今夜もまた誰か生贄に!
遊園地の営業時間が終了した後、着ぐるみにされた労働者達は自由になる。もっとも着ぐるみは脱げないので運営会社が指定した施設から先は出れない。いわば「監獄」にいるのと変わらない。もっとも家に帰れたとしても帰宅途中で怪しまれてしまうし、だいたい家に帰ったからといって着ぐるみで一般生活を過ごすことはできない。とうしてもという場合には運営会社が特例として帰宅することは出来るらしいが、変わり果てた姿を家族に見せるわけには行かないし、第一本人とわかってくれないだろう。
着ぐるみを管理する従業員によれば、着ぐるみでも階級があり、沙羅のようなCクラスのうえに、Bクラス、Aクラスがあり、上に行くほど待遇がよくなり、どの上もあるという。着ぐるみの中でも主役級のキャラクターの着ぐるみを演じる「正社員」と呼ばれるAクラス階層は五日間着ぐるみに入った後は二日間人間形態に戻って休暇を満喫することが出来る。また条件さえ合えば長期休暇を取得することも可能のようだ。しかし、このような正社員がやるのは極少数であり、沙羅のような「契約社員」が入る雑魚キャラの着ぐるみは「装着を再々する手間がもったいない」などの理由で一ヶ月間着ぐるみを脱がしてもらえない。
沙羅が着せられている「マロンちゃん」は遊園地のマスコット従業員なのでほぼ同じものが三十体も用意されている。しかし「中の人」は年中不足気味なので稼働中のものは常時十体前後しかない。これは人気がなく雑用にまわされる為だ。具体的には迷子の子供の相手をしたり、人気アトラクションの行列で退屈している観客への余興である。もっとも、プログラムが沙羅の身体を使い演じているので、沙羅は着ぐるみの部品にすぎなかった。
ある晩、一人の志願者がやってきた。着ぐるみが好きの引き篭りのニートの男である。どうも家族にショック療法として労働させるなら好きな人形にでもなりなさいということらしい。彼の身体は痩せてはいたが、不規則な生活習慣のためか色白でバランスが悪かった。しかし着ぐるみとはいえ美少女のキャラクターになりたいという男もどうかしているといえる。
男の身体は念入りに洗浄されたうえで下腹部になにやら怪しげな道具を装着されていた。どうやら女子キャラなのに「もっこり」しないようにする「加工」のようだった。その後は沙羅に施されたのと同じようにされたが、違っていたのは男性の平坦な胸を女性特有な胸に加工するためパットが入れられていた。
こうして男は「マロンちゃん318号」になり、沙羅の「312号」の隣に寝かされた。これは「マロンちゃん」シリーズは改造部屋の壁際の棚に斜めに掛けかけられるように寝かされていたためだ。この日「マロンちゃん」は五体が置かれていたが六体目の犠牲者が彼だった。この六体とも生身の人間が入れられていた、沙羅は今日の彼は幸せなのかもしれないが、私は早く普通の女に戻りたいと思った。
次に入ってきたのは不良のような若い女性だった。女性の会話から無職を良しとしない両親に半ば強制的に入れられたらしかった。たしかに着ぐるみにされたら夜遊びなどできないだろう。この彼女も「マロンちゃん」に改造されるのかと思ったら、メタリックな金属の外骨格が運ばれた。どうも一世紀前のドイツで生み出された「マリア」に模した人造人間にされるようだった。
彼女は相当抵抗したが、いつもの倍の人数を動員していた。ギミックで蒸気が出たりするようにするためよくわからない装置が彼女の上半身につけられ、全身に機械の回路のような模様が入った人工皮下組織を着せられた。そのうえで黄金に輝くメタリックボディの外装がつけられ、彼女はロボットのような改造人間に生まれ変わった。しかし、彼女はそれでもなお「脱がしやがれ、この野郎!」と口汚くののしっていたが、制御装置が稼動したらしくおとなしく別室につれていかれた。
このようなことは毎日のように行われていたが、沙羅が気になったのは着せられる人間の姿を見ても脱がされる人間の姿をまだ見ていないことだった。別室で脱がしているのかもしれないが、このままずっと着ぐるみの虜のままではないかと不安に思った。