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第四話「甲高い声」
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八月三十一日。
「もう……もう、嫌。あれは嫌っ!!」
珍しく雨が降り注いでいる、深夜。雨の粒が激しく家の屋根を打ちつけ、様々な音が行き交う。
彼女はまた、《光》から逃げていた。
円心状の《光》の筒。直径五mほどの円。
それが彼女を追いかけ、そして、くらい高い声を頭に響かせる。
《逃げても無駄だ、へへへへ! またお前は繰り返すんだよぉぉぉぉおおおへへへへへ》
顔が濡れ、体が濡れ、夏にも関わらず寒気が彼女を襲う。
まるで真冬にTシャツ一枚で疾走しているような感覚。
どんどんと息が肺に入っていかなくなり、何も食べてもいないのに吐き気がやってきた。
「いやっ。もう、あの人を私が――」
彼女の呟きは夜の雨音によってかき消され、誰も気付かない。
殺気は消え、彼女は膝から崩れ落ちる。
《ふへへへへえへえへえへへへへっ!!》
意識がない彼女の脳内では、甲高い声がまだ、住み着いていた。
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【◎Loop◎】