表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

第一話「全ての始まり」

 初めましての方は初めまして。ゆとなみと言います。

 フルネームは「ゆとなみ うい」。漢字表記は「癒堵波 羽衣」ですが、殆ど使いません。

 私を知って下さっている方。今作も遊びにきていただきまして、ありがとうございます。久しぶりに自己紹介をした気がします。


 今回はファンタジーとなっておりますが、夢と希望溢れる――みたいな意味ではなく、「幻想的な」などという理由でジャンルはファンタジーとさせていただきました。


 今作もよろしくお願いします。

 七月二十九日。




「初めまして。神ノ崎さん」



 コンビニでアイスを買った帰り道。



「えーっと……」



 俺がだらだら、道をアイスを食べながら歩いていると、曲がり角で知らない女に遭遇した。


 目に入っていそうな長さの前髪を、鬱陶しそうに手で避ける。全身をちらっと見ると何も持っていないようだった。鞄すらも。


 服の印象としては、同い年くらいに思える。いや、今は小学生でも大人っぽい格好をしているか……?


 彼女は、中地として深い藍色のTシャツを着ており、袖などにフリルのついた白のブラウスから透けている。下は短いデニムのショートパンツ。



 しかしながら、だ。



 俺は彼女の名前すら知らないのに、彼女は俺の名前を知っているのは何故だろうか。



「突然ですが、神ノ崎さん」



 黒がちの瞳が、俺を真っ直ぐに見据えている。


 夏特有の容赦ない暑さが、首筋に汗を滑らせた。



「……な、なに?」



 彼女の黒寄りの茶髪が左右に大きく揺れる。



「私――」



 名前も知らない女が、五mくらいの距離を詰めてくる。それに気圧されるように、後ろへ後ろへと足を出した。


 いつの間にか逃げるのに必死で、持っていたコンビニの袋やアイスなども手にはなかった。


 けれど、彼女は止まることなく近づいてくる。


 ドンッと壁にぶち当たった衝撃で、肺の空気が一気に外へ出された。



「うっ」



 呻き声をあげて――勢い良く息を吸い込み過ぎたのか――咳き込む。自分の体重を支えきれなくなり、地面に座り込んだ。


 住宅街なのに、誰一人歩いていない。


 助けを求める声も出せない。


 知らない女が無言で迫ってくる、と言う恐怖で腰が抜けて動けず、ただ呆然と彼女を見上げた。


 彼女の顔がお互いの息が触れるくらいに近くなり、マヌケに開かれた足の間に、すらりと長く、それでいて全く焼けていない白い脚が入れられる。



 そして、右肩に手を置かれ――唇が重ねられた。



 アイスの冷たさが失われ、口の中が温かさで満たされていく。動揺で目を見開いてしまい、長いまつげで縁取られ、閉じられた目を直視してしまう。



 何十秒にも思えた時間だった。



 彼女のマシュマロのように柔らかな唇が離される。こんな夏真っ盛りにも関わらず、汗もかいていない。


 そして彼女はゆっくりと微笑み、告げた。



「私は……あなたを世界中の誰よりも愛しています」



 それは、おとぎ話に出てくるような……甘い、甘い愛の告白だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ