The love that is arising~芽生えつつある愛~
「……道が左右に二つ分かれているわね」
逃げたルルーを追って、私と夕はさらに奥に進むと左右に分かれる二つの道を発見した。右の道はすぐそこに石造りの階段が見える。一方、左の道は暗闇で先の方までは見えない。
「まぁ、普通に考えれば右の道が目的の神社へ進む道ってことになるけど」
『……問題はルルーがどっちの道に逃げたかってことよね』
そう、問題はそこだ。たとえ右の道が神社への正解の道だと分かっても、ルルーが必ずしもそっちに行ったとは限らないのだ。見当違いの方向、すなわち左の道に行った可能性もあるのだ。
「あの子何か雰囲気からしてアホっぽいから左の道へ逃げたって可能性もあるわね」
『……美菜って結構平気で酷い事言うよね(汗)』
……?そんなに酷い事言ったかしら?思った事をそのまま言っただけだけど。
『でも巨乳の女の子って決まってアホっぽい子が多いのは確かだよね』
「……あんたもすごい偏見入ってるし、酷い事言ってるような気がするけど。あと、全国の巨乳の女の子に謝れ」
何か手がかりがあればいいんだけど……手がかり……
「……匂い」
『え?何か言った?美菜?』
「ルルーの匂い、それを辿っていけばいいんじゃないかしら」
『はぁ!?そんな……犬じゃあるまいし、手がかりにならないわよぉ!!!』
「いるのよ、犬以上に匂いに敏感なのが」
『……え?』
その頃、ミューと堂島ペアは……
「やぁん〜暗いぃ〜怖いぃ〜死んじゃうよぉ〜〜〜!!!」
「………」
ミューは堂島にべったり引っ付かれて暗闇の獣道を歩いていた。ちょうど、美菜とルルーのペアと比べて5分遅れで出発している。
「……堂島、そろそろ私から離れてくれませんか。暑苦しいです、ていうか離れろ」
「無理無理無理無理ぃ〜〜〜離れたら死んじゃうのぉ!呪われるのぉ!はうぁああ〜〜〜ハァ、ハァ……オバステヤマニカエリタクナイ、オバステヤマニカエリタクナイ、オバステヤマニカエリタクナイオバ(エンドレス)」
堂島は真っ青な顔で目を閉じ、何やらブツブツ呟き始める……
「……何ですかその不穏な呪文は。貴方の方がよっぽど怖くて気持ち悪いです。止めてください」
ガサガサッ
「はううぁーーー出た!!!」
「みゅーん、風で草木が揺れただけです」
ガサガサッ
「はわわぁーーー出た!!!」
「みゅーん、風で草木が揺れただけです」
ガサガサッ
「あわわぁーーー出た!!!」
「みゅーん、風で草木が揺れただけです……ていうかお前そろそろ学習しろよ、です。あとその、ま○だお○だのお○だ的なノリで驚くのやめてくれませんか……何故かイラっとくるんで」
怖いものが苦手な人間は五感(視、聴、嗅、味、触)が過敏であるとよく言われる。だが、それは正常な意味での捉え方でなく曖昧で信用できない。つまり、そこに『無いもの』を『在るもの』として捉えがちであるということである。幼児が暗闇を見て泣き出すのもコレ所以であると言われている。……もしかすると子供が泣いている暗闇の場所は……
「ぎゃぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「みゅっ!?こ、今度は一体何ですか……びっくりするじゃないですか」
「めっ、目の前に裸の落ち武者が……」
「……何も無いですが。貴方のメルヘンな妄想ですか、分かります」
「分かっちゃだめぇえええええええええーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!(泣)違うのぉ!本当に、本当にっ……いるのぉ!し、しかも……こっちを見つめて……勃起しているのぉ!!!」
「何を言ってるんですかお前は。メルヘンにもほど……?」
ボッ……
ミューが前方に目を向けるとそこには、青白い炎がユラユラと左右に振り子のように揺らいでいた。その青白い炎は何やらこちらへ赴くよう手招きしているようにミューには見えた。
「………」
「?どぉしたの?ミューちゃん?何だか顔色が悪いようだけど……?」
「……堂島には見えないのですか」
「えっ!?ミューちゃんにも見えたの!?裸の落ち武者軍団!?やったぁ!これでミューちゃんも私と同類だぁ~!」
「ちがっ、そっちじゃないです。……その、霊魂のような……」
「?」
ミューは堂島に問いただすも、堂島はワケがわからないといった表情を見せた。つまり、ミューには確かにその青白い炎という存在が見えているのだが、堂島には見えていないということになる。しかし、青白い炎という存在も堂島が見える裸の落ち武者軍団同様、確信が持てない一種の幻かもしれないのでミューは強く堂島にそれを伝えられない。
「と、とにかくです……さっさと先に進みましょうです、みゅーん」
「……えっ?やぁん!なっ、何で私の背中を押すのぉ~~~?ミューちゃ~~ん!?」
「うっ、うるさいです……さっさと行くのです、みゅーん」
「いっ、いやっ!目の前に裸の御侍さんがっ……!ひっ……!いやぁああああああああああーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!」
前に出ることを拒み、悲鳴を上げる堂島の背中を押しながらミューはひそかに己の内たる恐怖心に耐えながら目的地の神社に一歩一歩踏み出すのであった。
「うぅ……ヒック、ヒック……」
グスングスン、啜り泣く一人の魔法少女の声が寺の境内に侘しく響く。ルルーだ。何と彼女は怖くて我武者羅に走った挙句、左右の分岐点を見事クリアし神社に美菜達、ミュー達、直人達より先に辿り着いていたのだ。
「うぇ……美菜ひゃんどこ行ったんですかぁ~~~……ヒック、ヒック」
美菜さんがどこかへ行ったんじゃないのです、貴方が美菜さんから逃げ出したのですルルーさん。そんなツッコミは無論誰もしてくれない。魔法少女は一人、顔は真っ赤に涙でボロボロ……とてもじゃないですがこんな情けない姿、誰にも見せられません。だが、それほど辺りは何も見えない程真っ暗……かろうじで、この付近が寺の境内であることが分かるくらい。当然ルルーさんはあわてて逃げたので懐中電灯なんぞ持っておりません。……つまりはルルーさんは今にも屍人が飛び出してきそうな真っ暗闇を体感しているというわけです。
「うぅ……お腹空いたよぉ……ヒック」
グ~……
恐怖のついでにもう一つ。ルルーさんはエネルギー不足です。美菜が用意した夕食はまともにありつけませんでした。吐いたからです、ルルーさんはご気分が悪かったのです……とはいえ、時間が過ぎれば別。時間差でお腹が空くというものです。
「うぅ~……うーっ」
ガサゴソ、ガサゴソ。
何か食料になるものを一心不乱に探すルルーさん……その姿はさながら玩具を取り上げられていじけている子供のよう……そうです、ルルーさんは身体は大人(色んな意味で)でも心(性格には精神年齢)は子供なのです。……おやおや?ルルーさんが何かを発見したようです。
「………食パン」
ルルーさんの下のジャージのポケットに何故かぺっちゃんこになった食パンがありました。……ですが、食パンの表面を良く見ると青緑色の何かで食パンの一面がコーティングされているようですが………これはあきらかに腐……
「あむっ」
パクッ
……ルルーさんは空腹に耐え切れなかったのでしょうか、そのまま一口で食パンを食べてしまいました。……魔法少女じゃなくてアホウ少女ですね。すみません、全然うまくないですね。
「………うぅ、足りないです」
たかが一斤の食パンごときで空腹が満たせるわけがありません。ルルーさんの気分は今だ優れないようです。ついにはその場で体育座りして、またシクシクと魔法少女は泣き始めました。
「うぅ、怖いよぅ、お腹すいたよぅ、寂しいよぉ………グスッ」
しかし、そんな可哀想なルルーさんの夜中の森の珍道中(?)はまだ始まったばかりなのです。
「お……おいっ!藤本直人っ!お、俺から離れるんじゃねぇぞ……(///)」
神社への道の途中、幸太郎君はそんなことを言いながら僕のシャツの袖をギュッと掴んできた。
「……幸太郎君、その台詞……さっきから何度も聞いているのだが」
「う、うるせぇぞっ!藤本直人っ……!お、俺はなぁ!?俺はだなぁ!!!おめぇがこぇーと思って……!一種の親切心で……そのっ、だなぁ!引っ付いてやってんじゃねぇかコラァ!!!(///)」
幸太郎君は頬を真っ赤に染めながらそんな事を言う。
「……僕は別に怖くないのだが」
「う、うるせぇー!!!俺が怖いんだよっ!!!悪いかコノヤロウ!!!(///)」
さらに頬を染め、興奮の余り上気を発した幸太郎君は僕の胸倉を掴み、ワケのわからない絡み方をする。
「そ、それとも………藤本直人、俺じゃあダメなのか………?(///)」
ドクンッ……
また……まただ、胸の高鳴り……や、ヤメロ……止めてくれ……その懇願するような、小動物のような上目使いで僕を見るな………ハァハァ、はぁ……はぁ……偏頭痛が……ズキンズキン……しかしそれでいてこの胸の高鳴り………うぅ、認めないぞ……こんな、こんな愛は……
「……かまわない、よ」
しかしそんな胸中に反して僕はいつの間にかそんな事を呟いていた。馬鹿な……そんな……僕は、僕は……あぁ……分からない、色んな気持ちが僕に入り込んでくる………分からない、しかし一つだけ言える事、それは……
『愛、それすなわちエロティック』
それを胸中で繰り返し合唱しながら僕は恥ずかしそうに振る舞う幸太郎君と寄り添って暗闇の森の道をさらに奥に進むのであった。




