愛の形は多種多様
「……本当にいたわね」
「……みゅーん、本当、ですね……」
「キャー!キャー!やめてやめてやめてやめてーーーーー!!!!!いやぁあああああーーーーーーーーーー!!!!!お化け怖いですぅーーーーー!!!!!」
変調、それはちょうど昼休みに入ってからの事だった。
どうやら美菜、ルルー、ミューたんにも夕の姿、形が見え始めたようだ。
それは僕としては実に喜ばしい事なのだけれど……やはり半信半疑だったようで。
美菜、ミューたんは夕の姿を見た瞬間、目を丸くし、さらにルルーに至っては何故か耳を両手で塞ぎ、イヤンバカンあっはぁーーーんな態度、つまり怖がっている。
『この子、まだ私の事怖がってるし……』
当の夕はルルーの姿を見て、先ほどのように弄ろうとはせず、何故かかわいそうな子を見るような目でルルーを見ていた。
「うっ、うっうう………」
ルルーは少し涙ぐんでいた……かわいそうに、本気で怖かったんだね………
「ルルー……」
「うぅ、直人、さん?」
「本気で怯えているそんなちょっと可哀想な君の姿………僕は大好物だ・ぞ」
にっこり
「うわぁあああああああああーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!」
ルルーは泣きながら教室から飛び出し、そのまま何処かへ走り去ってしまった。
「アホかぁーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
バキッ
その瞬間、背中に美菜のドロップキックを喰らった。
「い、痛い……でも気持ちいいぃ(///)」
「あんたねぇ?!怖がっている女の子にさらに拍車をかけるようなこと言ってどうすんのよ?!」
「ドキドキします(///)」
「本気で最低最悪な糞野郎ね、アンタ……」
「みゅーん、今一瞬本気でこのチンカス野郎に殺意が沸きました」
『……あたしも』
美菜、ミュー、夕は僕を虫けらでも見るかのような殺意の篭った目で僕を見つめる………あ、あぁ、ああ……やめてください、そんな、そんな、そんな心地よい瞳で僕を見るのを………やめっ、ないでください、ウフフ………
『うわぁ……何であんたそんなに嬉しそうなのよ、変態……』
「ウフフ、そうだよ。僕は変態……そう僕は変態、変態変態変態変態変態………だが変態であると同時に僕は新世界の神だ………」
『いや、違うでしょ』
「だからその小ぶりのおっぱい舐め舐めさせて下さい」
『どんな論法よぉ!?それでオチルとでも思ってんの?!』
「おらぁ、おっぱいペロペロさせろやぁ、こらぁ」
『脅してもだめっ!!!』
「ふ、ぷぴぴっ、はぁはっ!ゆ、夕たんのな、生乳、はっ、ぺろっ、ペロンチョ、させて、ほしい、かなっ、あっ、キタヨコレ、キタ、キタ、キタコレーーー」
『きてないわよっ!!!ていうか、キモッ(汗)』
「ふむん、無理か……」
『無理に決まってんでしょ……(汗)』
「じゃあ、スカ●ロで」
『じゃあって何よぉ?!じゃあって?!何その寿司屋で『キュウリ巻きで』見たいなノリ!?ていうか、私、11才よっ?!11才っ!!!あんたこれ本気で犯罪よっ!犯罪っ(汗)』
「じゃあ、後7年待つよ」
『そういう問題じゃないっ!!!』
「あと7年で夕たんが頬を真っ赤に染め必死に我慢しながら足腰をフルフルさせつつ僕の目の前で……『んっ、お、お兄ちゃんっ、私、私っ!もぅ!我慢できないのぉ〜』とか言いながら黄金水をちょろちょろ垂れ流す………うーん、何て甘美な光景だろう、じゅるり」
『人の話を聞きなさいよっ!?妄想も甚だしいわねっ!!!』
「いや、夕。もう甚だしいじゃすまないと思うけど………」
「みゅーん、もう奴の存在自体が犯罪ですね」
突き刺さる視線、視線、死線……はぁふぅ〜、あまりの心地よさにクラクラする……フフッ、フフフ(///)
「モグモグ……」
『じー……』
「モグモグ……」
『じー……』
昼食中、背中に強烈な視線を感じる……気になったので僕は後ろに振り返った。
『じー……』
視線の正体、それは夕によるものだった。物欲しそうな目で僕のラブ・ランチ・ボックス(藤本直人の溢れんばかりの愛がたっぷり詰まった弁当)の中身を見つめていた。そういえば幽霊は食べ物を食べる事ができるのだろうか?実体が無いので無理かもしれないが、一度尋ねてみよう。
「夕、僕のウインナー……食べるかい?」
『えっ』
ヒュッ
トスッ
「あうっ!」
箸、正面から端が飛来してきた、僕の目を目掛けて。しかし、僕はギリギリの所で交わし、箸は眉毛に直撃した。そして、箸の発信源を見ると真っ赤な顔をしたルルーが今にも刺すような目で僕を見つめていた。
「ハァハァ、直人さん……いい加減にしてください」
さっきの出来事で根に持っているのだろうか?リアルに怒っているご様子、うーん、撫で撫でして彼女の怒りを抑えるべきなのだろうか?何を?もちろんおっぱいを。
「ウフフ……僕の言葉でそんなに興奮しちゃうなんて。君は何て淫乱娘なんだ。でも、大丈夫。僕は大好きだよ、おっぱい(///)」
「き、キィーーー!こ、コロ、コロ、コロスー!コロスコロスコロスコロスー!!!殺してやるですぅー!」
「る、ルルー?!お、落ち着きなさい!ルルー!!!」
「みゅっ、みゅーん!!!落ち着けルルー、キャラ変わってます」
暴れるルルーを取り押さえる美菜とミューたん………あぁ、3人共、僕を奪い合う争奪戦を繰り広げるなんて………何て僕は罪深き男なのだろう。
『むっすー……』
ふと、夕の方を見ると夕は頬を膨らまして不機嫌な様子であった。かぁいい、何てかぁいいんだ夕。
「あぁ、すまない夕。僕の弁当……食べるかい?」
『いらないわよぉ!!!』
夕は今にも泣き出しそうな声でそう言い、僕とは反対側に顔を逸らしてしまった。
う〜ん、御機嫌斜め。とりあえず今はしばらくそっとしておいた方がいいのだろうか。
「直ちゃ〜〜〜ん♪」
その時、僕を呼ぶ女の子のような高い声が聞こえてきた。
「やぁ、楼たん。おいしそうだね、その唇」
僕の愛人、堂島楼流タン(♂)が可愛らしいウサギさん柄のお弁当を持ってやって来た。
今日の楼たんの姿はゴスロリ、黒を基調としたドレス姿は愛らしい楼たんとは真逆の存在、しかしながらうまいこと調和されてこの世界と一体となっているような気がする、電波、まさしく毒電波。
「やぁん、今日も直ちゃんにぃ、褒められちった♪えへ♪」
「僕もうれちぃ、うふ♪」
楼タンの天使の微笑みに釣られて僕も微笑みを返す。
「気持ち悪っ!(汗)」
「みゅーん、さ、さぶいぼが立ちました……」
「ところで……どうしたんだい?楼たん?」
「そ、そのっ……あのね、直ちゃん、この間、直ちゃんにひどいことしちゃったよね?私……」
楼たんはシュンと気を落とした様子でそう言う。ひどいこと……あぁ、この間の刺激的なビンタの件か。
「ウフフ……そんなこと気にしなくていいよ楼たん、むしろあまりの気持ちよさに昇天しそうだったし」
「直人は死ねばいいと思う」
美菜はシゲ○ックスな瞳で僕を睨む。
「だから、その……はいっ、これ!直ちゃん!食べて!」
「お、おぉ……こ、これは……」
楼たんが僕に差し出した弁当、その中身は僕の大好物ばかりのおかず、まさに愛妻弁当(?)だった。
「ろ、楼たん?これは食べても……いいのかい?」
「うぅん!食べてっ!食べて!食べてぇ〜〜〜むしろ、私を食べて♪」
「堂島楼流とかいうオカマも死ねばいいと思う」
美菜は僕らの愛の巣を羨ましそう、じゃなくて射殺すような瞳で見つめていた。
「じゃ、じゃあ、まずこのニンジンから………」
「ドキドキ、ドキドキ」
「モグモグ………うん、すごくおいしいよ楼たん」
「きゃぁ〜〜〜ん!あんあんあ〜〜〜ん!すっごぉく嬉しいん♪」
「うん、この金平牛蒡も、卵焼きも。特にこのポークピッツが最高だね」
「きゃぁああああーーーーーん♪直ちゃん、大好き〜〜〜♪」
だきっ
楼ちゃんに抱きしめられる。
クンクン……ほのかに香る花の蜜のような汗のにおい、フェロモン、君は女の子だ………
「そいつは男よ」
美菜が水を差すような事を言う。
『………………』
……ん?何だこの背中に突き刺さるような殺気は……ふと後ろを振り向くと、
『………な〜お〜と〜?』
鬼、微笑む鬼がいた。
「ち、違うんだ……夕、これは、その」
『何が違うんだー!!!このすけこましぃ〜〜〜!!!死んじゃえ!!!バカ!!!』
ガツン!!!
「あうっ!」
イスが飛んできた、モロ直撃。
「くんくん、直ちゃん、また新しい女の匂いがする……」
「ビクンッ!」
「今の『ビクンッ!』は何っ?!まさか、直ちゃん……また新しい女引っ掛けたの?!」
「違う、違うんだ楼たん。夕とはそんな関係じゃあ………」
「夕?!ねぇ、夕って誰?!新しい女の名前なのっ?!」
ま、まずい。墓穴を掘ってしまった。な、何とかしないと……
「みゅーん、夕は直人の子供です」
「直ちゃんの浮気者ーーーーー!!!!!!!!!!」
バッキィイイイイーーーーーン!!!!!!!!!!
「皆さん、もうすぐ夏休みですが、我が校では今年も林間学校を行います」
ホームルームに担任の先生がそう言った。
僕の中学校は毎年、夏休みの初頭つまり7月末に全学年で林間学校という名の2泊3日の旅行がある。
無論、全学年と言ってもクラス単位で行動するので行く場所はクラスによって違う。
予算は自腹、林間学校と銘打っているものの実質それが我が校の修学旅行である。まぁ、修学旅行は毎年やらないが。
「ふむ……強姦学校か、何だかワクワクしてきたよ」
「みゅーん、何か湧いてるんじゃないんですかお前の脳内」
『………ふんっ』
最後のホームルームの時間でも未だに夕は不機嫌だった。
「2泊3日で1日目は山に、2日目と最終日は海で自然と触れ合ってもらう事がこの林間学校の目的ですのでくれぐれも浮ついた気持ちで望まないようにして下さい」
自然と触れ合ってもらう事、それが林間学校の目的であるがこんなもの単なる形式上の決まりだ。
林間学校は毎年、山、海と行くところは決まっている。単純に山、海と言っても日本中には多数存在するので
毎年異なる山と海に行くことになる。山では主に散策が中心である者は川で遊んだり、ある者は山を散策したり、ある者はボーっとしてたり、基本的に自由行動だ。そして、海ではまぁ、決まっているがある者は海で泳いだり、またある者は砂場でナンパしてたりと割とこちらも自由行動だ、というか基本的に林間学校は生徒の意思を汲んでくれていたりするので割りとこの行事は人気がある。まぁ、欠点と言えば、マンネリ化であることだが。
「へぇー、楽しそうですね。今年の夏休みが楽しみですね」
「みゅーん、全くです」
「あ〜、面倒臭いわねぇ……」
ルルーとミューたんは体験した事のない行事に楽しみにしている様子。
美菜は去年も行ったことがあるので内心『あぁ〜またか』みたいな感じなのであろう。
しかし、美菜……お婆ちゃんみたいだな。
「そうだね、皆。今年は色んな意味で楽しもうじゃないか」
グループの仕切りやのごとく、僕はそう言った。
「直人さんは正直邪魔です」
「みゅーん、お前は来なくていいです」
「アンタがいなけりゃ少なくとももっと楽しめたかもしれないわねぇ……」
………うーん、さすがの僕でも今の君達の反応は傷ついたなぁ、直ちゃんガックリ↓(笑)
今年の夏はもう目の前まで来ている………