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第二話「光」
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八月三十一日。
(また、繰り返すのっ?)
真夜中。
昼間の暑さも、太陽が沈んで数時間すると収まってくる。
七、八mくらい幅がある住宅街の道に一人、闇に潜むかのように女が走っている。彼女の黒い膝下までのワンピースの裾がピョコピョコ激しく揺れる。
ひたひたと素足でコンクリートの地面を思い切り蹴るためか、数分で息は上がっていた。
彼女の脳内での問いに、後ろから不自然にやってくる《光》が答える。
《ふへへへへ!! 何十回でも、何百回でも繰り返すさ。ふへへへへへ》
甲高い声が彼女の脳内で響き、頭を抑えて座りこみたい衝動に駆られる。しかし、立ち止まってしまうと、後ろから追いかけてくる天から降りてくる《光》に飲み込まれてしまう。
何故、その円心状の《光》の筒から逃げているかわからない。
けれど体が勝手に動き、その直径五mほどの円から遠ざかりたくなる。
ふと、恐怖が消える。
「……なくなった」
振り返ると《光》はなく、ただ月の光が彼女を少しだけ照らしていた。
彼女は壁に寄りかかりながらゆっくりと座り込み、瞼を閉じた。
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