「おかしいなあ…」
アパートに暮らす一人の青年が大家の許を訪ねた。この青年、隣人の出す生活音に頭を悩ましており、直接は苦情を言いづらく、大家からそれとなく注意してもらおうと思ったのだ。
出てきた大家に青年は言った。
「どうもこんにちは、201号室の田中ですが、お隣に住む方の生活音がうるさく、申し訳ないのですが、大家さんから注意してもらおうと思いまして…」
しかし大家は怪訝な表情で言う。
「おかしいなあ…。202号室に現在人は住んでいないはずだが…」
「そんなバカな。毎晩ガタガタと音が聞こえてくるんですよ」
「いや、そう言われてもね…。それにおかしいなあ…」
大家はまだ何かに納得していない様子で続ける。
「私、三日前に車に跳ねられまして、それから…おかしいなあ…」
「面白くない冗談はやめてください!!」
青年は思わず声を荒げる。
「しかしね…。おかしいなあ…」
「まだ何かあるんですか?」
おそるおそる尋ねる青年に大家が言った。
「201号室にも人は住んでいないはず…」