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第11話 混乱と反撃と


 チラム・フォン・ラドッシュに報告が届いたのは、彼が酒で酔い寝所に入って直ぐの事だった。


 「申し上げます! 例の不明種族のガキが逃げ出しました! 」


 「なに!? 」


 良い感じに酔いが周り、気持ちよく寝れそうだったチラムの下に、慌てて部下が入ってきて報告する。


 「なぜガキが逃げ出した? 逃げ出す理由は? そもそも見張りは何をやっていた! 」


 チラムは酔っている事もあり、机の上にある物に当たり散らす。

 しかし一通り暴れまわった所で満足したのか、チラムは冷静になる。


 「ふぅ……珍しい種族だが、たかだかガキ一人だろうが、直ぐに捕まるな 」


 その言葉に慌てたのが部下の騎士である。


 「そ、それが……ガキが逃げる際に周りの檻まで一緒に壊しておりまして、傭兵達は捕らえていた魔獣と交戦しておりまして……時間がかかるかと 」


 「なん……だと。 ふっふざけるなああああ!!! 」


 チラムは報告に激昂する。

 ガキを入れていた檻の近くにある魔獣共は子供だが、捕らえるにはそれなりに人的コストがかかっていた。 また、ここにいる魔獣は隣国から密輸したもので、ここシュミットを治める辺境伯に見つかるのは論外であるし、なにより買い手が決まっていて、既に前金まで受け取ってしまっているのだ。


 騒動になり辺境伯に気づかれるのは問題だが、その時はここの会頭を突き出せばいい。 しかし買い手の決まっている魔獣や奴隷は別だ。 こちらはチラムが扱っていると、買い手に知られてしまっているので、何か問題が起きた場合、その矛先は当然チラムへと向かう。


 (このままでは私は破産どころか破滅だ……せめてあのガキを捕えなければ )


 「おい今下にいる傭兵は何人だ? 」


 「騒ぎで増援も出しましたので三十人程はおります 」


 「なら問題ないな。 傭兵共には魔獣とガキは殺さず、なるべく活かしたまま捕まえろと言っておけ。 一匹殺すごとに、報酬を減らすとな。 それと我が騎士は私と共に直ぐここから離れるぞ。 後の取引はダルンダの奴にやらせろ 」


 「はっ 承知致しました」


 騎士は命令を受けて、即座に階下へと走り出した。

 階下へと移動する騎士を横目に、チラムは脱出の準備を整える。


 しかしこの時チラムは気づいていなかった。

 いや、気づきようがなかった。

 ジークが辺境伯の子で三歳から英才教育を受けていたことを。

 そして主に戦闘訓練や戦術・戦略の手解きを父から受けていたことをだ。


 それだけではない。

 魔獣を殺さずに捕えろといった命令が、ジーク達に決定的な時間を作ってしまった事を。

 この時の彼は知らず、宝飾品等を鞄へ詰めていた。

 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 「皆さんお願いします 」


 「「「 おおおおお!!! 」」」


 その言葉に奴隷たちは一丸となって動く。


 ジークは子供だが、自分たちを解放してくれた子である。

 このまま売られたり、殺されたりするよりかは、彼に賭けてみるのも良いだろうと奴隷たちは動き出す。 ジークの立てた作戦をガルドルフが支持したというのも大きい。


 自由の為に、家族の為に、彼らは誰一人諦めずに行動を開始する。


 ジークが建てた作戦というのは意外かもしれないが籠城戦であった。

 向こうの戦力は不明、こちらは戦える人数が十五人もいない。

 更には地下で籠城戦、しかもここから脱出しようとする者達がだ。

 普通に考えれば頭のおかしい真似だろう。


 ただし勝利条件が相手を全滅させる必要があればだ。


 ジークの目的は相手を倒す事ではなかった。

 騒ぎを大きくする事である。


 現状ジークに与えられた手札は少ない上に、どれも効果が発動できるかは未知数だ。 ただし確実に使える手札はある。


 リゼッタの存在である。


 ジークにとって、この地下室以外で確定している唯一の状況が、外にリゼッタが潜伏している状態だ。


 ならばジークは騒ぎを大きくして、状況が悪化していることを何としても伝えなければならない。

 最悪リゼッタがこれなかったとしても、ここは商会が連なる通りである。

 誰かが衛兵隊に通報して調査が入る。 それまで持ちこたえればいい。

 既にジークは手段を選んではいない。

 確実にこの状況を脱する事のみを考えている。


 だからこそ、もう家族に騒動の事がばれても構わない。 このシュミットの領地にいる以上、彼らは守るべき対象であり、それを守るのは貴族家に属するジークとしての責務である。 尊敬する父兄の姿を見て育ったジークからすれば、その責務を果たすのは当たり前の事であり、目指すべき姿であった。


 

 下準備の状態が七割を切ったところで、その時は訪れる。

 足音と鎧の擦れる音が徐々に近づいてくる。

 近づいてくる音に皆緊張から汗が噴き出す。


 

 そして足音が止まる。 傭兵達がドアの前まで来たということだ。


 「おい小僧! ここにいるのは分かっている。 おとなしく出てくれば手荒な真似はしない! 」


 「お断りします。 来るならどうぞご自由に、全力で抵抗させていただきます 」


 傭兵からの降伏勧告をジークは突っぱねる、それと同時に傭兵達がドアを開けて雪崩れ込んで……来ない。 否、来れない。


 傭兵達はドアへと突進するが、ドアはしなるだけで、一向に開かない。


 それもそのはずだ。

 なにせドアは奴隷部屋にあったデーブルを分解してできた木材と、虫人が生み出した蜘蛛の糸によって補強されていたのだから。


 傭兵達は何度も体当たりを繰り返す。

 次第に扉は耐えられなくなり瓦解する。



 だが扉を破った彼らの眼前に氷の塊が迫ってきていた。



 突進して扉を破った為に、扉に突撃していた傭兵達はその氷の塊に対応できなかった。 体勢を崩したところに氷の塊が荷馬車の如く突っ込んでくる。 突進直後で重心が前に動いているので、受け身も取れない。 所謂交通事故のように、突進した傭兵五人は後方に吹っ飛ばされた。


 しかしチラムが金を惜しんで雇った安い傭兵達は、安くてもそれなりに経験則があった。


 「魔法で氷塊を飛ばしてきているのか、おいそこの盾持った二人、お前ら前に出ろ 」


 傭兵部隊の隊長が盾をもった傭兵二人に指示を出す。


氷の塊を打ち出してくる一本道だというなら、盾を構えて進めばいい。 傭兵部隊の隊長はそう思い、盾を構えさせて氷塊を防御し、更には盾持ちのクッションとなるように後ろに人を配置しながらゆっくりと進め……なかった。


 なんと先頭の盾持ちが急に動きを止めたのだ。

 原因は足元に仕掛けられた蜘蛛の糸。

 粘着質な糸に足を吸着されて盾持ちは動けない。

 

 動けないところで更に氷塊が飛んでくる。

 脚が絡め取られているので衝撃が上手く吸収できない。

 

 だがそこで後ろの傭兵達は、盾をもった傭兵ごと盾にするという戦略をとった。

 おかげで盾持ち二人は衝撃で気絶してしまったが、氷塊はその場で落ちる。

 彼らはなんとか部屋の入口を突破する事に成功した。


 「入口さえ突破できればこっちのものだ、雪崩れ込め! 」


 入口さえ押さえてしまえば、完全武装の自分たちに利がある。

 オーガが解放されているのは被害が大きくなりそうだが、捕獲した時と同様に女子供を人質に取ってしまえば、確実にこちらの勝ちだ。

 そう考えた傭兵の隊長はにんまりと笑みを浮かべる。


 だが笑みを浮かべたのは傭兵隊長だけではなかった。


 傭兵隊長が号令をかけ突撃を始めた瞬間、一つの光が放たれる。


 そして光が傭兵達の間にある氷にぶつかったその瞬間、強烈な閃光が入口の傭兵達を中心に広がった。

これから頑張って書いていきたいと思いますので

興味を持っていただけたり、面白いと思っていただければ幸いです

まだまだ至らない所もあると思いますが、楽しんで執筆していきたいと思います。



誤字脱字等ありましたら感想等で教えていただけると幸いです。

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