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004 管理モジュール起動

道の脇に荷馬車を隠した。


カオルとブランと私の順番で、ゴブリンが通って出来たと思われる獣道へ入り込んだ。

日が落ちて暗くなっていく。


私の場合は、暗視の機能が目に付与されているので暗くなってきたが、少し色が白黒っぽくなるが昼間のように明るい。


夜空を見ると月が3個!?

気がつかなかったが、前にいた世界の夜よりも明るいようだ。

寝れる喜びで、夜は速攻寝てたからな……


「カオル? この暗さで大丈夫なのか?」

「銀プレートをなめるなよ。表情はわからないけど月明かりで輪郭はしっかり見える。全く問題ないさ。逆に灯を付けたら目立って狙われてしまうぞ」


あまりによく見える暗視機能付の目が裏目に出て、カオルとブランがどの程度見えてるかわからない。


40分ぐらい歩くと、洞窟が見えてきた。

洞窟の前に8匹のゴブリンが焚き火を囲んで待機している。

見張りだろうか?


すぐさま、草むらへ3人で隠れる。


「出口に8匹もいるとなると、既にゴブリンの巣ではなくゴブリンの集落になっている可能性がある。危険だな」

カオルがつぶやいた。


冒険者ギルドで読んだ本の冒険者英雄譚によれば、ゴブリンは緑色で小柄な人型の魔物だ。

男性タイプしかおらず人間や亜人の女をさらって子供を作る。


数ヶ月の妊娠期間があるのが普通だが、わずが数日で大気中の魔素(マナ)を母体を通して集めて生まれると書いてあった。

一人の女性から一ヶ月で10匹以上産まれる計算になる。


空気中の魔素マナってなんだ?非科学的な異世界恐るべし。

時間があるときに大気成分を調べる機械を作って調べてみる必要がありそうだな。


「ゴブリンが弱いと言っても一匹の場合だ。俺でも3匹同時までが限界だ。ブランも一匹でニーゼロさんも一匹相手にするとすると、このパーティだと5匹までが限界だ。それ以上だと相手にできないゴブリンに対して油断して毒の付いたナイフや矢で襲われて全滅する可能性がある。しばらく様子見をして5匹以下になるのを待とう。もしも襲われて6匹以上と戦う時は全力で逃げるぞ。奴らは私達より足が遅い」


カオルが適切な作戦を伝えてくる。さすが銀プレートである。


ブランを見ると緊張してカチカチである。

「大丈夫か? ブラン?」


心配してカオルが声をかける。

「ま、任せてください!」


私にカオルの目線が来た。ちょうど夜空の3個の月の明かりが私の顔を照らしたらしく表情がカオルに見られた。

「さすが二―ゼロさん。偽装してるステータスはわかりませんが、笑ってるようですね。安心しました。ブランを頼みます」


どうやら余裕そうな顔をしていたようだ。

まぁ死刑囚人は、刑期を早く終わらせて解体されたいから死亡欲求があるからね。

偶然に死ねることを心の底で思っているので、危険な作業程嬉しいからな。


ただ、この世界に来てから色々な感覚と感情を取り戻してしまって、死にたくなくなってきたかもしれない。


1時間ほど離れた場所の草むらで隠れて待ったが、8匹から10匹に増えてしまった。


「深夜は、奴らの行動が一番活発な時間だ。まずいな」

カオルが焦る。


カオルが困っているだと? 功績チャンスなのか?


「カオル、もしも10匹ゴブリンが一瞬で消えたら助かるのか?」


「そりゃ凄い助かるが、見張りにここまでの数が出てるとなると洞窟の中に、多くの女性がいる事になる。早く助けなくてはいけない反面、ゴブリンが数集まるとゴブリンの上位種のゴブリンメイジやナイト、最悪の場合だとロードが産まれている可能性がある。一度引き返すか悩んでいる」


銀プレートって凄いな。ここまで考えているのか!

馬に逃げられた脳筋だと思っていたカオルを見直した。


洞窟の中に救助対象の女性もいるのか。功績を考えると涎が出てくるのがわかる。


手で握れる程の大きさの石を10個拾って左手で抱えた。


「カオル、ブラン。今から見る事は内緒に出来るかい?」


「ま、また何かするんですね? 薬草クエストで慣れてるから構いませんよ」


ブランには、凄い速度で走ったり硬い土を粘土みたいに掘ってるのみられてるからなぁ。


あまり目立つとシュウと名乗った同一人物だとバレて、王都で王様達に目を付けられる可能性がる。

なるべくなら目立たないようにしたい。

落ち着いたら王都を離れた方が良いかもしれないな。


「二―ゼロさん? 武器を持っていないのが不思議だったが、隠しているステータスが魔法使いで魔法での遠距離攻撃できるのか?」

「まぁ、魔法に近いかな?」

カオルに科学的な事を言っても仕方がないので軽く説明する。


さて、やるか!

今の私の体は、通常の人の最大10倍ほどの能力なのだ。

普通の人が時速50kmで石を投げれれば、単純な想像だと私は時速500kmで投げれるはずだよね?


おもいっきり、ゴブリンに向かって石を投げた!


シュウゥゥゥ!

パン!!


ビチャァァァ……


一匹のゴブリンの頭にヒットする。

衝撃で頭と石が爆発して破片が周りのゴブリンに刺さる。

1発で2匹が死亡、一匹が重症のようだ。


石の投げた時速は思ったより遅かった。

単純な計算と違って現実は、空気抵抗や石の形状など多くの条件で実際に出た速度は時速300kmほどだった。

だが、十分な威力を発揮する。


「「えええ! 」」

ブランとカオルの目が点になる。


「次々いくぜ! うりゃ!」


シュウゥゥゥ!

パン!!


ビチャァァァ……


6回投げると、頭がなくなったゴブリンが6匹。

破片で死亡したゴブリンが4匹の死体が横たわっていた。


「凄い! 土魔法系のストーンブラストですか!?」

カオルが、目を輝かせて聞いてくる。


いや魔法じゃないんだが、魔法と言う事にした方が良いのか……イタタタ!

嘘を言おうと考えただけで全身に苦痛が走る。

監視システムの判断が早いな。


「ま、魔法じゃないんだ。どうやら普通の人よりステータスが高くて、石を思いっきり投げただけなんだよね」

「もっとすげえええ!! これならゴブリンの集落でも町でも帝国でも余裕だ! 兄貴って呼ばせてください!」


カオルが大興奮!


「さ、さすがニーゼロさんだな。あはは」

ブランは、唖然とする感じだ。


「じゃあ、俺が先陣をきりますので、兄貴とブランはついてきてくれ! 洞窟内だと狭いから最大でも3匹程度しか同時に戦えない。挟み撃ちされない限り俺は無敵だ!」

カオルが作戦をまくし立てると走って洞窟へ向かった。


急いで私とブランが焚き火に使われていた火がついた木材を持って後を追う。

「カオル、明かりが無くて大丈夫なのか?」


洞窟に入ると、驚くことに外の月明かりよりわずかに明るい。

どういう事だ?


「洞窟は、初めてなんですか? ゴブリンの洞窟は奴らがヒカリゴケを洞窟壁面に植えるので、ある程度明るいんですよ」

カオルが得意げに説明する。


冒険者ギルドで読んだ本にも書いてあったが、ロボットの癖に咄嗟に思い出せないのだな。

素体(ロボット)には凄い量の知識が入っているが、きっかけがないとデータが引き出せないようだ。

不要になった火のついた木材を捨てる。


カオルの言った通りに、かなりの数のゴブリンが洞窟にいたが、カオルが倒してドンドン前進していく。

順調にいくかと思いきや、洞窟の広い場所へ出る場所にたどり着く。


広間には20匹以上のゴブリンがいた。

通路から出れば、一斉に襲われてカオルでも勝てない。


ゴブリンも待ち伏せのように広間で、私達が通路から出るのを待っている。

通路と広場でゴブリンと睨み合いになってしまった。


「困ったな」

カオルが作戦が思いつかないために、悩んでいる。


功績のチャンスだな。


まてよ、簡単に解決できる能力があるのだが、あえてやらないで相手が困ってから解決するって凄いやな奴じゃないか?

だが、相手が困まる前に解決した場合、功績にならない。


記憶は戻っていないが、人間の体だった時の感情の封印が解けてしまったためか考えてしまう。

たとえば、カオルとブランが死ぬ寸前まで助けないが、ギリギリで救う場合の功績はどうなるのだろうか?


うあぁ! 全身に痛みが走る。

やはり助けれるのに助けないで、粘る行動は規約違反のようで考えたら痛みが走った。


「カオル、私が突っ込むからブランを守ってくれないか?」

カオルが振り向いてキラキラした目で私を見つめる。


「この状態で突っ込んで行くって! やっぱり、兄貴は強かったんですね! あんな速度で石投げれるのに弱いわけないけど。

兄貴の活躍を目に焼き付けます! ブランはまかせて行ってください。兄貴? 武器は?」


「怪我したらヒールで治しますよ」


カオルとブランが応援してくれるのだが、行くのを止めはしないんだな……


通路から、私だけ広間におどりでた。

いっせいにゴブリンが襲いかかってきた。


ゴブリンの動きが思考を集中したことにより脳の処理速度が上がってスローに見える。

全部で正確には21匹だな。7匹が弓を構えている。


手の届く範囲のゴブリン4匹の攻撃をかわして、全力で殴りと蹴りで攻撃する。

4匹とも、攻撃があたった場所が陥没して即死した。


新しい体の性能が凄いな。残り17匹!

周りのゴブリンを倒した為に、7匹の弓を構えているゴブリンから矢が飛んできた。

今できたゴブリンの死体を拾って盾にする。


盾で防ぎきれなかった2本の矢が背中にあたる。

体の表面は人間に偽装しているので、やわらかくなっているが、すぐに固い層になっている私の体に少しだけ刺さった。


持っている死体を思いっきり投げつける。

後方の弓を構えているゴブリン2匹にあたって吹っ飛んでいく。残り15匹。


8方向から残ったゴブリンが一斉に襲ってくる。

目に見えなくても体にある各種センサーで、八方向のゴブリンの動きが手に取るようにわかる。

新しい素体ロボットに過去の世界の全ての体術もデータとして入っているので、すべての攻撃をかわしてカウンターでパンチを入れる。


気持ちよいほど勝手に体が動き、滑らかな美しい攻防になっている。

自分も演舞しているような気がしてきた。

私の攻撃の一撃の攻撃力が高く、すべてのゴブリンが一撃で即死していく。残り7匹。


残ったゴブリンが、奥の通路に逃げ出した。

すぐさま、落ちている死亡したゴブリンが使用していたナイフを拾って投げつける。

1匹の後頭部にあたるが、残り6匹には逃げられた。


「す、すげええええぇ! 凄いよ兄貴! こんど体術を教えてくれよ! 」


「わわわ! 二―ゼロさんやっぱり強かったんですね。びっくりですよ。私の活躍ができないですね」


カオルが大興奮しているが、逆に何も手伝えなかったブランが沈んでいる。


「ブラン、怪我したしたとき頼むよ」

と言ってゴブリンが逃げた方へ振り向くと、背中に刺さっていた2本の矢が抜け落ちる。


「え! 兄貴そういえば矢が刺さってたけど大丈夫? 」


落ちた矢をカオルが拾って心配する。

拾った矢の矢じりを見た瞬間に青ざめる。


「兄貴! これ毒が塗ってあるぞ! ブラン、ヒール用意して。兄貴背中見せろ」

近くに寄られて、上のシャツを脱がされた。


服を脱がして私の背中を見るが、矢が刺さった後もなく正常であった。

脱がしたシャツには、穴が2個空いている。

「あれ? 兄貴に矢が刺さらなかったか? 」


気のせいだと誤魔化そうとしたら、全身に痛みがはしる。偽証はできないか。

「実は体が鋼なみの強さで、その程度の矢ならなんともないし、毒も効かない体質なんだ」


ありえないけど真実だから嘘は言ってないため痛みはないが、カオルとブランが口を開けて聞いている。

この異世界だと人間でも、レベルという概念が上がれば本当に鋼の肉体になりそうだしな。


「兄貴は、実は金プレートで身分をかくしていませんか? 凄すぎます! 新しい目標が出来ちゃったなぁ。鋼の肉体か! カッコいい! 」

「…………すごいなぁ」


カオルは相変わらずのハイテンションなのだが、ブランがどんどん落ち込んでいるような気がする。

今まで一緒に冒険していて、足を引っ張って迷惑をかけていたと思い込んでいるようだ。

あとでフォローしたほうがよさそうだな。


ゴブリンが逃げた通路へ、また進行を開始するが途中で2方向に通路が別れた。

「兄貴! どちらに行きます?」


逃げたゴブリンの足跡は左の通路、右の通路からは不気味な気配を感じる。

もちろん左なのだが、右も気になる。


「ここで少し待っててくれるかい?」

「いいですけど? どうしました?」


「左に逃げたゴブリンの足跡がわずかに床に残っているから左だと思うんだが、右からやな感じをうけるんだ。一瞬で見てくるからまってて」

素体ロボットの勘なんかあてにならないが何故か気になる。


「兄貴の勘を信じるぜ! ブランを守って待ってるから行ってきてくれ」

「了解!」


右の通路を全速力で駆け出した。

少しいくと広間にでた。

今まで戦っていたようなゴブリンが30匹ほどと、杖を持ったゴブリンが2匹と長剣を持ったゴブリンが1匹いて、その奥に人間と同じ大きさほどのゴブリンが、鎧と剣を装備して椅子に座っていた。


≪何故、足跡をつけた方向に行かなかったのだ!挟み撃ちが失敗だな。仕方がない全員で襲え≫


椅子に座っている奴がしゃべった。

意味がわかるのは、共通言語解読のスキルのおかげか?

異世界恐るべし!


挟み撃ちと言う事は、ブランとカオルの方面にも攻撃部隊が行っていると考えられる。

不味い状況だ。


急いで対応しなくてはいけない。


杖を持ったゴブリンが杖を構えて、ゴブリン語だと思うが意味のあるキーワードを叫んだ。

《ファイア》


空気中から火の玉が出現してこちらに飛んでくる。

魔法か?全く理解出来ない不思議な現象だ。


無視して椅子に座っているゴブリンへ走り込む。


《な、なんだと》


座っているゴブリンが焦って立ち上がり構えるが、剣を振る隙も与えずに殴りつけた。


なんと、避けやがった!


まさか避けられると思っていなかったので、体制を崩した私に火の玉が多数飛んできてぶつかる。

着ている服に火がついて全身が火に包まれる。


追い討ちをかけるように椅子から立ち上がったゴブリンが私の背中を剣で斬り込んだ。


背中が切られて偽装して柔らかくなっている体の表面に切り傷が出来る。


《はじめの一撃は焦ったが、弱そうだな。ゴブリンナイトよ。一緒に倒すぞ》


杖を持っているゴブリンの横にいた長剣持ちのゴブリンが、私に向かって走ってくる。


あれ、新しいロボット(素体)ってこんなに弱かったのか?

走って来たゴブリンの剣が私の頭に迫り来た瞬間に時が止まった。


え? あ! どうやら私がこの素体(ロボット)を使いきれてなかった事がわかった。

時が止まった訳ではなく、私の脳の処理速度が緊急事態で信じられない速度で動いているようだ。

今まで眠っていた戦闘用のモジュール制御が緊急事態で反応して解放されたようだ。


時が止まったわけではなく私の思考が加速しているだけなので、剣が少しづつ頭に迫って来ているのがわかる。

急いで、素体(ロボット)の戦闘用機能を調べて実行する。


偽装モード解除、戦闘モードに切り替えてステルスモードに移行。速度重視型の強度へ体を変更。脳の処理速度を適切に上昇。

体が、柔らかく柔軟になった気がする。

ステルスモードは、仕組みはわからんが身体が光学的に見えなくなるようだ。


迫りくる剣を右手で叩き折り、ゴブリンを左手で殴る。あまりのパワーの一撃でゴブリンの頭が爆ぜた。


燃え尽きた服が消えて、私の体が光学迷彩によって消えていく。

服は燃えたが、この程度の温度では私の体にはダメージがないようだ。


《な! 消えた! どこ……》


バシュウゥ!


椅子に座っていたゴブリンの頭も吹っ飛ばす。


見えなくなって混乱しているゴブリンの頭を一つづつ潰していった。


そして動くゴブリンがいなくなった。


ゴブリンの座っていた椅子の後ろに、小さな通路があった。

先に進むか悩んだが、カオルとブランが心配だ。


体を偽装モードに戻して、ステルスモードを解除して急いで戻る。


先ほどの通路が分離している所までたどり着くと、カオルとブランがゴブリンと戦っていた。


既にカオルの体には矢が何本も刺さっていて、カオルの背後でブランは杖を振るってゴブリンを牽制している。

ブランの足にも矢が刺さっていた。


私の接近にカオルが気がついた。


「兄貴が、戻ってきた! 助かった! 全裸!? 」

服が燃えてしまって、今そういえば全裸だな。


そう言うとカオルが倒れた。

まて最後の言葉が全裸は、まずいだろ。


倒れたカオルに周りのゴブリンが囲んで何回もナイフをカオルに刺した。

走ってカオルを襲っているゴブリンを吹き飛ばす。


カオルが倒したと思われるゴブリンの死体が10匹以上あったが、未だに通路の奥に20匹以上いる。


「何があったんだブラン!」


「え、ニーゼロさん戻って来た? 毒で目が見えない。

左の通路から沢山のゴブリンやって来たんだけど、その中にゴブリンナイトがいてカオルさんと戦いになったんだ。

ナイトに対応している間に、ナイトの傍から矢が飛んできてカオルさんと僕に矢が当たってしまったんだ。

なんとかナイトは倒したけど矢に毒が塗ってあったのか、カオルさんの動きが悪くなって……僕も目が見えなく……ニーゼロさ……」


ブランが倒れてしまった。


私の判断ミスか? なんだこの気持ちは。

囚人ロボットになってから始めて味わう感情が支配する。

功績などではなく、助けたいと言う感情だ。

他人の事など、どうでもよかったんだが?


偽装モード解除。戦闘用モード!

ゴブリンナイトが持っていたと思われる長剣を拾って振る。

人間の偽装を解いた外見がどうなっているかわからないが、見えている手がメタリックな色になっている。


一振りで3匹のゴブリンが息をひきとる。

通路が狭く、3匹づつだが前進して倒していく。

最後の数匹になると逃げ出したが、走って追って全てを倒した。


すぐにカオルとブランの側に行くが、既に二人とも瀕死だった。

どうすればよい?


必死に素体(ロボット)のデータを検索するが、医療的な知識はあるが今の状態を治せる情報はない。


ブランは毒矢で毒による症状を示していて、カオルは毒に加えてナイフで三箇所ほど刺されて皮の鎧の下から血が止まらないで出ている。


このままでは、二人が死んでしまう。

諦めずに自分のデータを調べていくと素体(ロボット)の中に【インディ】と言う独立した眠っている管理システムのチップがあった。

アクセスをすると、頭に声が響き選択肢が出た。


【起動しますか?】


《はい》《いいえ》


→《はい》《いいえ》


何故か、迷いなく。

《はい》を選んでしまった。


【システム再起動。全てメモリーが初期化状態で起動します】


なんだ? 体は動くが、脳内で色々できた情報の検索や戦闘用モード切り替えてなどとのアクセスが切れた感じだ。


【身体管理モジュールにアクセス。状況確認。中央コンピュータ管理システムを素体管理に移行。起動】

何を言っているかわからないが、体内で何かが起きた。


【初めまして、囚人番号2019号。私は、この素体(ロボット)の管理システムを司るインディと言う名のモジュールです。目の前の二人を救助しますか】


おねがしたいが出来るのか?


【可能ですが、身体の制御を一時的に私に任せる事に承認してください】


任せた!


そう思った途端に身体の自由が効かなくなり、勝手に動き出した。

カオルの鎧を脱がしたと思ったら心臓に右手を手刀の形のまま突き刺した。


え!?


【右手の液化を確認。治療用のナノマシンを血中に投入。傷口を内側から塞ぎます】


出血していたナイフの切り傷がなくなっていく。


【右手を心臓と同化。血流制御とナノマシンによる解毒開始しました。毒の種類がハチ毒や蜘蛛毒などの合成毒ですね。解析に時間がかかります】


心臓付近に刺した腕を抜く動作をすると手首から先がなくなっていたが、カオルの胸には傷がない。


次に、ブランへ移動して同じように胸に今度は、右手がなくなってしまったので、左手を手刀の形で突き刺す。


【左手を心臓と同化。血流制御とナノマシンによる解毒開始しました】


心臓付近に刺した腕を抜く動作をすると手首から先がなくなっていたが、ブランの胸には傷がない。


【治療による行為で、ナノマシンの量の低下。回復に周囲の元素を吸収します】


左右の手首から先がない腕で、落ちている長剣に触れると腕がメタリックな液体のように変化して、剣を取り込む。


剣が侵食されていきメタリックな色になっていく。

全て色が変化すると右手と左手の形に変形していく。


【不足したエネルギー計算中。囚人用ロボットと同化したログを確認。これは、凄いですね。核融合炉ですか?エネルギープールが8,760,000時間以上あります。過去の外部吸収式と比べて大変効率的です。全ての作業が完了しましたので身体制御を囚人番号2019号へ戻します】


うお、全身の感覚が戻った。

左右の手を開いたり閉じたりするが、元どおりになっている。

偽装が始まり、メタリックな身体から肌色の人間へ戻っていく。


カオルとブランを見ると呼吸が安定して来た。


【解毒も開始されています。数時間で完了予定】


インディ? 君は何者だ?


【過去の記憶のデータにアクセス出来ませんでした。

囚人番号2019号が、素体(ロボット)に同化したところからは、データが残っており全て確認しました。


同化の際にこの素体(ロボット)の最上位権限に囚人監視用モジュールが指定されており刑期が終了するまで、私の記憶のアクセス権限も制限されてしまったようです。

機能や制御に関わる情報は全て利用可能になっています。


今わかる事は、休眠から覚めた以降の状況と過去に私は最高峰の人工頭脳であり、素体(ロボット)が当時では最高級のものであった事です。しかし、同化した小型核融合炉は、当時では実現不可能だった技術なので、既に旧式なのかもしれません。


刑期が終了して監視用モジュールが囚人番号2019号の記憶を解放すれば、私の記憶も回復すると考えられます】


うぁ、二人とも記憶喪失という事か。


【記憶喪失ではなく監視用モジュールによるデータ参照不能が適切かと思われます。以降は何か身体制御を望まれる際はご要望ください】


なんか二重人格者みたいになった感じだな。


カオルとブランを、洞窟から連れ出して一旦荷馬車へ戻った。

囚人番号2019号内部規約説明


規約権限順位説明


囚人ロボットと同化によって素体(ロボット)の最上位権限に囚人監視用モジュールが存在する。

身体制御権限に囚人番号2019号モジュールがあり、その下位に身体情報管理モジュールのインディが存在する。

インディが起動した事により、情報管理能力が囚人番号2019号からインディに委託されて身体制御以外の行動が囚人番号2019号からできなくなる。

囚人番号2019号とインディモジュールは、共に囚人監視用モジュールの支配下にあるため法令を厳守する行動しかできない。

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