Love of the eternity~永遠の愛~
1.知れーーー愛を制するものは救われる、まず意識せよ。
2.求めよーーー愛無き者に救いは訪れない、届かぬ愛に手を伸ばせ。
3.理解せよーーー愛こそ試練、愛こそ至難、愛こそ不遇。
4.触れよーーー愛は愛あれど形無きもの、イメージを掴め。
5.具現せよーーー愛の形は無数なり、自己愛を形成。
6.物にせよーーー愛に値する愛は無かれ、愛を確かに掴め。
7.従属せよーーー愛に従え、愛あらばそこに邪は生まれぬ。
さすれば、汝ら共に永遠の愛を手に入れようーーー
(愛の伝導師著『愛聖』より、見開きより抜粋)
僕は『愛の七原則』を脳内で繰り返し唱えながら、己の内に潜む怪しげな感情を必死に押さえ込んでいた。うっ、また偏頭痛が……僕をこんな混沌とした感情にした原因は僕の隣で僕の腕に手を掛けながら歩いている彼いにある。
「……っ、ぜ、ぜってぇー、手ぇ……離すなよな……藤本直人………い、いいなっ!?(///)」
さっきからこのような台詞を数分に一回おきに呟く僕の心を惑わせる魅惑の男、五十嵐幸太郎14才、童貞、オ○ニー経験無し。僕は……いつから彼に惹かれるようになったのだろう……?初めて出逢った時?初めて、昼食を共にした時?それとも、今?……分からない。この感情は……この不確かで不思議な感情は言葉では表せぬほど僕の胸の中で確かに徐々に膨らんでいた。
「ハー、フッフッフッ、フー………ハー、フッフッフッ、フー………」
しかし、僕の中のもう一人の僕がその感情を拒む、恐れる。もはやどちらが本当の僕なのか分からない。苦しい……そんな時は腹式呼吸で軽減する。大した足しにはならないけれど、咄嗟の暴走状態は防げる……と思う。一度、トガが外れればもう誰も僕を止められない……恐ろしい、こんなところで童貞という名の神域を侵すわけにはいかない……もう止めなければ……だがしかし、一方でソレを望む僕もいる。これは……愛の為すパワーなのか……?
「お、おい……お前さっきから妊婦さんみたいな苦しそうな声出してるけどよ……だ、大丈夫か?」
幸太郎君は僕に気付いたのか、不安そうな声で聞いてくる。フフ……何だ、その顔は……僕を狂い殺す気かい幸太郎君?
「萌 え ま す た」
「……はっ?お、おい……藤本直人?今、何か言ったか?」
「い、いやっ……何でもない、何でも……とにかく、進もう幸太郎君。あと、もう少しで分岐点……地図によると右の石段を登れば神社はすぐそこ……急ごう乳首」
「おぉ……そうだな、って乳首っ!?乳首って何だ!?(汗)」
「うっ……な、何でもないよ……コリコリ乳首」
「コリコリッ!?(汗)コリコリって何だっ!?」
「ち、違う……こ、コリ、コリコリ乳首が食べたいな、と……」
「お、おいっ!何か誤魔化しているつもりかしんねぇけどっ、全然フォローになってねぇぞソレ!?(汗)」
ま、まずい……もうこの溢れる気持ちを抑え切れない………しっ、しかし、まだ猶予は残っている。何とか折り返し地点まで我慢して……ぬぅううう………
「だ、大丈夫……とにかく急ごう幸太郎君。僕はもう……限界だ」
「あ、あぁ……だが、無理はするなよ?」
や、ヤメロぉおおおお………ぼ、僕にそんな切なそうな顔を向けるなぁああああ………も、萌えなくないのに萌えちゃうだろう……?あぁあああ………僕の中の愛のパラメーターが急激に上昇していくのが感じる………あぁ、何てこと。もう、折り返し地点への分岐点はすぐそこなのに………
「おチ○ポ大好き」
「うぉおおお!?今、何て言った!?お前っ!?」
「おマ○コ大好き」
「何言ってんだお前っ!?何ふっつうにシモ、口走ってんだっ!?おいっ!しっかりしろって!おい!」
幸太郎君は僕の両肩を掴み、揺らがせる……
「ぼ、僕に触れるなぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
僕は思いっきり幸太郎君を前に突き飛ばした。
「ぐっ……」
「ハー、フッフッフッ、フー………ハー、フッフッフッ、フー………」
幸太郎君はそのまま、舗装の施されていない土の地面に倒れる………ぐぅううう……だ、ダメだ。も、もう……リミット満タン……あと、ワンアクションでもう僕は正気を保てなくな………うっ!
「いててて………」
そ、その体勢は………M字開脚っ!?かのイン○ン・オブ・ジョイトイが積極的に広めたとされる刺激的かつ魅力的なポーズ!何と言ってもそのポーズの最大の魅力は言わずもがな、股関節を強調するところにあるっ!低位置から眺める女性の美しい足のラインは実に素晴らしいっ!さらにはそこから羞恥の顔を同時に眺める事ができるっ!そして……シークレットポイント。言わずもがな、シークレットポイントを凝視っ!あぁ、素晴らしい……見ているだけで達してしまいそうだ。しかし、残念な事に相手は男……ふむ。だが……神なる愛に目覚めた今の僕にとってはただそれだけのこと。女だろうが男だろうが………愛に満ちているこの国においては皆、平等だ………うふふふふふふふふふふ。
それは、僕ーーー藤本直人が完全に『愛』に目覚めた瞬間であった。
「知れーーー愛を制するものは救われる、まず意識せよ」
そう、人が愛を持つ権利は誰にだってある。そのためにはまず……意識しなければならない、愛を。
「求めよーーー愛無き者に救いは訪れない、届かぬ愛に手を伸ばせ」
確かにーーー愛無き者、正確には愛を知らぬ者に救いは来ない。愛を求めなければ、求め続けなければ……救いは来ない。
「お、おい……藤本直人。お前、何で泣いているんだ?(汗)」
「理解せよーーー愛こそ試練、愛こそ至難、愛こそ不遇」
だが、愛は救いであって試練でもある。愛を掴むのは至難で、時には不遇でさえある。だが、僕は宣言しよう……皆、解放せよ……愛を、秩序を、美を。
「うぉおおーーー!?な、何故上着を脱ぐっ!?(汗)」
「触れよーーー愛は愛あれど形無きもの、イメージを掴め」
愛は空想上のものであって、形あるものではない。しかしながら、その個人個人が確かに持つ愛には形がある。それをまず、イメージするのだ……
「具現せよーーー愛の形は無数なり、自己愛を形成」
イメージから、具現へ。それは未知なる世界へ羽ばたくために、愛という名の羽を生み出す儀式。僕は……そう、愛の塊なのだ……
「そして、何故乳首を弄っているっ!?」
「物にせよーーー愛に値する愛は無かれ、愛を確かに掴め」
愛は多種多様、己の愛だけで全てを、世界を知ったかのような愚は禁物。己の愛を知ると同時に、他人の愛を感じ取れ……さすれば、僕は確かに愛の世界へ導かれるであろう……
「従属せよーーー愛に従え、愛あらばそこに邪は生まれぬ」
愛を従属する。僕は全ての愛を従属するのだ。愛を超えた存在……そう、Love of the god……愛の創造主として、愛の神としてこの世界に君臨するのだ……
「お、おい……藤本直人。お前、どうしたんだ……?さっきから、乳首連呼したり、シモ口走ったり、上着脱いだり、自分の乳首弄りだしたかと思えば泣き始めるし……何か悪い物でも食ったか?(汗)」
そのための手始めとして………まず、目の前の男の愛を奪い、支配する。今の僕は愛の狩人。
「……ふぅうううーーー………はぁああああーーー………」
「……お、おい?ど、どうした?」
「……ふっ、うふふふふふふ………」
ゆらり……
僕は未だにM字開脚の状態で土の地面に倒れている幸太郎君にゆっくり、ゆっくり……近づいていく。僕の愛の無双は始まったばかりだ。うふふ、落ち着いて愛を狩っていくとするか、ぺロリ……
「……お、おい!な、何故……舌なめずりしながら……俺に近づいてくるっ!?」
「おっと、これは失礼。うふふふ………」
ザッ、ザッ、ザッ。
「お、おいっ!?な、何をするつもりだ………く、来るな、そ、それ以上寄るな………なっ、何をするつもりか知らねぇが………とにかく俺に近づくなァーーーーー!!!!!」
「やれやれ……貴様、威勢だけは一人前のようだな。だが、貴様がいくら叫ぼうとこうなった僕はもう誰にも止められぬ。愛の略奪者として、第二の人格の藤本直人は君の愛を奪う」
ザッ、ザッ、ザッ。
「あ、あぁ……や、ヤメロー!シニタクナーイ!アッー」
『ミューを待つ?』
「そうよ、ミューは犬並み、いやそれ以上の嗅覚を持っているわ。それを利用して、主人の残り香を嗅がせてどっちの道へ行ったか調べるの」
分岐点でミューを待ち、共にルルーを探す。それが私の考えだった。それを夕に伝えると、夕は怪訝な顔つきで口を開く。
『えー……でも、ミューってウサギよねぇ?何で嗅覚なの?』
「知らないわよ、でも以前、ミューは直人の家で直人のアレの匂いを嗅ぎとった経験があるからね」
『……アレ?アレって何よ?』
「あ、アレはその……そのっ、アレよっ!?ほらっ!アレ!」
『あ、アレって何よぉ……アレじゃあ分かんないわよ』
「と、とにかくっ……!ここでミューを待つのっ!」
ミューは私達より後に出発している、それは確認したので一本道からこの分岐点まで必ず来るはず。だから、こそ闇雲にあちらこちらを探すより、ミューの嗅覚を頼るのがいいのだ。ましてや、夜の森。この先の奥の道のりは地図には明記されてないし、迂闊に探し回るとこちらまで迷子になる危険性だってあるのだ。
『うーん……まぁ、美菜がそう言うなら私はそれでいいけど。でも、一ついい?』
「何?私はミューが来るまであんたが何を言おうが、ここを動かないわよ」
『いや、そうじゃなくて………ここ、頻繁に私とタイプは違うけど、霊が彷徨ってるけど。あっ、今、美菜の肩あたりに落ち武者の霊が憑いてるわ』
「………」
「うぅ、寒いよぉ……」
夏場に入ったばっかりなのに寒いとは、いやはやおかしいとは思われますが、実際夏でも山は涼しく、場合によっては寒いくらいにもなるそうです。体感温度は個人差によって感じる気温は多少は違ってくるとは思いますが……さてさて、果たしてルルーさんの寒気は本当にこの理由から来るものなのかこれいかに。
「うぅ、寒い……何ででしょうか……さっきまでそんなに寒くなかったのに……この小部屋に入ってから妙に背筋に寒気が走るというか、何でしょう?とにかく、寒いですよぉ……うぅ」
ルルーさんはあれから何とか重い腰を上げて、寺の中の小部屋に入っていました。その小部屋の内部は昔ながらの木造で、窓一つも無いただ小さな仏壇があるだけの小部屋でした。ちょっと動いたり、体重をかけたりするだけでギシギシ鳴るほどの相当古い小部屋のようです。
ギシッ、ギシギシ……
「ひっ!だ、誰ですかぁ!?だ、誰かいるのですかぁ~~~!?」
ルルーさんは大変アホの子でした。自分で体重をかけてしまったがために軋む音が鳴っただけなのに、どうやら誰かがいると勘違いしているようです。
「あぁ~~~もう、嫌ですぅ~~~何で、私だけこんな酷い仕打ち……ひっく」
グスングスン。あらら、またルルーさんは泣き始めました。
「うぅ~~~うっーーー」
ゴロン、ゴロン。
おやおや、今度は横になってゴロゴロ寝返りし始めましたよ。あっ、なるほど。怖さを紛らわせるためとにかく動き回って動き回って、誤魔化しているようですね。ふむ、しかし思うのです。そもそもこの不気味な小部屋に入ったことが間違いであった、と。大人しく外で待っていればいいのに。
ギィイイ、ギィイイイイイイ
「ひっ!だ、誰っ!?」
当然、ルルーさんが身体全体を駆使して動き回るものですから、先ほどより軋む音は大きくなりました。普通は気付くはずなのですが………ルルーさんは見事にそれに気付かない。不思議な子ですね、何て可愛いアホの子何だろうと。もう、ここまで来ると呆れを通り越して逆に可愛く見えてしまう。でも、もう一度言います。ルルーさんはアホです。
「も、もぉーいやぁー!(泣)早く、お家に帰りたいですっーーー!!!」
ルルーさんの叫ぶ声は空しく、寺の小部屋に吸収されてしまう。ふぁいとです!ルルーさん!