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沙羅の決意

 沙羅は父親が入院している病院に来ていた。ネヴァードリームランドで人形娘になって文字通り”人形”になっている時、倒れたという。母には連絡がつかなかったことを責められたが、守秘義務があるので人形娘になっていたとは言えず、ただ派遣先の都合で急に海外になったと誤魔化すしかなかった。


 「父さん、それにしても入院費用ってぎょうさんいるんでしょ? 大丈夫なの?」


 「そこんところはかあさんに任しちょるからわからんけど、いざとなったら畑でも売りゃいいからさあ」


 「でも、ここらへんの畑といったって買い手いるんの? みんな町に行ってしまったのに」


 「出来んことを、どうにかせんといけんだろ? 悪いが沙羅にも骨を折ってもらわんかもしれんけん。まあ、わしが退院したらお前のお婿さんを探してやるからのう。そろそろウンザリしているだろう、東京暮らしも。わしも東京で暮らしていたから判るけど、もういいだろう」


 そんな親子の会話を父としたあと、沙羅は母に手を引っ張られ病院の中庭に連れてこられた。そこは田舎の病院なので中庭の向こうがすぐ山林が広がっていて、そのさらに向こうには山並みが何処までも続いていた。


 「沙羅、父さんの容態は大変悪いのよ。ガンだって自分も知っているけど、余命も一年もないというのよ。でもね最新の反応炉を使った放射線治療ならもしかすると完治するかもしれんと先生には言われたんだけど。でも治療費が500万近く要るのよ。どうにか200万円は集めたんだけど、お前当てないかね? お前もあまり金を貯めていないようだけど・・・」


 そう沙羅は言われたため、すぐネヴァードリームランドに”新型人形娘”の”内臓”の被験者になることを同意すると連絡した。大金を作るためにはこの方法しかなかった。沙羅は都会で追いかけていた夢をすでに諦めていたので、もう田舎に戻って地道に暮らす事を決心していたが、今まで苦労をかけてきた両親を助けるために、人形娘になることにしたのだ。


 しかし両親には本当の事が言えないので、半年間某国に派遣社員として働いたら治療費を稼げるとだけいった。だが沙羅は大事なことを隠していた。”新型人形娘”になった時に失敗すれば人の姿に戻れないリスクがあることだ。聞いた話では過去に何人かが失敗し永遠に人形娘の姿に固定化した事故があったという。いづれも社会では死んだ事にされていた。


 だから、沙羅がこうして両親に会えるのが最後になる可能性があった。そのため、沙羅はネヴァードリームランドに行く前日まで両親の元にいることにした。


 一方、ネヴァードリームランドの真由美部長は沙羅の決意を喜んでいた。”新型人形娘”の適合者が沙羅以外に見つかっていなかったからだ。新型に用いられるナノマシーンの生体改造に耐えられる体質を沙羅が持っていたからだ。無論、最終的には体質に関係なく改造する事が出来る技術を開発する計画であったが、そのためにも人形娘に実際に調整する必要があったのだ。


 その時、人形娘のクイーン・カスミ陛下が真由美の元にやってきていた。今回の新型人形娘開発計画のトップだからだ。彼女の顔は十年前から固定化されたままで、若い姿をした人形そのものであったが、中の佳澄の肉体は長年の酷使による老化が進行していた。だからこそ新型人形娘の技術確立が急務だった。


 「そうか、沙羅とやらは戻ってくるのか。それは良い兆しだ。それにしても最近は人形娘などの人形化依頼が殺到しているそうだな。近頃フル稼働ということだけど、技術の漏洩は大丈夫か?」


 「大丈夫です。核心技術はブラックボックス化していますので、解析しようとしたらプログラムが破壊されるようにしています。そのせいか最近修理依頼も多いですけど」


 「それにしても沙羅の身体は人形娘になるべく生まれたようだな。あれほどのシンクロ率を記録した人形娘は空前絶後だし、本人は否定しているが身体組織の方が望んでいるかのようだぞ。出来れば私のように永遠に人形娘に固定化されて、ずっと仕えて欲しいものだ」


 

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