冒険者でしたか! ちょうど良かった実は隣のクレス侯爵領まで、馬車の護衛を頼みたいのだが受けてくれないだろうか? 一人金貨5枚払う」


冒険者ルールだと、冒険者ギルド以外で正式に依頼を受ける場合は、略式で貴族2名以上の同意がいる。

確かに2名いるが、ベルナンドが了承するのだろうか?


「兄貴、クレス侯爵領ならちょうど向かっている方向だよ」

「ヘンリ! こんな奴らに頼むぐらいなら暗殺者に殺された方がましだ!」


案の定、ベルナンドが断った。

だが、暗殺を防ぐとなると功績が年単位で高い匂いがする。


「お父様に言いつけますよ」

「うぅ、卑怯だぞ!」


ベルナンド弱い! ヘンリの方が立場は低いが弱みを握っている分強いのね。


「進む方向も同じなので、依頼を受けましょう」


荷馬車と豪華な四頭の馬に引かれた馬車が、並走して走っている。

荷馬車には目的地迄の道は知らないので、ヘンリに御者をやってもらってカオルと私が乗っている。


「クレス侯爵領のどのあたりに行くのですか?」

「クレス侯爵領のテアモント城まで、お付き合い願いたい」

「城に何の用があって向かっているんですか?」

カオルがヘンリに聞く。


「ベルナンド様は色々な問題から、いまだに婚姻を結ばれておりませんでした。

しかし、クレス侯爵様の計らいでクレス侯爵様の第五女のメリルウ・ツエク御令嬢と御結婚する事になりました。

決まったころから世継ぎ問題で、ベルナンド様に敵対する勢力によって暗殺者が絶えないようになりました。ルズワルド様が息子を危惧してクレス侯爵領へベルナンド様を避難させている最中です。移動中に2回ほど襲撃を受けていまして、私の近衛騎士団も初めは12人でしたが現在は4名まで減ってしまいました」


色々な問題って、貰い手がが居なかったのかな?

長男を誇張していたので、次男以下が犯人だと想像できてしまう。

長男に子供が出来なければ、次男以降の子供が辺境伯を継ぐ事になるからな。


「メリルウ様との結婚はいつなんですか?」

「メリルウ様が16歳になったらと言う話なので、1年後になります」


メリルウは15歳でベルナンドの年齢がが40歳付近だとすると、貴族世界の結婚は恐ろしいなぁ。

クレス侯爵もルズワルド辺境伯との交流の為に仕方がなく、との気がする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

特に襲撃もなく順調に旅が進み、あと少しでクレス侯爵領の所で道が広くなり異変が起きた。


【周囲に2000以上の生命反応】

え?


【前方から1500、背後から500です】


前方からクレス侯爵の紋章が入った鎧を着ている騎士団や、紋章の旗を掲げて接近する歩兵部隊が見えた。

軍隊!?


「これは、クレス侯爵様が気を使って迎えに来てくれたのか?」

荷馬車からヘンリが騎士達へ手を振っている。


ヘンリはお気楽に考えているが、背後からも来ている事を考えるとちょっと違う気がする。

まさかと思うが、これって暗殺ではなくクレス侯爵の襲撃では?


数的には1500人ほどのクレス侯爵の騎兵や歩兵に囲まれた。


どこから追尾していたのか私達の背後から、さらに500人程到着して2000人に囲まれる。


その中から、目立つ派手な防具をつけて高そうな剣を下げている男が、白馬に乗って出てきた。


ベルナンドと護衛の3人の騎士が馬車を降りた。


「私は、クレス侯爵の次男のハシル・ツエクだ。ルズワルド辺境伯の長男であるベルナンド・ウズとお見受けしますがあっていますか?」

3人の騎士に囲まれたベルナンドが、それに答えた。


「いかにも、私がベルナンド・ウズだ。お出迎えご苦労だったな。早速、メリルウの所へ案内してくれ」


ベルナンドがメリルウと言った瞬間に、ハシルが凄い形相になった。


「流石、ルズワルド辺境伯様を蝕む存在だ。噂通りに無能のようだ。我が妹を呼び捨てにするとはな。既に話はついている。やってしまえ。」


「サンダー!」

「うぁうぁう!」

「フレア!」

「ひぃいぃ!」

「ストンブラスト」

「ぐぼおっぉ」


ハシルの背後に居た魔術師が、詠唱が終わった魔法をベルナンドを守っていた騎士にぶつけた。

まったく油断していた騎士が直撃を受けて倒された。


「な、なにをするんだ! 父上が黙っていないぞ!」

「ヘンリ騎士爵殿、犯人はそこにいる冒険者2人という筋書きにするのかな?」


ハシルから声をかけられると荷馬車からヘンリが飛び降りて、ハシルの所に行ってこちらに振り返った。


「やっと、ベルナンドから解放される。お前が無能でどれだけ私が苦労した事か。既にルズワルド様からは了解をもらっている。

流石に無能だからと言う理由で息子に手をかけては評判に関わるから貴族の世界では当たり前の内部闘争で、暗殺された事にして次男のメステス様が我が領地を引き継ぐ事となるだろう。


犯人は後から用意する予定だったが、ちょうど良い冒険者が見つかったのでね。

馬車を持ち上げる力から見て金プレートクラスの冒険者だと思っている。金プレートであれば、ベルナンドが護衛付きで殺されても疑われまい」


「な、なんだと! 今までの暗殺の話は嘘だったのか?」


「そうでもしないと、お前が領地から出ないからな。部下には悪い事をしたがお前が領地を引き継いだら我が領地が滅んでしまうからな」

「結婚の話も作り話だ。お前の様な輩に妹はやれんよ」


ヘンリとハシルが、ベルナンドをボロクソに言う。

完全に巻き込まれた感じだな。

今までの話を聞くと父親のルズワルドも了解しているようだ。

この事件から巻き込まれないで、脱出する方法はあるのか?


「カオル、ここにいる人を全て殺しても良いか?」

「兄貴がそう考えるなら。さすがにここまで知ってしまった俺達を生かしておくとは思えません」


会話でここを抜けるのは不可能だろう。

カオルが、ステータスアップと盗賊討伐で自信をつけてしまったようで全く心配していない。

初々しいカオルが消えてしまった……


【囚人番号2019号は余裕でここを切り抜けれますが、戦闘力が高くなったといえカオルが少し危険です。黒鎧をカオルに装備させて、単独で戦うのが最良かと考えます】


確かにカオルが心配だ。

カオルに作戦を伝えると、カオルが決意したように答えた。


「兄貴!心配いらないぞ。盗賊の時に自信がついたからな! 兄貴の鎧を着たら逆に重くて動けないぞ!」

鎧の性能は話してないからな。まぁ、カオルのステータスなら、大丈夫な気がしなくもない。


グボォ!

「や。やめてくれ。言うことを聞くから……」

「だったら大人しく殴られてろ!」

「いやはや、下卑た奴だな」


ヘンリとハシルが、ベルナンドを殺さないで、殴ったり蹴ったりしていたぶっていた。

しばらくしてベルナンドが、動かなくなった。

ハシルが、最後に首を斬り落とした。


【囚人監視プログラムがメルクボルク王国の法律に照らし合わせて貴族に対する殺人罪。私達に対する虚偽罪を承認しました。これまでの内容が規模から判断してクーデターに当たるとして、戦時的な対応を承認。戦時宇宙法が適応されました。戦闘に関わる法律が変化しました】


戦時宇宙法って……

暴力的な手段の行使によって引き起こされる政変で、関係者の規模が個人レベルを超えた時に適応する法律だったはずだ。

まさか、そんな法律まで出てくるとは異世界すごいな。


法律の条件をしらべると色々な条件はあるが、ほぼ何をやっても良い状態だった。

その中の条件に、宣戦布告する必要があると記載されている。

宣戦布告ってどうやるんだ?


「さて、君達も死んでもらおう。囲め!」

ハシルの連れてきた騎士30人に囲まれた。


「ハシルだったね。今回のことをクーデターと判断して、鎮圧するために戦時宇宙法を適応する」

「戦時宇宙法!? なんだそれは?」

ハシルが意味がわからず変な顔をしている。


とりあえず宣言したから、これで全員殺しても良いのかな?

全員を殺すと考えても頭痛はないので、法律内での行動だと判断した。


「カオル、後方は頼んだよ」


前方の30人の隙間へ一気に走り込み、右手をスパークをしながら剣を出現させて2人を斬り伏せる。


カオルを見ると、ステータスが大幅に上がった事と武装のパワーアップにより、後方にいた3人を一瞬で叩き斬っていた。


【カオルを心配しているようですが、今のカオルの動きからシュミレーションしましたが、カオルよりも強い可能性があるのは、ヘンリとハシルのみだと考えられます】


では、私はヘンリとハシルを倒せばよいな。


「無駄だ! お前らが強くてもこの人数に勝てるわけがなかろう!」

「お前たちやってしまえ!」

ヘンリとハシルが、叫んで後方に下がった。


それを追って、邪魔する騎士を全て一刀両断していく。

騎馬に乗っている兵士は、馬ごと両断する。


カオルを見ると、既に20人以上倒していた。

持っている剣が短いはずだったが、白いスパークを伴って2m程の光る長剣に変形していた。

伝説の武器のように見える。

なんだ、あれは?


【囚人番号2019号が使っている剣が高周波ブレードでカオルが使用しているのがプラズマブレードです。高周波ブレードは、刃を高周波で振動させて全てを両断します。プラズマブレードは、放電を利用した高熱で全てを高温で溶かし両断します】


私が持ってる剣も特殊だったのか! 力も入れずになんでも斬れるわけだ。


そばにいた魔術師がキーワードを叫んだ。

「ファイヤフレア」


私の全身が火に包まれた。

今回は燃えるものを着ていないので、すぐに火が消える。


「魔法が効かない!」

唱えた魔術師が愕然ととして叫んでいたが叩き斬る。


魔法に対してカオルが不味いとおもったが、カオルに頼んだ後方から来た500人は騎兵と歩兵だけだったので大丈夫そうだ。


矢が複数飛んで来るが全て剣で斬り落とす。

戦っている騎士と騎士の間から長槍が現れて腹部に刺さるが、黒鎧に弾かれる。

長槍の先端を左手でつかんで取り上げ、元の持ち主に高速で投げ返す。


戦闘しながら、ちょくちょくカオルを見ると、カオルは全ての攻撃を余裕を持ってかわしていた。

カオル強えぇ。同レベルの10倍強いからなぁ。


カオルと私で圧倒的な鏖殺みなごろしが始まった。


「ヘンリ騎士伯! あいつらは何なんだ!」

「ば、馬鹿な……ここまで強いとは……金プレートどころではない……まさか白金プレートだったのか?」


ヘンリとハシルに接近すると、二人の会話が聞こえてくる。

彼らに接近するまでに既に300人は倒した。

背後を確認すると興奮したカオルが400人以上倒して今も全く疲れを見せない動きで鏖殺みなごろししている。


カオルを心配した私が馬鹿だったようだ。

異世界の騎士のレベルは低いのだろうか?

【凄い速度でカオルのレベルが上がっているようです。上がり幅も通常の数倍なのでその影響でしょう】


よく見れば、動きが戦闘初期の2倍から3倍の速度で動いているように見える。

経験値も私の分が、カオルに入るからすごい事になっていそうだ。


やっと、ヘンリがいる付近にたどり着いた。


「待て! 交渉しよう。まさかここまで強い冒険者だとは、思いもしなかった……うぁぁ」

ヘンリに話しかけられたが、降伏ではなく交渉であっので即時に鎧ごと上半身と下半身を両断した。

戦時宇宙法の支配下の為に、中途半端な怪我や降伏されると手出しできなくなる為、躊躇はしない。

ヘンリはもっと強いかと思ったが、反応出来ずに倒された。


【戦闘初期のカオルよりは強かったかもしれないですよ。囚人番号2019号の戦闘力が異常なだけです】

私の思考を読み取ったのか、初期のインディの作戦に対する否定的な意見だったのでインディが言い訳をしてきた。

インディって人間味あるのかな?


「へ、ヘンリ騎士爵!! ま、まってくれ、私を殺せば、父上が黙っていないぞ! クレス侯爵領で生きて……うあぁぁぁ」

ハシルに接近すると降伏ではなく脅迫であっので乗っている白馬ごと即時に両断した。

ヘンリと同じような理由から、躊躇はしない。


二人を倒したので振り返ると、カオルが後方の500人を全て倒し終わってこちらに向かってくるのが見える。

カオルのステータスが怖い……


残り1000人を切っていて、何名か逃げ出し始めた。

指揮官が不在のために、数名が逃げはじめたら雪崩のように残りの兵士が逃げていく。

全部逃がさないで倒すのは難しいなぁ。逃げた兵士からの情報でクレス侯爵領でまた何か問題が発生するだろうな。


「兄貴にもらった装備! 最高! なんでか使い方がわかるんだ! 兄貴は神様なのか?」

「え? 違うよ」

「話したくないならいいや! 兄貴が何者でも満足だ! これなら魔族にも勝てる! 急いで領地に戻ろう!」


プラズマブレードが高熱で溶かして斬る武器のため、後方部隊を全滅させたが返り血一つも付いていないカオルがハイテンションで喜んでいた。


逆に私は、返り血だらけでベトベトである。

インディ? 私もプラズマブレードの方がいいなぁ。


【カオルと違って囚人番号2019号が使用した場合は黒鎧の出力が高すぎて危険になります。調整して使用する場合は処理を取られますからおすすめはしません】


そうなのか……


荷馬車に再び乗り込み、戦場からクレス侯爵領へ向かって動き始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

兵士からの伝令


クレス近衛騎士団 第二魔法小隊 隊長ブワク・ムラセ


クレス近衛騎士団全員にハシル・ツエク団長から緊急招集がかかったため我が第二魔法小隊が集まった。

現在は11名からなる遠距離魔法に特化した特殊部隊である。

目的は聞かされていなかったが、ルズワルド辺境伯領から極悪な犯罪者がクレス侯爵領へ向かってきているので、それを殲滅する指示書が回ってきた。

決して逃がしてはならないとのことで、騎士団を二手に分けてクレス侯爵領に入る手前にある大きな道沿いの平野で正面と背後から挟み撃ちにするとの事だった。


作戦場所に着くと、大型の馬車と荷馬車がこちらに向かってきていた。

我が小隊は遠距離魔法部隊のために、遠くを見ることができる隊員がいる。

クレス近衛騎士団の最後尾にいるため、遠くを見るスキルを使用して手元にある水晶に不鮮明であるが大型の馬車と荷馬車を映し出し、遠距離魔法を使用するタイミングをはかる。


大型馬車から出てきた犯罪者と思われる人物は、殺害された。

荷馬車に乗っていた3人の中の1人は、見覚えがある人物で捕虜だったらしく隙を見て逃げ出して保護されたようだ。


残った犯罪者は、黒い鎧を装備した人物と皮鎧を装備した人物のようだ。

この二人が突然動きだし騎士団員に襲いかかった。

水晶越しに攻撃可能な隊員が、遠距離魔法のブリザードノバとチェーンライトニングを唱える。

一方的に騎士団員が倒されていくのが見える。人間の形をした魔物なのか?


ブリザードノバの詠唱が完了して発動すると、黒鎧の色が少し白く変化したが何事もなかったように動いている。少ししてから色が黒色に戻った。

ブリザードノバは、対象物を氷よりも冷やす呪文であり、凍結することによって動けなくなり体が割れるはずだが、魔法が効かないのか? アンチマジックが付与された鎧なのだろうか?

次にチェーンライトニングを発動させると、黒鎧が一瞬光ったが何事もなかったように動いている。

どういう事だ?

この間にも、一方的に団員が倒されていて死体の山が生産されていく。


鎧に秘密があるかと考えて、一度使うと使えなくなる貴重なアイテム鑑定のスクロールを水晶越しに使用した。


クラス 神具

攻撃補正 可変のため測定不能

防御補正 可変のため測定不能

特殊能力 絶対魔法耐性、魔法吸収能力


クラスがありえない表示をしている。神具? ありえない。国宝ですらここまでの装備はないだろう。

防具なのか武器なのか? その物自体が本体なのかすらわからない。

決して触れてはいけない領域を感じた。急いでこの鑑定書をクレス様に届ける必要性を感じた。


既に1000人以上の団員がすべて一撃で殺されていて、撤退を開始していた。

無敵だと思っていた剣の使い手のハシル・ツエク団長が、瞬殺されたのを見て第二魔法小隊も撤収を開始する。

囚人番号2019号内部規約説明


宇宙法

刑法102条 虚偽告訴罪

無実の罪を負わせた場合。3月以上10年以下の懲役という重い刑が定められています。

虚偽告訴をされた被害者の人権のみならず、国家の犯罪捜査権や処罰権をも侵害するため、重い処罰が科せられることになります。

「告訴、告発その他の申告」は、広い意味で解釈されます。 処罰を受けさせてやろう、という目的がない場合には罪になりませんが、処罰されることが確実だという確信がなくても、処罰を受けるかもしれないと思って、被害届けを出した場合にも罪になります。



自治区 治外法権によるメルクボルク王国の法律

虚偽罪

無実の罪を負わせる虚偽告訴があった場合、それに関与した全ての人を犯罪者として扱う。

ただし対象者に対して立場が上の物が意図的に行っていない場合は、その罪を問わない。

逆に対象者に対して立場が低い物が意図的に行っていない場合は、侮辱罪として取り扱われる。


戦時宇宙法

大規模な戦闘や国家間の戦いの場合は、戦時宇宙法が最優先で適応される。以下の条件以外の事は全て許される。

・目標以外への攻撃禁止(降伏者、負傷者、民間人等の攻撃禁止)

・休戦旗を揚げながら戦闘する行為

・遭難信号を不正に発信する行為

・捕虜虐待の禁止

・開戦に先立つ宣戦布告義務


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