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003 新しい仲間達

異世界に来て8日目の朝になった。

日課になった冒険者ギルドの依頼掲示板にある薬草採取の依頼を眺めている。


薬草採取の依頼も功績とみなされて確実に懲役期間が減っていく。

素晴らしいかな、異世界!


8日間で8日分の懲役が減った。

経過時間での減少と合わせれば16日分である。


薬草採取で過ごしても刑期が半分になる計算だ。


「おはようございますニーゼロさん!」

今日も元気なブランの挨拶が響く。


一緒に掲示板を見るが、今日は薬草採取の依頼がなかった。


「何もないですね」

ブランが悲しそうに掲示板を見ている。


薬草採取の依頼の横に、ゴブリン討伐の依頼が張り出されていた。


「このゴブリン討伐の依頼は、どうなんだい?」

「あ、どうしましょう? まだ僕には早い気がして」


冒険者ルールだと銅クラスの冒険者は、モンスター討伐は依頼を受けれない。

銀クラス以上にならねば、単独で依頼を受けることが出来ない規則だ。

しかし、2人以上のパーティを組んでいる場合は、討伐難易度E以下のゴブリンや地下大ネズミなどの討伐の依頼の受諾は可能であった。


モンスターが気になるので早めに受けたい依頼でもある。

薬草収集のクエストでは、毎日の宿代が銀貨1枚なので一日の稼ぎと消費のバランスで赤字である事も問題だった。


「二―ゼロさんと一緒なら大丈夫かな? 受けてみましょう!」

意を決したように、ブランが依頼書を掲示板から剥ぎ取りギルド受付へ持っていく。


「クルトさん、この依頼を受けたいのですが!」

受付の金髪クルクルヘアのクルトが険しい顔をする。


「銅プレートのレベル1とレベル2の2人パーティーで受けるんですか? ……ルール上は問題ないんですが、心配ですね」


武器も装備せず防具も着ていない商人風のリュックを背負ったレベル1の私と、手に杖を持った白い神官の姿をした身長160cmほどの14歳ぐらいの男の子を見て頭を抱える。


ちなみに、私の外見はブランから聞くと痩せ型で少し顔が良くて標準的な身長で18歳ぐらいに見えるらしい。

鏡がないために聞くまで、もっとオッサンの外見だと思ってた。


ブランのキラキラした眼差しが受付嬢のクルトを見つめる。

「わ、わかりました。承諾しますが、危なくなったらすぐに戻ってきてくださいね!」


依頼書に受付印を押して投げるようにクルトから渡された。


内容は、街から3日ほど馬で移動すると街道の横に洞窟がある。

そこにゴブリンが巣を作り始めているので、全て倒す事になっている。

既に街道を通った商人が数人襲われているようだ。


報酬は、金貨10枚!

ゴブリンの右耳1つ銀貨1枚!


ゴブリンを倒したら証明で耳を持ってくるんだな。

赤字から脱出できそうだ!


「よし! 行くぞブラン!」

「二ーゼロさん待ってください!」

急いでギルドをでるとブランが後を追ってきた。


目的地まで馬を借りようと思っていたが重大な事が判明した。

私は、見かけは商人だがロボットなので体重が金属の塊であった。


私が乗れる馬が存在しない……


仕方がないから、高くついてしまうが荷馬車を借りよう。


金貨1枚と銀貨5枚で、荷馬車とそれをひく馬を7日間借りて行くことにした。

多めの食料と水と着替えを購入して積み込んだ。


「食料よし! 荷馬車よし! 野宿の道具よし! いざゆかん!」

「うぁ、初めての旅だな! ワクワクする」

ブランがすごい笑顔になっている。


荷馬車で、目的地へ向かって馬がゆっくり走り始めた。

馬の御者方法も今の体に入っていたデータでかわかるので、私が手綱を持って馬を制御する。


「ブランは、馬を扱えるのか?」

「小さい頃に仕事で手伝いの時に覚えてますよ」

小さいって……まだブランは14歳ぐらいだろ?何歳の時だ?


そういえば、ブランのプライベートは何も聞いていなかったが街を長い間、開けても良いのか?


「ブラン? 街を長時間はなれても良いのか? 家はどうなってるんだ?」

「初めて、僕の事を聞いてくれましたね。実は神殿にある孤児院の出身ですから大丈夫ですよ」


こりゃ悪い事を聞いてしまったのか?

パーティーを組んでいる影響からか自分の事を話してしまう。


「それは大変だったんだな。私も実は記憶がなくて記憶を戻すための旅をしている」


「え! そうだったんですか! そんな苦労も知らずに、ご迷惑かけてばかりですみません。そういえば僕もニーゼロさんの事をよく知らなかったや。記憶が戻ると良いですね」


うぅんブランは、良い子だな。

記憶がなくてわからないが、元悪い子だった私と組んでて良いのだろうか? なんか申し訳ない。


1日中、風景を見ながら進行しているが全て新鮮で二人とも無言で旅を楽しんだ。


ブランは、街からほとんど出たことがないし、私は宇宙空間の記憶ばかりだから長閑な道から見える風景に心奪われる。


まれに商人の馬車や貴族の移動かと思われる護衛付きの馬車とすれ違うが、トラブルもなく全く問題は発生しない。


日も暮れたので野宿の準備を始めた。

一日の進行速度が遅い。

今後は、何かもう少し速い移動手段を考えないとな。


街から買ってきた保存食と水袋をブランに渡して、馬に餌をあげていた。


「ニーゼロさんは、いつも何も食べませんが大丈夫ですか?」

ロボットだから、嫌がらせの食欲はあるんだが……

ん? この素体(ロボット)は偽装の機能に味覚があるぞ!

まさか?


保存食を一つ手に取り食べてみる。


「う、旨いぞおお!!」

「うあァ!どうしたんですか突然!」


やばい! このロボット凄い優秀!

これが食べる喜びか!!


目から涙が溢れる。

え! 涙まで偽装できるの!?


「泣くほどお腹が減ってたんですね! 僕の分もどうぞ」


ああ、本当にブランは良い子だな。

持ってきた食料を食いまくっていると、お腹が一杯になる。

満腹まで味わえるのか!


私が同化してしまったロボット素体は、完璧に人間を偽装するんだな。

ロボットのデータには、生い立ちもデータで残っている。

制作段階で人間を取り込んで作られてる為だった。

なるほど。


喰った物は何処にいくんだろ?

ん、体内で有機物としてナノマシンで吸収されて余剰は排泄されるのか。

まてよ、排便と排尿も出来るのか!?


「ブラン、ちょっとトイレ」

「トイレ!? 何ですかそれ?」

え! この世界でトイレってなんて言うんだ?


早速草むらへ移動。

背後から、声が聞こえる。


「アハハ、お花摘みでしたか。一気に食べるからですよ」(現実:女性はお花摘み、男性は雉撃ち)


この世界では、トイレはお花摘みなんだな! 理解!


しばらくして戻った。

感動した!

人間って素晴らしい。

お花摘みってイイネ!


新しい体に感動だな。さて睡眠も出来るし寝よう!


そして、1日目の荷馬車の旅が終わった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


街を出て2日目になった。

のんびり荷馬車で移動中である。


食料は大目に買ってきたので、私が食べても問題はないし、食事、排便、排尿、睡眠と囚人ロボットだと欲求はあるが、出来なかった事が新しい素体(ロボット)だと出来るようになって、気分爽快である。


味覚が偽装できるなら痛みや嗅覚も再現出来るのか?


意識すれば分析結果としてではなくて、感覚があるじゃないか!

嗚呼感動!


だが怪我したらロボットなのに、めちゃくちゃ痛いって事か?


「ニーゼロさん? 朝からずっとニコニコしてますが何かあったんですか?」


「ん? うはははは! 何でもないぞ! 当たり前の事を知っただけだ」


「へんなニーゼロさんだな?」


たいした話もせずに途中で休憩を挟みつつ夕方になった。

馬車で3日と聞いていたので、明日の夕方には到着しそうだな。


前方に薄汚れた皮の(レーザーアーマー)を装備して短めの剣を脇に刺した、頭が直毛で爆発してる感じの少年が歩いていた。

年齢は16歳ぐらいか?


横をすり抜けようとしたら、馬の前に倒れてわざと轢かれた感じになった。


「いててて! 貴様ら! 俺を冒険者のカオルって知ってぶつかってきたのか!」


当たり屋か!!


うまく馬に轢かれる事ができずに、馬に踏まれた腕から少し血が出ていた。


まてよ! 怪我をしている。

助ければ功績を稼げるのでは?

これは美味しい! 救助せねば!


「これは、すみません。私はニーゼロと言います。もう一人はブランと言いいます。ご迷惑をおかけしましたので、ちょうど野宿するところでしたから治療させてください」


少し痛くて腕を押さえていたカオルが満面の笑みで答える。

「そ、それなら飯を喰わせてもらおうか!」


道から外れて少し移動してから、カオルとブランと私で野宿を開始した。


カオルに食料と水袋をわたすと、がっつくように食べ始めた。

「た、助かったぜ! もう、だ、駄目か。ムシャムシャ……駄目かと思った……ムシャムシャ、ゴクゴク」


食ってから喋れ……


「腕から血が出てますよ! 治療させてください」

ブランがカオルのそばによっていく。


「神々の奇跡による恩恵を、この者にお与えください。ヒール!」

カオルの手が光って、カオルの腕の傷に触ると血が止まって傷が治っていく。


なんだと! 科学的根拠がわからん! 目の機能の各種センサーで調べるが、空気中から何かが発生して発光し傷に対して何かしらの反応をしているようだ。

異世界すげーな。


「な、お前! 神官なのか! 俺とパーティー組まないか? 今からこの先のゴブリン退治にいくところなんだ!」

「え? 僕達もゴブリンを退治しにいく途中ですよ。奇遇ですね!」

カオルとブランが、いい感じで話し始めた。


あの依頼書は、随時張り出し案件だったようだ。

私達以外にも目指している冒険者がいたのか!


既に着いたら退治されていると、荷馬車を借りた料金と食費が赤字だ! やられた!


「だったら一緒に行くか? お前たち弱そうだし俺が前衛やってやるよ! こう見えて銀プレートだぜ!」

銀色のプレートを胸から取り出して、得意げにカオルが見せてくる。


「どうしますか? ニーゼロさん?」


視界に、刑期用のメニューが表示された。

思考するだけで操作できるシステムである。


私の行動を監視しているログを見ると、昨日よりも12時間少なくなって刑期があと312年と15日になっていた。

困窮しているカオルの救済と援助の功績で12時間短縮されていた。


チョロイぞ!カオルとブランがいればアクシデントがあったら2倍の功績チャンスかもしれない。

迷う必要はない。


「い、一杯いた方がいいんじゃないかな?」


「よ、よっしゃ!!」

何故か、カオルが異常に喜んでいる。


そういえば、カオルはなんで身軽なんだ? 徒歩で向かっていたのか?


「カオルは、なんで剣しか持ってないんだ?」

「あ……馬がね……お花摘みしてたら、荷物を載せた馬ごと逃げられてしまって……」

お花摘みは、確かトイレだったな。


「そ、それは大変でしたね!!」

ブランが苦笑いしていた。


カオルとパーティーを組むキーワードを言い合って、本日は消灯となった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


3日目の朝が来た。


今日の夕方迄には辿りつきそうだ。

荷馬車に揺られてカオルとブランが会話を始めた。


「カオルさんって銀プレートなんですね! 凄い!」


「レベル7の剣士様だぜ! ブランは?」


「レベル2の神官ですね。まだ、ヒールしか使えなくて……」

「レベル2だったのか! それじゃあ凄いじゃないか! 神官のヒールって普通はレベル5から回復魔法を覚えるはずだろ? 生まれ持ってのスキル持ちだったのか?」


「ヒールだけだけど、何故か初めから使えたんだ」


レベルと魔法の話をしているようだが、さっぱりわからない。

レベルに関しては魔物を倒せばわかるのかな?


「ニーゼロさんは、商人なのか?」

「え? 職業の話?」


突然、話を振られて話についていけない。ステータスの話だろうか?


「そうだけど? あ、せっかくパーティー組んでるからステータスを見せ合おうぜ!」

カオルがニヤニヤしながら言う。


読んだ本の冒険者英雄譚に書いてあったが、確かパーティーを組んでる最中に、集中して相手のステータスを見たいと念じるだけで頭に浮かぶんだったな。

通信機器もないのに、なんでわかるのかな?

異世界は、なんでもありだな。


まずは、私だな。


ニーゼロ レベル1

職業 冒険者・平民

STR 7

VIT 5

DEX 4

INT 9

AGI 11


パッシブスキル

【共通言語解読】


アクティブスキル

未取得


職業に冒険者が追加されてる!

なんで職業が平民なのか、わかった気がする。

一般的な人間に偽装しているので平民になるよね……


偽装を解いたときのステータスが気になるが、そのうち調べてみよう。



カオル レベル7

職業 剣士・冒険者・貴族

STR 40

VIT 39

DEX 31

INT 19

AGI 28


パッシブスキル

【筋肉増強】【剣技】


アクティブスキル

【スラッシュlevel2】【連撃level2】【突撃level1】


うむ! カオルのステータスは、私のステータスより遥かに良いが、一般的なステータスを知らないから強いかわからないな。

貴族だったところが感情が戻ったせいか、ちょっとムカつく。職業は増えていく感じなんだな。


ブラン レベル2

職業 神官・冒険者・平民

STR 10

VIT 15

DEX 10

INT 39

AGI 14


パッシブスキル

【魔力操作】【神の気紛れ】


アクティブスキル

【ヒールlevel2】


ブランは、不思議なパッシブスキルがあるな?

読書で仕入れた知識だと、パッシブスキルは、生まれ持っての素質である。後天的な取得は珍しいと書いてあった。


アクティブスキルが、魔法や剣技などの異世界ならでわの奇跡を起こす種類である。


「えええ! ニーゼロさん! 弱えェ」

容赦なくカオルが叫ぶ。


「え? 今まで一緒に冒険したけどおかしいですね?

体力なんか僕よりあったはずですが?

走る速度もありえない速度だし。

ま、まさかステータスを偽装してます!?」


「マジか! ニーゼロさん! 本当か?」


う! 規約違反になるので嘘は言えない。

「ちょっと問題があって、偽装してるかな?」


「すげえええ、偽装してても共通言語ってスキルは、古代文字も解読出来るって事だろ! カッコいい!」

「確か、記憶喪失でしたね。記憶が戻ったら教えてくださいね」


やばい。長い間ボッチだったから2人の仲間の反応が物凄い暖かいし嬉しい。


「ブランは、神の気紛れ持ちだったのか!」

カオルが次にブランのスキルに反応した。


「神の気紛れとは?」


「レベルアップの時にスキルは、鍛えた経験値によって増えていくんだけど、神々の気紛があると増えるべきスキルが増えなかったり、全く鍛えていない経験値もないスキルが突然増えたりする素質だよ」


カオルが博識を自慢げに語る。


「「あ、だからレベル5で覚えるヒールをレベル2で覚えたんだ」」

ブランと私が納得。


「ニーゼロさん、本当のステータスを機会があったら教えてくれよ」

カオルは、深く聞いてこなかったので助かった。

嘘は言えないし、話すと長いからな……


夕日が落ちる時間になった頃に、目的地へと到達した。


道に、争った形跡と汚い弓矢や手製のナイフが落ちていた。


「この辺みたいですね。ゴブリンは夜行性だから夕方は彼らにとって早朝です。行くなら一気に行きましょう」


カオルが真剣な眼差して道から外れて伸びている獣道を見ながら、私達に説明した。

囚人番号2019号内部規約説明


宇宙法 救助義務12条

遭難者や怪我人を発見した場合、ただちに医療機関とその場所の治安管理に連絡を入れる事。

連絡がつかない、もしくは対象者の生命の危険がる危険な場合は、出来る限りの対応をしなくてはならない。


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