河童カップル
沙羅は松山市駅前から出る長距離バスに乗って、南予(愛媛県南部)に向かった。途中で大洲から肘川沿いに向かうバスに乗り換え実家に向かった。以前だったらこのコースは実家の父が迎えに来てくれたが、今は体調が思わしくないので出来なかった。
そうして実家近くの地区まできたところで降りたが、ここは物凄い山奥で人よりも鳥や獣が多いようなところだった。こんなところがイヤだったので、東京にあこがれ高校を卒業すると出て行ったが、今からすると東京は恐ろしいところだったと思う。
派遣社員として貧困ギリギリで生活していたと思ったら、クビになり仕舞いには人形娘の姿に閉じ込められてしまった。いまからすれば人形娘になるのも悪くなかったと体は主張するが、ニンゲンでなくなっていたのは間違いないので、もう懲り懲りだと思っていた。
「それにしても、ネヴァードリームランドのような人工の楽園と違って、ここはいいわね。東京みたいにどこに行っても人ごみだらけではないからね。それにしても友近の叔父さんまだ来てくれないかな?」
この時、沙羅はふと河原に目線を向けると、こんなところに異常な人込みがあるのに気付いた。その視線は全て川の中にある岩の上に集まっていた。沙羅は一体何事だろうかと河原へと降りていった。ここではなぜか屋台まで出ていた。人込みは全て観光客だったが、なぜ河原にいるのかが判らなかった。そこで沙羅は聞いてみる事にした。
「どおしたんよ、おじさん。こんな河原にぎょうさん人が集まっちゃって、何事なんよな? なんか珍しいモンでもあるんかいなよ」
「ああ、そこにさ河童のツガイが居るんだよさ。なんでも町の観光協会がイベントの一環として若い夫婦に給料をゆあるかわりに、河童に改造したというんだよ。まあ河童の観光大使というわけじゃよ。なんでも河童の着ぐるみを四六時中着ている事が条件だというんだけども、本当の河童みたいに本物の生き物みたいんじゃよ。まあ、河童なんか本当に見たこと無いんだけどさ、もし」
河童の着ぐるみで四六時中着ているといったら、ネヴァードリームランドの着ぐるみ、そう人形娘シリーズしかないといない! そう思った沙羅は河原を見ると二人、いや二匹の河童のツガイがいた!
一人は背も高く胸が筋肉隆々で大男のようで、もう一人はスレンダーなボディに大きな胸があり相当プロポーションのよい女のようだった。
沙羅はもっと見ていたかったが、後ろから友近叔父さんの声が聞こえたので、後ろ髪を引かれながらその場を後にした。
「叔父さん迎えに来てくれてだんだん。盆に帰れなんでごめんなさい。お父さんの身体大丈夫なのかな? なかなか連絡がとれんかったからね。ところで、さっき河原にいた河童だけどだれが着ぐるみを着てやってんかね?」
「沙羅、遠くからご苦労さん。あんたの父さんだけどずっと自宅にいるよ。まあ連絡してくれんかったから心配しちょたけんね。そこんところは謝りんさいよ。そうそうあの河童、あんたの同級生の河野満枝じゃよ。旦那と一緒に東京で河童に改造されたんだが、イベントがないときなんか二人で道の駅で働いているんだから、結構びっくりするさ」
やっぱり、あの河原の河童はネヴァードリームのお化け屋敷にいたのと一緒だったと思ったが、満枝が河童になっているのが信じられなかった。彼女は同級生で一番の美少女だったのにである。真相を確かめるため急に会いたくなった。




